Japanese
TOKYO 春告ジャンボリー2014
Skream! マガジン 2014年05月号掲載
2014.04.19 @日比谷野外大音楽堂
Writer 天野 史彬
春だ! 春告だ! というわけで、今年も春告ジャンボリーの季節である。SEBASTIAN Xが主催する春の恒例イべント"TOKYO春告ジャンボリー"が今年も開催された。バンド・ステージとアコースティック・ステージが交互に転換する2ステージ制。ジャンルも世代も超えた、自由でいて、とても主催側の"意思"を感じるラインナップ。そして飲食の持ち込み&買出し自由、観客の誰もが飲み食いしながら自由に踊り歌い楽しむ享楽的な空気感――どんな音楽イベントともフェスとも違った、SEBASTIAN Xだからこそ生み出せる開放的で牧歌的な魅力に満ちたこのイベントも、今年で3回目の開催である。"春と言えば春告!"なんて楽しみにしていた人も多いだろう。かくいう私も、3月の終わりくらいから"あ、そろそろ春告の季節だな......"なんてぶつぶつ言っていたのだから、もうそろそろ、"春の恒例行事"なんて呼んじゃってもいいんじゃないだろうか?
今年の春告は例年とちょっと様子が違っていて、それは過去2回が行われた上野水上野外音楽堂から、開催地が日比谷野外大音楽堂に変わったこと。この会場変更がこれからも続いていくのか、この先も野音で固定されるのか、もしくはまた上野に戻るのかはわからないのだけど、今回のこの変更はとてもよかったと思う。上野から野音へ変わったことで会場がデカくなり、収容できる人数が格段に増えたわけだが、去年、アルバム『POWER OF NOISE』をリリースし、そのツアー・ファイナルを恵比寿LIQUIDROOMで成功させ、バンドとして大きなステップを踏んだSEBASTIAN Xと同様、この春告ジャンボリーも、イベントとして新しいステップに突入するためにこうした変化は必要だ。始まって3年。今年、春告ジャンボリーもひとつのターニング・ポイントに差し掛かったのだ。野音は上野のように付近にコンビニなどがない分、買出しには難がありそうだが、その分敷地内に売店があるし、何より都会の真ん中の公園という立地がいい。周りに立ち並ぶビルから木々で隔てられた空間。日常と隣接しながらもまったく離れた場所で、特別なことが起こりそうな予感が湧き上がる。
毎年、春告といえば春らしい過ごしやすい陽気の日に開催されてきた。今年はどうか。今年は正直、寒かったです。開催中は雨こそ降らなかったものの(前日は雨が降っていたので、そこのところは本当によかった)、空気はまるで冬のように冷たい。思えば、私が野音に来たのはちょうど1年ぶりで、1年前も冬のような寒さだった。あれはフラワーカンパニーズのワンマンだった。あの日のフラカンは最高だった。まじで最高だった。しかしあの時、私は翌日、風邪をひいたのだった......そんな記憶がフラッシュ・バックした。なんてこった。1週間前には夏のような暑さの日だってあったのに。ほんと、春っていろいろある。春って気まぐれ。春っていけず。というわけで、開演約10分前の15時50分ごろ、今年は風邪をひくまいと気合を入れて会場入りする。風邪をひかないためにはどうしたらいいのか。動けばいいのだ! 踊ればいいのだ! そんな気合を胸に秘め、会場に入り、さっそく前方へと駆け出そうか......と思いきや、すっと物販の列に並んだ。なぜなら、去年の『ヒバリオペラ』に続き今年もリリースされた春告ジャンボリー記念シングル『スーダラ節/春になったら会いにきて』が、今年は会場の物販と期間限定の通販のみでの販売だったからだ。この日にしか手にできないシングル、絶対に手に入れなければならんと思い、列にならぶ。物販の近くでは巫女姿のキレーなお姉さんがおみくじの箱を持って立っている。"その格好じゃ絶対寒いでしょ......"と思いながら、その女性の勇姿に感動。見れば箱には"歩里神社おみくじ"と書いてある。これは去年もあったもののようで、1回100円でおみくじが引ける。こういう小粋な手作り感溢れるもてなしも春告らしい(ただ、その後私のついた座席の周辺から"ぎゃー!凶だー!!"って叫びが多々聞こえてきたのだが......どんな割合でおみくじは入っていたのだろうか?)。
