Japanese
SEBASTIAN X
2013.11.22 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 天野 史彬
凄い凄い凄い!まさに時代が変わる瞬間――なんて書いたら大げさか?いやでも、ここには間違いなく、新たな価値観があった。ライヴハウスで脈々と育ってきた新たな価値観の息吹が、多くのオーディエンスによって選び取られる瞬間。そんなカタルシスがあった。8月に2ndフル・アルバム『POWER OF NOISE』をリリースしたSEBASTIAN Xのリリース・ツアー・ファイナル、恵比寿LIQUIDROOMワンマン公演。この日は演奏されなかったが、このバンドの名曲のひとつ「サファイアに告ぐ」の一節をまずは思い出そう。"次は僕らの時代だ"――うん、まさに、次はSEBASTIAN Xの時代であり、SEBASTIAN Xを選んだ僕らの時代だ。
ライヴが始まるや否や「POWER OF VITAL」、「サディスティック・カシオペア」、「ROSE GARDEN, BABY BLUE」という、『POWER OF NOISE』、『ひなぎくと怪獣』、『FUTURES』といったここ数年の作品たちの冒頭曲を立て続けに持ってきたあたり、この日にどれだけの思いをバンドが賭けていたのかをヒシヒシと感じるオープニング。バンドのホーム・グラウンドとでも言うべきライヴハウス、吉祥寺WARPから始まったこのツアーは、ここまでのバンドの総決算という目的もあったのだろう。バンドの最初の集大成ライヴとしてこれ以上ないスタートだった。
そしてこの日最初の沸点は序盤、「GOODMORNING ORCHESTRA」から永原真夏がピアニカを吹き鳴らした「ASO」、続く「ツアー・スターピープル」、「フェスティバル」の流れでやってきた。このバンドの大らかというか、もはや傍若無人というか、そんなあっけらかんとしたダンス・フィールを感じさせる楽曲たち。この時の盛り上がりは、もはや祭り。"フェス"じゃなくて、"祭り"。どの曲も祭囃子のような、はたまたチンドン屋のような陽気なメロディとトライバルなビートが強固なバンド・サウンドに乗せて奏でられていく。ここで凄いと思ったのが、バンドとオーディエンスが見事に一体となったノリ。曲に合わせて拳を振り上げたり、掲げた腕を皆で一斉に振ったり......こういうノリは、少し前のSEBASTIAN Xのライヴでは見られなかったものだ。たとえば凡百のロック・バンドのように四つ打ち1本で押し通していくような、ストレートでわかりやすいノり方を提示する音楽性では決してないのだが、それに対して完璧に順応していくオーディエンスは本当に凄かった。これはきっと、大型ロック・フェスにも参加するしインディー系のサーキット・イヴェントにも参加するSEBASTIAN Xの垣根を越えた存在感がもたらしたものでもあるし、その存在感が、オーディエンスの中に眠るジャンルやイヴェントの垣根なんかでは押し込められないプリミティヴな"熱"を呼び起こしたからこそ生まれた光景なのだと思う。この国のライヴハウスの中に、新しい"踊り方"が芽生えたんじゃないかと思わせる凄まじさだった。
中盤、永原が"日記を書くように作った"と語った「光/男/カメラ」、「日向の国のユカ」、そして「三日月ピクニック」では、バンドの世界観の奥にある深淵を覗かせる。ゆっくりと刻まれるリズムはまるで深い夜の闇を歩く足音のようで、しかし美しいメロディと歌声はその暗闇に差す一筋の光のようだ。「三日月ピクニック」の間奏部分で「パッヘルベルのカノン」が挿入される時、あの旋律に合わせてステージ上を舞うように動く永原真夏のシルエットが本当に美しかった。その後、疾走するパンク・チューン「ひなぎく戦闘機」で会場は再びバースト。そこからは「世界の果てまで連れてって!」、「MIC DISCOVERY」、「MY GIRL(姫君に捧ぐ)」、「ワンダフルワールド」で怒涛の盛り上がりへ。そして、「ヒバリオペラ」。もはやライヴでは欠かせなくなった"トンプー""ウォーアイニー""火の車""ストロベリー"のコール&レスポンスも見事に決まる。本編最後を飾ったのは「DNA」。"聞こえるかい?"と呼応し合うバンドとオーディエンスの姿がとても感動的だった。
アンコールでは「つきぬけて」と「GO BACK TO MONSTER」を、ダブル・アンコールでは「食卓の賛歌」を披露。この「食卓の賛歌」が、この日1番のハイライトだったのではないかと思う。この曲は一見牧歌的な歌だが、実際は「GO BACK TO MONSTER」などとメッセージ性を同じくする、とてもSEBASTIAN Xらしいアナーキズムに溢れた曲だ。"どれだけ勉強したって君はあの人になれないよ もうやめなよ もうやめなよ 君は君だ 諦めなよ"と、聴き手によっては心を抉られるようなキツいひと言をかまし、"そんなことより 君の作ったおいしいご飯が早く早く食べてみたい"と、"そんなことより"で聴き手の内面問題をさらっと片づけてしまう不敵さを見せつけるこの曲。私たちを悩ませるあらゆる自意識や観念も、私たちを表面的に満足させるたくさんのお金や物も、すべてを"そんなことよりおいしいご飯が食べたい"と食欲で一蹴してしまうこの不遜な態度こそ、SEBASTIAN Xがデビュー当時からこの国のポップ・ミュージック・シーンにおいて異端であり、最先端である由縁だった。僕がSEBASTIAN Xを初めて観た時、"なんだこれは?でも絶対新しいし、これが自分の欲しかったものかもしれない"と思った。その理由も結局、ここにあったのだ。くだらない自己愛や観念に絡め取られたこの国のポップ・ミュージックに対する、生と喜びへの欲望剥き出しのカウンター。それがSEBASTIAN Xだった。このワンマンを観終えた今、痛切に思う。結局、音楽は衣食住には適わない。音楽は、人間が生きていくためには本当の本当には必要のないものかもしれない。でも、それじゃあなんで人間は、この長い長い歴史の中で、豊かな時代も貧しい時代もずっと音楽を鳴らし、ハーモニーを奏でてきたのか?――SEBASTIAN Xはずっとその理由を歌っていたのだ。この日、「食卓の賛歌」の冒頭部分はフロア下手から現れた永原がアカペラで歌い、会場中も一緒に歌った。本当に凄い光景だった。"君は君だ 諦めなよ"と、何百人もの人が歌ったのだ。LIQUIDROOMに集まったすべての人が外面の仮面を外し、あるがままの姿で生への欲望に忠実になった時、それでも鳴り止まないこの音楽から立ち昇るものは、ほとんど祈りに近いものだったのではないかと思う。
ライヴは最後、鳴り止まない拍手に応えてのトリプル・アンコール「F.U.T.U.R.E.」で幕を閉じた。最後にこの曲を持ってきたのは偶然ではないはず。きっとこの日、LIQUIDROOMに集った多くの人は、SEBASTIAN Xに"未来"を感じただろう。もう音楽も、文化も、それを求める僕らの気持ちも、そのすべてを雁字搦めにする旧態的な呪縛なんて解き放ってしまえ。そして、溢れればいい。その先にあるものを、きっとSEBASTIAN Xは音楽にしてくれるだろう。何度でも言おう。この日、恵比寿LIQUIDROOMを満たしていたのは新しい価値観であり、未来だった。
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