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INTERVIEW

Japanese

0.8 秒と衝撃。

 

0.8 秒と衝撃。

Member:塔山 忠臣(唄とソングライター) J.M.(唄とモデル)

Interviewer:天野 史彬


-これは音楽じゃなくてもそうですけど、ものを作る人にとって、届ける相手を見据えているかどうかって凄く大事なことですよね。このタイミングでハチゲキは、リスナーっていう対象を明確に見据えることができたからこそ、バンドとしての芯を見つけることができたし、逆に、伝える目標があるからこそ、J.M.さんの言うようにバンド内での切磋琢磨も激しくなっていったっていうことですよね。

塔山:そう、偏狭的に自分の世界に入るものも好きなんですけど、入りながらも繋がれる、その世界自体をみんなで共感したいというか。自分たちだけわかればいいって簡単に諦めたくないんですよね。この間も、昔パンクスだった人と話してたんですけど、その人は、“今、ロックの伝統的なライヴハウスがアイドルを入れてるのが嫌だ”って言ってたんです。でも俺は、アイドルがいいか悪いかはわからへんけど、“みんなロック聴かんとアイドルばっか聴いてちゃダメだ”っていう考え方は好きじゃないんです。“ちゃんとロック聴ける奴出てこい”って待つんじゃなくて、ちゃんとロックを鳴らせる俺らが、奴らの前に出ていけばいいと思うんですよ。“今、アイドル全盛やからロック聴かんとこ”って思ってる奴らが、“そうそう、こんなん待っててん”って思わせられるようなところに行かなきゃいけない。そのためには、まず、俺らが手を挙げなきゃいけないわけですよ。それは売れる/売れないっていう感覚じゃなくて、ただ、そいつらの前に出て行くまでにできることをやらなきゃいけない。売り場でもロックが縮小されてるって聴くし、今はベタな、リスナーの食いつきやすい音を鳴らしてる人が売れてるけど、こういう時やからこそ、俺たちみたいなバンドが待ってたらあかんと思うんですよね。

-そういう姿勢が根底にあるからこそだと思うんですけど、このアルバムは、全体として凄くポジティヴなフィーリングに溢れてますよね。詞の面でも、今回の歌詞は全体的に“世界と自分”、“時代と自分”っていう視点で描かれているものが多いんですけど、音楽シーンや社会的状況がどれだけ厳しいものになっても、自分次第でいくらでも楽しむことはできるっていう前向きさが、アルバム通してあると思うんです。ひがみや怒りに引きずられてない。そこは、自分の中で以前と変わった部分だと思いますか?

塔山:それも、ライヴで実際にファンの子と出会って、実際に話したりして刺激を受けていく中で変わっていったんだと思います。前までだったら、文句を言って、腹立つなって思ってただけだったのが、“私もそう思います”って言ってくれる奴らが結構おるんやなっていう希望を感じたというか。今まではボロカスにぶつけてきたけど、それをちゃんと拾って返してくれるんやなって。それだったら、俺たちは俺たちでやれることがあるんちゃうかって思ったんです。待ってる奴らはおるけど出す奴がおらんだけなら、俺らが行けばいいんですよ。だから、意識的にポジティヴにしたわけじゃないんですけど、“俺はこう思う”から、“お前らもこう思うよな?”に変わってきたんだと思います。もちろん、ネガティヴな感情もあるし、極端な話、嫌な時代だと思うんですよ。だけど、文句言ったり、クソやなって思いながらも、ここに生きてるわけやないですか。本当に嫌やなと思って、自分で無くなってしまう人もおるけど、今だって、ここにこうやって(スタッフ含め)5人の人間がおるわけで。おるということは、“嫌やな”で終わってないわけじゃないですか。やりたいことがはっきりしてなくても、“明日死のう”って思うほど、自分の人生をつまらないとは思ってないと思うんですよ。何かを変えたいとか、デカいものじゃなくても、なんかあると思うんですよね。そこに希望を持ってるんです。だから、諦めた感じの詞は書けないんです。もちろん、腹立つ気持ちは忘れたくないですけど、その上で、待ってくれてる奴らのカンフル剤になりたいと思う。昔、P.I.LのJohn Lydonが“聴いてる奴らを煽りたい”って言ってましたけど、それと同じで、聴いてる人たちのメンタルを煽りたいんですよね。