おっと、物販に並んでいる間に客席中央のアコースティック・ステージではトップバッター、音沙汰の演奏が始まってしまった。SEBASTIAN Xの永原真夏と工藤歩里によるユニット、音沙汰。毎年春告ジャンボリーの始まりを告げるのは彼女たちの演奏だ。今年は初のミニ・アルバム『SUPER GOOD』をリリースした彼女たち。こうした動きが起こったのも、この春告の舞台を通して、SEBASTIAN Xとは違ったこのユニットの持つ意義を本人たちも強く実感したからかもしれない。演奏したのは「ホームレス銀河」と「SUPER GOOD」の2曲。歌とキーボード。声とメロディ。たったそれだけ、たったそれだけなのに、圧倒的な包容力で野音全体を包み込むように歌い鳴らすふたり。母のような海のような宇宙のような、そんな大きさを感じさせる普遍的な歌の力。音沙汰の演奏は、この1年間、それぞれの日常の中で喜び、傷つきながら暮らしてきた私たちの命そのものを労うようであり、そして再び、この春告ジャンボリーの地に戻ってきた私たちに、何よりも大きく、何よりも孤独で、だからこそ何よりも優しい声で"おかえり"と言ってくれているようだった。さぁ、今年も春が来た。この場所に私たちは帰ってきた。今日1日は歌って踊ろう。
音沙汰の演奏が終わった後、間髪入れず去年に引き続き参加のBLACK BOTTOM BRASS BAND(以下:BBBB)が会場後方から登場! 物販に並んでいたためBBBBの登場を目の前で見ることができた! ラッキー! そのまま演奏しながら会場を行脚するBBBB一行。スペシャル・パレード、本格的な宴の始まりだ! オーディエンスは次々と席を立ち、各々手拍子したり歓声を上げたり腕を上げたり腰をくねくねさせたりしている。一気に会場を華やかなパーティの色に染め上げるBBBBの、その卓越したエンターテイナーっぷりに去年に引き続き度肝を抜かれる。BBBBが歩いた道のりは、人々が皆歌い踊っている。逆モーゼ状態。凄すぎ。結局、この日のBBBB単独での登場はこのパレードのみ。しかし、この後特別な形で登場するのでお楽しみに。
やっとこさシングルもゲットし、席について落ち着く。ヒーローショーやイルカショーみたいにちょっとくだけた"行楽"的な雰囲気が強く漂っていた上野と違い、野音だとストイックな"音楽イベント"としてのカラーが強まり過ぎてしまうんじゃないか、なんて来る前は思っていたが、周りのお客さんの様子を見る限りなんてことはない。みんな酒と食べ物を広げてダラダラと"行楽"しているようだ。もう3年目とあって、お客さんたちもみんな、春告ジャンボリーの楽しみ方を熟知している。さすがだ。
そしてバンド・ステージのトップバッターとしてN'夙川BOYSが登場。THE VASELINESの「Son Of A Gun」に合わせてメンバーがステージ上に登場すると、客席から大歓声が上がる。歴史上、ロックの世界に男女の名コンビは多々いるが、SEにロックの純潔男女コンビ=Eugene Kelly&Frances McKeeのVASELINESを使っているあたり、夙川のマーヤLOVEとリンダdadaもそこに自分たちを重ねているのだろうか。素敵だ。オープニングを飾った「プラネットマジック」から、激キャッチーかつパワフルなロックンロールで会場をヒートアップさせる。まるでロックンロールの過激さとアイドル性の結晶体のような佇まいの3人から放たれる荒々しくもタイトな演奏。最高。ただ、今年、夙川が春告のラインナップに名を連ねた時に私が懸念したのは、"春告だし野音だし、そんなに暴れられないんじゃないの?"ってこと。ライヴハウスでの、あのオーディエンスを巻き込んだ最高のパフォーマンスは体感したことがあるが、こうした大きな舞台での夙川を体験したことのない私は、その辺が凄く心配だったのだ。しかし、いらぬ心配でした。ステージ上を動き回る3人は凄い存在感だし、何より曲そのものがいい。ヘヴィなグルーヴとシロップの原液をぶっかけたような甘いメロディ――その求心力たるや、半端ではない。いつものように客席に下りずとも、ぐいぐいとオーディエンスの心を掴み、巻き込んでいく。「Candy People」ではシンノスケboysとリンダが立ち位置交代、ハンドマイクでリンダがオーディエンスを煽り、ラストを飾った名曲「物語はちと不安定」ではマーヤが"目を閉じろ! ロックンロールはイマジネーションだ!!"と叫ぶ。ソリッドでグラマラス、かつロマンティックな極上のロックンロールに、会場は満たされていった。
