Japanese
SEBASTIAN X
2013.08.24 @吉祥寺WARP
Writer 天野 史彬
人には帰る場所が必要である。でも帰る場所というのは、それが例えば家とか、家族とか、恋人とか、そういう自分の外側にあるもの指す時、それを持つ人もいれば、持たない人もいるだろう。だが、記憶とか、思い出とか、経験とか、そういう自分の内側にあるものを指す場合、それはすべての人にあるものだと思う。そして僕らが未来へと足を踏み出そうとする時、この記憶や思い出、経験といった類の帰る場所を持っていることは、何よりも心強いことだ。自分が歩んできた道のり、生きてきた時間、出会ってきた人やもの――その記憶は時に、家を持っていることや待っている家族がいること以上に、力になる。だって、僕の未来は僕にしか作ることができないし、君の未来は君にしか作ることができないから。自分の人生を歩んでいる限り、人はどこへでも行くことができる。
だから、SEBASTIAN Xがアルバム『POWER OF NOISE』のリリース・ツアー初日の場所に吉祥寺WARPを選んだことには、とても大きな意味があったのだと思う。吉祥寺WARPは、彼らの原点と言える場所である。彼らは、SEBASTIAN Xを名乗る以前の10代の頃からこのライヴハウスのステージに立ち続け、多くの友人たちと出会い、SEBASTIAN Xとなってからは自主制作盤『LIFE VS LIFE』のレコ発をここで行い、初めてのワンマンをここで行っている。(個人的なことを書かせてもらうと、筆者はSEBASTIAN Xにこの3年間ほど取材し続けているが、初めて永原真夏と沖山良太に取材した日も、ここでライヴがあった)。そして『POWER OF NOISE』とは、そういったところから出発し、数多くの土地でライヴを行い、作品のリリースを重ね、様々な出会いや別れを経験してきたSEBASTIAN Xというバンドの歴史が深く刻まれたアルバムだった。このアルバムには、『ワンダフル・ワールド』や『僕らのファンタジー』にあった今を生きようとする刹那的な祝祭感、『FUTURES』や『ひなぎくと怪獣』にあった未来への力強い希望――そんなすべての自分たちの過去に対するあたたかな視線があったのだ。だからこそ、このアルバムのリリース・ツアーは吉祥寺WARPから始めなければならなかったのだと思う。“初心に返りましょう”とか“古巣に帰ってきました”ということではない。未来へ向かっていくために、自分たちの歩んできた道のりをもう1度踏みしめるような、今の自分たちを構成し、さらにこの先にも繋げていくであろう“血”の根源を確かめるような、そんな大きな意味が、この日のライヴにはあったはずだ。
結果としてこの日のライヴは、筆者がここ最近観てきた彼らのライヴの中ではもっとも猛々しいものだった。初めて彼らのライヴを観た時にも似たインパクトを再び感じさせたと言っても過言ではない。腹にどっしりとクるリズム隊と、キラキラとしたメロディを奏でるキーボードと、永原真夏の突き抜けるような歌声が、ぶつかり合って転げながら響き渡る。1曲目からフルスロットル、ハイテンションで駆け抜けるバンドのモードは、完全にパンク・バンドのそれである。もちろん、デビュー当初に比べたら楽曲の持つ普遍性やスケール感、それにサウンドのヴァリエーションは増したし、メンバーのミュージシャンとしての存在感やプレイヤビリティも強固なものになっている。だが、この日の4人の気持ちとしては、そうした自分たちの成長した姿のままで、いかにかつて自分たちが持っていた初期衝動を呼び起こせるか――それがテーマになっていたんじゃないかと思う。この日のバンドの演奏は、演奏を完成に近づけていくことより、ひたすらに湧き上がってくる熱を放出していくような凄みがあった。
アルバムからの新曲はもちろんだが、懐かしい曲もたくさんやった。これから各地でこのツアーを観に行く人たちに配慮して具体的なセットリストの記述は避けるが、1曲だけ――中盤に演奏された「若き日々よ」。この最初期の名曲に震えた。この曲は個人的に大好きでずっと聴き続けてきたし、ライヴでも割と頻繁に演奏されてきた曲だと思うが、『POWER OF NOISE』を経た今、響き方が全然違う……というか、『POWER OF NOISE』を聴いた後だからこそ気づくことがあった。「若き日々よ」が持つヒリヒリとした切迫感。これは『POWER OF NOISE』と根底で繋がりながらも、また違ったベクトルを持つものだと言えるだろう。何故なら、『POWER OF NOISE』が「DNA」に象徴されるように“繋がっていくもの”を描いたアルバムだとしたら、「若き日々よ」で歌われているのは“失われていくこと、忘れられていくことの恐怖”だと思うからだ。この日、吉祥寺WARPで「若き日々よ」を聴きながら、この曲を作った当時のSEBASTIAN Xの若き日々を感じた時、そこにある重さに、筆者は胸を締めつけられるような思いになった。でも、『POWER OF NOISE』の新曲群はそんなかつての彼らの若さゆえの切迫感すらも抱きしめ、肯定してみせる。そこに新たな命すら吹き込んでみせる。もしあなたが『POWER OF NOISE』を気に入っているのなら、このアルバムを聴きこんだ上で、もう1度彼らの初期の作品を聴き返してみてほしいと思う。彼らの中で何が変わり、何が残されてきたのか。新たな発見があるだろう。
いくつかハイライト的な光景はあったが、2度目のアンコールで“昔はここで歌ってた”と言いながら永原真夏がバー・カウンターによじ登り、歌う姿は本当に無邪気で美しく、感動的だった。こんな景色が見れるから、彼らは音楽を鳴らすのだろうし、僕らは音楽を聴くのだろうと思った。彼らはこの場所から始まって、5年間ほどの道のりを経て、『POWER OF NOISE』という最高傑作を作り上げるまでに至った。吉祥寺WARPから始まったこのツアーは、彼らのキャリアの最初の総括に当たるものになるかもしれない。ツアーは11月の恵比寿LIQUIDROOMワンマンへと繋がっていく。LIQUIDROOMでは、今のSEBASTIAN Xのひとつの到達点、完成形が観られるんじゃないかと期待している。
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