Japanese
ゲスの極み乙女。
2014年10月号掲載
Member:川谷 絵音 (Vo/Gt)
Interviewer:沖 さやこ
-精力的な活動で、絵音さんの音楽的感性とプロデュース能力が急成長しているのかも。この11曲はいろんなギミックが効いた音が鳴っているけれど、無駄なものが何もなくて、出す音すべてに理由がある。そういう意味ではポップスの手法でロックを昇華した印象もあります。
メンバーもできることがすごく増えているし。その中で、自分ひとりの時間を今回は持たせてもらったというか。それが結果いいものになって、メンバーもそれを聴いて"すごく良くなりましたね!"って言ってくれてるんで。サウンドもここで音の差し引きをするとか、鍵盤はここでこういうフレーズ、ここにベースがスラップで入ってドラムはこうで......それはコントロール・ルームで音を聴いて、ちゃんとしたバランスで聴きながら作ったというのもありますね。
-1曲に掛けるプロセスはとても多い。
だから無駄な時間も多いですよ。僕が指示してみんな音を出すけど、次のスタジオで"あ、もうそれやらないから"って全部変えたりするし。でもそういう過程が多いから、どんどんアレンジも研ぎ澄まされていく。
-実際やってみないとわからないことはたくさんありますから。お忙しくて時間のない状況でも時間を掛けて、妥協なく制作をしたからこそ作れた作品なんですね。
そうですね。今回は......全部完璧じゃないかと思います。
-非の打ちどころがない作品だと思います。まさか『みんなノーマル』から半年ちょっとでこんなアルバムが聴けるとは思わなかったので、とにかく驚愕で。
たぶん聴いた人はみんなそう思うと思います。でも、もともと僕らはこういうものが好きだったし、こういうものを作る予定で今まで活動してきたので、自分たちにとっては当然というか。......とは言っても実際、今までの作品も消化不良なところはあったんです。ミックスも曲も全部。曲はいいものを書いてる自信はあったんですけどね。時間がなかった部分で、アレンジを詰めきらないまま"まあこんなんでいっか"みたいな......(笑)。
-(笑)
それは悪い言いかたですけど(笑)。前までのゲスの雰囲気だと、誤魔化してたって大丈夫だったし、そのユルさが良かったのかなと思ってたんですけど、これからはそうじゃないなと思ったので。......今は誤魔化せないし、誤魔化したくなかった。ゲスで活動していく中で、"1stフル・アルバムは完璧なアルバムにしよう"と思ってたんです。時間がなかったとはいえ(インディーズのときよりも)時間を掛けられるようになったので。だから今回やりたかったことを全部詰め込めた。今回はレコーディング・エンジニアもすごいハマっています。
-toeの美濃隆章さんがレコーディング・エンジニアさんですね。
もう、この人じゃないとだめだなと思いました。人間的にも素晴らしいし、美濃さんが好きな音、俺らも絶対好きなんですよ。好きな音が共通してるってすごく大事で。かっこいいと思う対象が同じで、価値観が似てるというか。あと、やっぱり美濃さんはバンドマンなんで。そこがすごくでかいですね。美濃さんが"こういう音がいいんじゃない?"と言えば、それはすごくかっこいいものだし。全部が良くなるんですよ。今回は音やミックスも含めて全部完璧だと思う。バンドとしての形態では、これ以上のものはできないんじゃないか――自分じゃなきゃ越えられないんじゃないかってくらい自信があるんですよ。金字塔というか。歴史に残る作品だと思っています。これができたことによって、今ある1つのバンド・シーンが終わるかなとも思います。......だからこれから音楽を志す人が、どういうものをやればいいのかわかんなくなるかもしれないですね(笑)。
-はははは。でもひとりひとりの音のキャラが立ってて、アンサンブルが完璧だから、バンド組みたい!と思う人は多いと思いますよ?「crying march」とか。ゲスの中ではかなりストレートな楽曲だし。......とは言っても異端ですけど。
これはストレートなものを作ろうと思って作ったんですけど、最終的に自分たちの色が出まくるんで、結果ストレートにはならなかったんですけど(笑)。
-(笑)ここまでスコーンと抜けた曲は今までゲスになかったから新鮮です。"走り出したら止まれなくて""走り出したら止まりたくない"という歌詞もぴったりで。......さきほど歌詞にはパーソナルな部分が出たとおっしゃっていましたが、その理由はなんだったのでしょう?