夙川の幸福なロックンロールに浸る間もなく、"うぎいゃぁぁぁぁぁぁぁうが!!!"という叫び声が聴こえてアコースティック・ステージを振り向けば、そこには既に4番手、大森靖子の姿が。SEBASTIAN Xとはかねてより親交のあるという彼女だが、真っ黒な衣装でフードを目深に被り、ひとり居心地の悪そうな、禍々しい佇まいでギターを抱えて立っている。その格好の中からチラチラと覗くピンク色に染められた髪の先が毒気を孕んで見える。そして掻き鳴らされるギター。重い。そのギターの1音1音が、心臓にダイレクトにぶつかってくるかのように重い。私は彼女のライヴを観るたびに、まるで胸ぐらを掴まれてぶん殴られるような、あるいは目の前にナイフを突き立てられているような、そんな感覚に陥るのだが、春の訪れを告げる穏やかな雰囲気のはずのこの春告ジャンボリーの現場においても、その存在感は健在だった。1曲目の「Over The Party」から切なくも美しいメロディを掻き鳴らし、"進化する豚"とオーディエンスにも歌わせて大合唱を巻き起こす。その後もメランコリックに爪弾かれるメロディが切なくも美しい「エンドレスダンス」、前向きで開放感のあるカントリー調の名曲「ハンドメイドホーム」など、曲毎に激しく表情を変えながら感情剥き出しのパフォーマンスを披露。ラストの「あたし天使の堪忍袋」では最後、客席の間を駆けていくとバンド・ステージによじ登り、叫び声と共に着ていた黒いパーカーを脱ぎ捨て、叩きつけて去っていった。そのあまりに壮絶なステージに客席中が一瞬魂を抜かれたようになりながらも、もの凄いものを目撃した興奮が人々の中に沸き起こるのを感じた。春の嵐のように現れ、まるで抉るように春告の舞台に表現のナイフを突き刺していった大森靖子、やはり凄まじい。
大森のステージのざわつきが納まり切らぬ中、バンド・ステージに東京カランコロンが登場。セッティング中から多くの人々が客席前方へと駆け寄っていく。1曲目は「少女ジャンプ」。ポップだけど歪、歪だけどポップ。そんなカランコロンの変態だけど王道を突き抜けていくような不思議な存在感が会場を大いに沸かせる。2曲目の「16のbeat」ではグルーヴィなリフ主体のロックにキュートなキーボードのメロディと開放感のあるサビのコーラスが重なり合うことで、なんとも摩訶不思議なダンス・ロックを展開。会場が揺れに揺れる。ギター&ヴォーカルのいちろーとキーボード&ヴォーカルのせんせいのハーモニーは今日も冴えてる。続いて痛快なくらい"どポップ"な新曲「恋とマシンガン」も演奏。いちろーの口から"SEBASTIAN Xとは今のメンバーになる前、デモCDを売っていた時からの友人だ"と語られた後には、インディーズ時代の代表曲「ラブ・ミー・テンダー」まで披露。今の彼らの姿にも通じるスケールの大きく壮大なポップネスを既に持ちながらも、まだ生々しくバンドのストレンジな部分が見えるこの曲を、この春告の場で聴けたのは嬉しかった。思えば私自身、初めてライヴハウスでSEBASTIAN Xと東京カランコロンを観たのは同時期で、この2バンドたちを観て、ライヴハウスの暗がりの中で何か新しい価値観が生まれてきているのを実感して興奮したことを思い出す。そんな彼らが今、野音の場で共演しているなんて本当に素晴らしいことだ。最後は「J-POPって素敵ね」。ギターのおいたんによる"TOKYO春告ジャンボリーって素敵ね"の掛け合いも決まり、客席中が手を左右に振る幸せな光景が生まれた。ほんと、カランコロンって素敵ね。
カランコロンの演奏が終わる頃には空も一気に暗くなってきた。今年の春告ジャンボリーも終盤に突入。ずいぶん肌寒くなったが、客席内のボルテージが下がる気配はない。6番手、引き続きバンド・ステージに登場したのはB-DASH! この国におけるパンク/メロコア・シーンの一時代を築いたベテランの登場に、会場は俄然ヒートアップする。去年出演した曽我部恵一もそうだったが、こうしてSEBASTIAN Xら若いバンドたちのルーツともいえるミュージシャンが登場するのも、春告ジャンボリーの醍醐味のひとつと言えるだろう。こうしたラインナップには、音楽の中に世代を通して、表面的な形は変わろうと流れ続ける"血"を見るような、音楽に宿るDNAを感じるような、そんな思いがする。