Japanese
SEBASTIAN X
Skream! マガジン 2015年06月号掲載
2015.04.30 @赤坂BLITZ
Writer 天野 史彬
ライヴが始まってから2時間は経っていただろうか。永原真夏が歌い出し、本編最後の曲が始まる。柔らかくて強い歌声。沖山良太が暗闇の中でステップを踏むような繊細なリズムを刻み、飯田裕の野性的な静けさをはらんだベース、そして工藤歩里の光が描く流線型のような美しいキーボードが絡み合う。ステージ上に血が巡るような感覚。4人の発する音が重なり、音楽が産まれる。「こころ」が始まる。3つの楽器が絶妙なバランス感覚で、有機的なグルーヴを織りなしていく。永原の歌はおだやかで、突拍子のない言葉は使わずに、丁寧な筆致で綴られた詞が胸に染み込むように響く。ただいま、おかえり。あぁ、ここに辿り着いたのだ。これがSEBASTIAN Xの今なのだ――そう思った。
2015年4月30日、赤坂BLITZ。ワンマンとしては過去最大規模のこの会場に、多くの人が詰めかけた。活動休止前最後のライヴ。SEBASTIAN Xの"今"が、そこにはあった。
この日も演奏された、バンド最初期の名曲「若き日々よ」。この曲で"明日はどっちだ 昨日ってなんだ"と歌ったころからずっと、SEBASTIAN Xは今を生きるバンドだった。ただ厳密に言えば、初期の彼らは"今を生きたかった"のではなく、"今を生きることしかできなかった"のかもしれない。明日(未来)を探し、昨日(過去)の意味を捕えようともがく若きSEBASTIAN Xは、時間軸の中で宙ぶらりんだった。過去が今を作り、今が未来を作る――その単純な方程式を信じ切ることが、あのころの彼らにはできなかったのかもしれない。それは、ロック、アイリッシュ、ソウル、歌謡曲などを感覚的に取り込んでいく、自由且つ根無し草的な音楽性からもうかがえる。彼らは定点を持たなかった。信じられるものは今、この瞬間の自分たちの感性や感情だけ。......それはバンドの強みであり、弱みでもあった。
"大人になったら、また一緒にバンドやろう!"――2度目のアンコール、最後の最後「ワンダフルワールド」演奏前に永原真夏はメンバーに向かって叫んだ。"大人になったら"......SEBASTIAN Xで活動してきた10年近い季節の中で、彼女は少女のままだったのだろうか? きっと、そうなのだろう。少年少女の特権とは、過去と未来に囚われず刹那的であれることだ。まるで光のたてがみを揺らし大地を駆け抜けるユニコーンのような幻想的なまでの力強さで、少女は今を全力で駆け抜けた。しかし、だとしたら、SEBASTIAN Xにひとまずの終わりが来ることは必然だとも言える。少女は大人になるものだから。
残された2枚のフル・アルバム――『FUTURES』と『POWER OF NOISE』には、少女が大人になっていく過程がたしかに刻まれている。それぞれのアルバムの顔、「F.U.T.U.R.E.」と「DNA」。「F.U.T.U.R.E.」は今を全力で駆け抜けることで生み出される"未来"を、「DNA」は、曲の中でたびたび歌われる"血"というフレーズが、連綿と続いてきた血と細胞の連鎖......つまり"過去"(それは"今の亡骸"ではなく、"今を形作るもの"としての)を象徴している。"明日はどっちだ 昨日ってなんだ"という自問自答から始まった旅路の中で、少女は少しずつ、明日と昨日の意味を見つけ出していた。そして、その果てに辿り着いたのが「こころ」だった。
この日のセットリストは全キャリアからまんべんなく選ばれたものだったが、「こころ」は他のどの曲とも違っていた。「こころ」には過去と未来があった。そこに描かれていたのは、昨日から続く"今"であり、明日へと続く"今"だった。SEBASTIAN Xは時間軸の中に着地していた。そこには帰る場所があり、生活があり、自分の感性と同じくらい信じるべき他者のぬくもりがあった。この日、「こころ」を聴いて、SEBASTIAN Xが活動休止する理由を体感した気がした。アンコール1曲目の「感受性に直行」ではすべてが溶け出していた。そのノイズは、大人と子供の狭間で引き裂かれた少女の叫びのようであり、子供から大人になる瞬間の成長痛そのもののようだった。もっともSEBASTIAN Xらしい曲であり、しかしSEBASTIAN XがSEBASTIAN Xでいられないことを証明する曲。悲しくはなかった。
ひとまずこれで終わりだが、"さよなら"も再会の約束も不要だろう。"復活してくれ"なんて僕は絶対に言わないよ。「DNA」の演奏前に永原真夏が言った、"しょうもない恋愛とか、しょうもない金とか、そのすべてを10年後に奇跡に変えるのは、今なんだよ!"という言葉を信じるなら、この別れもまた、今の僕らの血となり、10年後の奇跡のような未来を形作るものなのだろうから。過去も現在も未来も、なんとなく続くものではなく、僕ら自身の手で生み出し続けていくものなのだから。ねぇ、そう思いませんか?
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