音楽を始めて、最初は自分を出したくないなと思ってたんですけど、ゲスで自分を出すようになって、indigo la Endで自分を出すようになって......そこに恥ずかしさがなくなって。自分が弱いのもわかってるので。自分の弱い部分を歌詞にするのは今まで怖かったんです。でも今回はそれをナチュラルに書けたというか――自分の思っていることを書きなぐったに等しいんですけど。「ラスカ」とか特にそうだし。自然と歌詞にそういうことを書くようになって。それはそれだけ自分が成長したからじゃないかなと思ってます。
-そうやって自分を出した歌詞が、これまでの作品の中で1番優しいものになっているのも意味深いですね。今回のアルバムで随所に出てくる"歌う"という言葉は、歌詞の人物=絵音さんを表す象徴だと思うし、そして何より"愛"という言葉が多い。
今まで人に食ってかかりすぎたんですよね。だからもう疲れちゃったっていうのもあるし(笑)、そういうことに興味がなくなってきて。最初は"ゲスの極み乙女。"という名前に引っ張られてそういう歌詞を書こう! と決めてたけど、より広がっていくというタイミングで、そういうことを歌う必要はないかなと思ったんですよね。
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ゲスの極み乙女 (476)
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約4年ぶりのフル・アルバムは、ディスコ="踊る"ことがテーマ。彼らの曲は以前から踊れるものだったが、改めてそこに向き合って生んだナンバーたちは、実に洗練されている。それでいてチルなだけでもクラブ音楽でもなく、バンドの持ついい意味の違和感も毒っ気も失わず、彼らにしか作れないディスコ・チューンを届けてくれた。程良く力が抜けた「Funky Night」("Baby I love youの歌メロで/くるりと回った"の詞も嬉しい)、切なく胸を締めつけるメロが美しい「シアラ」、初期の彼らの香りも感じさせつつ今の演奏技術に唸る「歌舞伎乙女」、また「晩春」での"あと何年歌えますか"や「ハードモード」のリリックなど川谷絵音(Vo/Gt)の独白のような言葉も印象的。メンバーそれぞれ活躍の場を広げながらも新作を作り上げた、その熱量に乾杯。(稲垣 遥)
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すでにアナウンスされている通り、結成10周年記念のベスト・アルバムは、ゲスの極み乙女。を象徴する名曲25曲のトラックを解体、再構築した35分51秒の1トラック。ちゃんMARI(Key)を中心にこの大工事を行ったそうだが、ほぼ一定のBPMで踊り続けられるダンス・ミックスのようでもあり、四つ打ちにジャズ、ファンク要素を導入したこのバンドの革新性を見せたり、歌メロとは異なる伴奏にあたるトラックを切り貼りしても新たにらしさが生まれたりして、完全にベスト・アルバムの概念自体を転覆させてくれるのだ。加えて、ダークなニュアンスの「青い裸」、アグレッシヴな「発生中」と通常尺のベスト選曲29曲と、mabanuaやSTUTS、PARKGOLFらのリミックスからなるベスト・アルバム『丸』も同時配信。(石角 友香)
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前作『魅力がすごいよ』が大きな音楽的進化を遂げたアルバムならば、今作『両成敗』はゲスの極み乙女。が元来持っていた遊び心やユーモアを取り戻した作品とも言える。だがそのユーモアの表現方法は『魅力がすごいよ』で得た方法論。プレイヤーとしてのフレージングのパターンも増えてアンサンブルの強度は増し、耳に残る印象的な言葉を抜群の譜割りで乗せるというシングル3作でも立証されていた彼らの個性を磨き上げた楽曲が揃う。ギター弾き語りを基盤にした曲や余韻の残る歌が印象的な曲など一筋縄ではいかないミディアム・テンポ系の楽曲も充実。それは全17曲という曲数だからできることでもあるが、このボリュームでも中だるみを感じさせず聴き心地の良さもある。彼らの音楽性の集大成でもありながら、新たな工夫も散見する意欲作だ。(沖 さやこ)
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2ndシングルを今年4月にリリースしたばかりのゲスの極み乙女。が早くも3曲入りの3rdシングルを発表。前作も個々のスキル向上やバンドのアレンジ力に驚いたが、今作もそれを凌駕する勢いだ。今作はそれに加えて、ソングライターである川谷絵音の等身大の姿が今までで最も歌詞に投影されている。Track.1は心の内に潜む彼の素直な部分をそのまま音にしたような繊細なメロディと、焦燥感とロマンティックさが混在するバンド・サウンドと合わさり、涙が零れ落ちる瞬間のような美を作り出す。Track.3はシリアスで緊張感のあるギターと鋭いラップが前面に躍り出たスリリングな楽曲。だがサビはトンネルを抜けた瞬間に見える青空のような爽快なポップ感があり、そのユーモア・センスには舌を巻くばかりだ。(沖 さやこ)