特にパンク畑にも根を持つSEBASTIAN Xにとって、B-DASHの存在は世代的にもさぞ大きいだろう。そんなB-DASH、1曲目は「KIDS」。ソリッドでヘヴィ。だけど大らかで朗らか。真性のハードコア・パンク魂を根っこに持ち続けながらも、怒りの果てに見出した笑顔と優しさとユーモアでもってあらゆる壁を突破していくような、そんな"B-DASH節"で大いに客席を盛り上げる。続く「愛するPOW」、「M-11」へと、矢継ぎ早に繰り出される代表曲の数々。この日のセットリストは、春告記念Ustream放送で共演した際にSEBASTIAN Xのメンバーからもらったリクエストを元にして組まれたそうだ。こういう先輩と後輩の関係性、本当に素晴らしい。思えば、どれだけ怒りや哀しみや孤独を抱えようとも、それすらも生への祝福へと変換する姿。泣くことではなく笑ってみせることで、この世のあらゆるつまらない物事に対してアンチテーゼをぶつけていく姿――そんな中に、B-DASHからSEBASTIAN Xへと通じるもの、受け継がれていったものがあるような気もする。メロディアスな名曲「平和島」を聴けば、特にそんなことを感じさせられるのだった。「Race Problem」、「炎」、そしてラストの「ちょ」へと、ライヴは淡々としながらも、圧巻の熱量を放出しながら突き進んだ。このさりげなさもたまらなくカッコいい、流石のステージングだった。
そしてアコースティック・ステージのトリを飾るのは、奇妙礼太郎。第1回目の春告ジャンボリーには奇妙礼太郎トラベルスイング楽団としてバンド・ステージに登場した彼が、今年はギター1本の弾き語りスタイルで登場。1曲目「天王洲ガール」。まるで往年のソウル・シンガーのように命の宿った美しいメロディと歌声によって、愛おしくもひとりぼっちな歌が紡がれていく。歌い終えた後、歓声を送る客席に向かって"別に大したことない"と照れくさそうにボソッと呟くその姿が、なんだかもう言葉にならないくらいカッコよくて。その肩肘張らない佇まいだけでも、この人の歌は信じれると、そう感じさせる魅力がある。続いては"松井くんと上田くんとサヨナラバイバイズ"という(奇妙曰く"まったく売れてない")バンドの「まんがの歌」のカヴァー。これも凄くよかった。奇妙礼太郎と言えば様々な素晴らしいカヴァーを歌っているが、こうして"本当にいい曲"を見出し歌いこなしてしまう、その姿こそ彼のシンガーとしての才能の表れだろう。奇妙礼太郎とは歌を選ぶシンガーであり歌に選ばれたシンガーでもあるのだと、そんなことをこの日のステージを見ながら思った。続いて、彼が現在組んでいる"天才バンド"のアルバムから「LOVESTORY」を披露し、ロマンティックな空気が夜の野音を包む。さらに松田聖子の代表曲であり、日本歌謡界を代表する名曲でもある「赤いスイートピー」のカヴァーまで披露。こりゃ女でなくても惚れるって。冷たい空気が覆う闇夜の中にもポッと灯りが点ったような、そんな不思議な温かさが胸の内から滲んでくるようだ。最後は、奇妙礼太郎と言えばお馴染みの「オー・シャンゼリゼ」。"素晴らしい歌だけど、くだらない俺が歌います"とギターを弾き始める。客席も一緒になって歌う。歌は本当に素晴らしい魔法のようなものだけど、それは決して高尚なものではなくて。常に私たちの口元にあるべき大切な友人のようなものなのだと、奇妙の歌う「オー・シャンゼリゼ」は伝えているようだった。
そして、遂に今年の春告ジャンボリーもこの時がやってきた。大トリ、SEBASTIAN Xの登場である。辺りはもう真っ暗。随分と気温も下がったようだが、これまでの出演者の熱い演奏のおかげで、心は全然寒くないぜ。周りのお客さんたちも飲んで踊って、空気の冷たさなんて感じさせないぐらいに笑いながら楽しんでいる。さぁ、今年の春告もこれでラスト。最後まで思いっきり踊りまくろう。