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2014年10月にリリースされた『魅力がすごいよ』に続き、バンドの急成長に面食らった。バンドのアンサンブルの強度の上昇はもちろん、各プレイヤーの表現力と音色の拡張が目覚ましい。表題曲は美しいピアノとストリングス、ゴスペル調のコーラスで幕を開けて4人の音が入る瞬間の華やぎ具合は新しい価値観以外の何物でもないのだ。難解で、ある種屈折した展開がこれだけポップに響くのは、プレイヤーのスキルとメロディとサウンドの歯車が噛み合っていることが絶対条件。これをやりこなしてしまう、やはり彼らはとんでもないバンドだ。大きなうねりを見せる流麗なTrack.2、過去曲のリアレンジというよりは別曲とも言えるTrack.3、打ち込みと生ピアノが織りなす幻想的なTrack.4はヴォーカルも新しい。全曲が圧倒的である。(沖 さやこ)
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ゴールデン・タイムに放送された地上波のTV番組で、ゲスの極み乙女。について紹介しているVTRが流れた。そのTVはこう言っていた。"このバンドの最大の魅力は毒っ気の強い歌詞"。世間が評価した"魅力"を磨き続けることを選択する者が多い中、このバンドは更なる高みを求めるために、自身の思う"完璧"なフル・アルバムを作るために、新たな場所へと飛び立った。そしてこの皮肉めいたタイトルを証明し、凌駕する作品を完成させたのだ。等身大の川谷絵音の心情が映し出された歌詞と、初夏のそよ風のように頬を撫でるメロディ、そして4人それぞれの持ち味やキャラクターを爆発させた、それこそロックがもたらす化学反応と衝撃――この作品にはそれらが溢れている。ジャンルを超越した彼らの音楽は、まさしく芸術だ。(沖 さやこ)
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ゲスの極み乙女。というバンドのバズの起こり方は、他者の力を強く感じるものだった。ネットや実際の口コミにより、たちまち彼らの名前はロック・シーンへ拡散。四つ打ちを取り入れたダンス・ビートという"主流"に、ラップ、ジャズやクラシックのテイストを感じさせるピアノの音色、4人のキャラクターなど、主流からの"ズレ"を次々投入した彼らの音楽は間違いなく新感覚だった。そしてバンド3作目となる今作は、ロック・シーンという狭い枠を飛び抜けるポップ・センスが炸裂。緩急と音の隙間を巧みに操るサウンド・メイクも、4人の顔が浮かぶような人間味のあるそれぞれの音色も、シュールでひりついた川谷絵音のラップも、全てに自信とより羽ばたこうとする覚悟が漲る。これからのバズは彼ら自らが起こしていくのだ。(沖 さやこ)
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今年は彼らの名前をよく聞いた。ゲスの極み乙女。最近は日本語のバンド名が増えているとはいえ、"ん?"と一瞬耳を疑うネーミングセンス。しかも、これがindigo la Endのヴォーカルの別ユニットと聞いてもっと驚いた。本作は、前作『ドレスの脱ぎ方』から9ヶ月ぶりの2ndミニ・アルバム。レーベル資料には"ヒップホッププログレバンド"という言葉が書かれているが、正直、このバンドの音楽性はそれだけではちょっと言い表せない。ヒップホップ、プログレ、パンク、ニュー・ウェーヴ、J-POP、もちろん最近の国産ロック的な要素も入っている。様々な音楽的アイデアが、まるで大喜利でもするかのように無邪気な遊び心で噛み砕かれ、編集され、完成度の高いポップスとして再構築される。まさに新世代的なセンスの塊。脱帽です。(天野 史彬)
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なんとも救いようがない名前のバンド“ゲスの極み乙女。”indigo la Endの川谷絵音ことMC.Kを中心に休日課長(Ba)、ちゃんMARI(Key)、ほな・いこか(Dr)で結成されたバンドなのだが、音はindigo la Endのそれとは完全に別物。ファンクやヒップホップなどを通過した硬質なグルーヴと、柔らかなメロディが同居した唯一無二の“ヒップホップ・プログレ”なサウンドに仕上がっている。全パート自由度の高いアプローチを一聴すると好き勝手にぶつけているようにも感じるが、しっかりとまとめあげるセンスに脱帽。踊らせるだけのダンス・ミュージックとも、共有するためだけの作為的なフックに満ちたロックとも一線を画したただただ遊び心に溢れた最高に“ゲス”な作品。 (伊藤 啓太)
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