照明に照らし出されたステージにメンバーが現れると、客席からは"待ってました!"と言わんばかりの大歓声。人がどんどんとステージ前に集っていく。1曲目は、もはやライヴのオープニング・ナンバーとしても定着した「サディスティックカシオペア」。疾走するバンド演奏の真ん中で、赤い衣装の永原真夏がヒラヒラと舞うように動きながら、力強い歌声を披露する。アルバム『POWER OF NOISE』、そしてその後のツアーという去年1年間の活動の中でSEBASTIAN Xが得たもの、それはスケールのデカさ。演奏、歌、楽曲の世界観、そのすべてにおいて、SEBASTIAN Xは去年1年を通してひと回りもふた回りもそのスケールをデカくした。今までの体当たりでぶつかってくるようなパワフルさはそのままに、今のSEBASTIAN Xは観ている1人1人をそっと包み込むような包容力も兼ね備えている。続く「DNA」ではお馴染み"聞こえるかい"のコール&レスポンス。思い返せば、この「DNA」を初めて聴いたのは去年の春告ジャンボリーだった。あの時、"凄い曲書いたなぁ"と思ったもんだ。あれから1年。みんなが"聞こえるかい"の問いかけに応えている。続いて永原が軽快なラップをぶちかます「MIC DISCOVERY」でも、みんな揃って"イエーイエーイエー"と陽気に大合唱。バンドとオーディエンス、その心と心が、身体と身体が、そして細胞同士が共鳴し合っているような一体感だ。
そしてここからお待ちかね、ステージ上にBBBBが再登場! SEBASTIAN XとBBBBホーンズという最高のコラボの実現! まずは「世界の果てまで連れてって!」。屈強なバンドの演奏、そして永原の歌声と共に、BBBBによるホーンの音色が天にも届くかのように高らかに響き渡る。最高のカタルシス。思えば、SEBASTIAN Xがこうして自分たちのステージ上にゲスト・ミュージシャンを招いている光景を見るのは久しぶりだ。ここ数年は4ピース・バンドとしてのプリミティヴな力を研ぎ澄ませていた感のあるSEBASTIAN Xだが、鍛え上げられた今の4人が生み出すバンド・マジックにホーン隊が加われば、さらに大きな魔法が生まれる。続いては今年の春告記念シングル曲でもある「スーダラ節」。まるで日常の喜怒哀楽すべてから生まれたようなこの大衆歌謡の大名曲にも、SEBASTIAN XとBBBBの手によって現代的な新しい命が吹き込まれる。"平成無責任女"こと永原真夏の歌声に導かれ、みんな一緒に"スイ~スイ~ス~ダラダッダ、スラスラスイスイスイ~"の大合唱。音楽とは、歌とは、本質的に私たちの生きる日々と、そこで生まれるすべての営みに対する絶対的な祝福なのだと、私も一緒にスーダラスイスイッと歌いながら強く実感する。みんな毎日働いたり勉強したりして、楽しい思いも辛い思いもして、たまにはこうして飲んで笑って歌って踊って......そしていつだって、私たちの隣には歌がある。スーダラスイスイスイッと、ちょっと口ずさんでみれば、ほら、その間だけは沈んだ気持ちにも色が灯る。これが歌の効能。音楽の効能。「スーダラ節」は、そんなことをあっけらかんとした表情で教えてくれる曲であり、都会のど真ん中にひと時の楽園を生み出す春告ジャンボリーのイベント性とも見事にマッチしている。そして何より、今、この時代にこうした普遍的な名曲をSEBASTIAN Xのようなバンドが演奏することには、本当に大きな意味があると思う。続く本編ラストは「ヒバリオペラ」。SEBASTIAN XとBBBBによる躍動感溢れる華やかな演奏で、大盛り上がりの夜の野音をさらに彩ってみせた。
>アンコールでは再び4人に戻り、なんと新曲も披露! 「ラブレターフロム地球」と呼ばれたその曲は、今のバンドの"無敵感"をビシビシと感じさせるパワフルな疾走感に溢れた1曲。昨年の「DNA」は"人間"だったが、今度は"地球"と、タイトルからしてどんどんと規格外のスケールを身につけていく今のバンドの好調ぶりを窺わせる、凄くいい曲だ。このまま大気圏突き破って行くところまで行っちゃえばいい! そう思いながら身体を揺らす。そしてオーラスは代表曲「ワンダフルワールド」。新しいステージへと踏み込んだ第3回目の春告ジャンボリーの最後を見事に締めくくった。
さて、こうして夢見心地な1日を終えて、会場に新曲「春になったら会いにきて」が流れる中、帰路につく。日比谷公園を抜ければビルが立ち並ぶ都会のど真ん中。"あーあ、今年も終わっちゃったなー"なんて思いながら、ちょっと現実に引き戻されつつ寒空の下、日比谷駅までの道のりを歩く。けど、まぁいいさ。今年は何か嫌なことや辛いことがあったら心の中で"スイ~スイ~ス~ダラダッダ、スラスラスイスイスイ~"と歌ってみることにしよう。きっと上手くいく。では、また来年の春に会いましょう。
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