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INTERVIEW

Japanese

東京初期衝動

2025年09月号掲載

東京初期衝動

Member:しーな(Vo/Gt) まれ(Gt/Cho) あさか(Ba/Cho) なお(Dr/Cho)

Interviewer:吉羽 さおり

剥き出しの魂で全力でぶつかってくるライヴと、パンク精神とポップ心とがキャッチーにせめぎ合った曲でインディーズ・シーンを駆け抜けてきた4人組、東京初期衝動が9月24日、アルバム『東京初期衝動』でメジャー・デビューする。本作は、阪元裕吾監督の映画"フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡[私闘編]"主題歌となった、配信シングル「さよならランデヴー」の他、インディーズ時の代表曲を再録し、現在進行形の東京初期衝動を詰め込んだ。時にドス黒い程の感情を露わにしながらも、混沌とした都会の中で美しく、あるいは不器用でも気高く生きていく姿が映された曲が並んだ今作は、青春の煌めきを封じ込めたようなアルバムだろう。新曲や再録への思い、これからへの思いについて4人に話を訊いた。

-東京初期衝動がメジャー進出するのは驚きでもありましたが、自分たちとしては東京初期衝動がメジャーでやる意味をどう感じていますか。

しーな:これまでメジャーでということは考えていなかったんです。

あさか:なので、"挑戦"みたいな感じがあって。

しーな:今はこの場で、自分たちがやりたいことを突き通すという思いがあります。

-新曲とこれまでの曲の再録とで構成されたデビュー・アルバム『東京初期衝動』は、バンドの歩みや、東京初期衝動はこんなバンドですという名刺代わりとなる作品となります。まず、先行で配信リリースされたシングル「さよならランデヴー」の話から、お聞きしたいと思っていますが、この曲は、阪元裕吾監督による映画"フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡[私闘編]"の主題歌でもあります。この阪元監督のシリーズの主題歌は「エンドロール」(2022年リリースのデジタル・シングル『エンドロール / コマンドバトル!』収録曲/映画"グリーンバレット"主題歌)に続いて2曲目でもありますが、曲作りはどのように進んでいったんですか。

しーな:阪元監督の映画のエンディングで流れたときに、いい感じになるようにというのはありました。この曲は、北澤ゆうほ(Q.I.S./the peggies)ちゃんに作曲してもらったんですけど。まずゆうほちゃんが1番を作って、そこに私が作詞をして、またゆうほちゃんが2番を作ってという感じで進んでいったんです。ゆうほちゃんはキャリアもあるし、引き出しも多いので、作曲に関してはトキョショキ(東京初期衝動)のいい部分が引き出せるような形でとお願いをしました。私だったら絶対に作らないような明るいメロディで、すごくメジャーっぽいというか、エンディングに相応しい曲になったなと思います。

-東京初期衝動らしくパンキッシュでキャッチーさがありますが、同時に輝きのあるメロディや雰囲気を纏っていて新鮮でもあります。他の皆さんは、曲の印象はどうでしたか。

なお:第一印象は、映画のエンドロールで流れるのが想像できるというか、エンディングにぴったりの曲だなというのがありました。ゆうほちゃんは、今回のアルバムにも収録している「LSD -Love Suki Daishuki」のときも編曲をしてくれているんですけど、自分ではやらないようなドラムを考えてくれるので、新鮮で、楽しかったですね。

あさか:曲自体素敵で、今まで東京初期衝動があまりやったことがない感じの輝いている曲だったんですけど。スタッフの方からゆうほちゃんに、"楽器を難しくしてくれ"っていうオーダーがあったらしくて(笑)。だからあんなに難しかったのかと思ったんですけど、久々にめっちゃ練習しまくったというか、"やってやんよ!"って気合が入ったし、ベースを弾くのが楽しくなったきっかけになる曲でした。

まれ:ギターでも9thとか、これまで東京初期衝動で使ったことがないコードが出てきて難しさはあったんですけど、2本のギターの重なり具合とかがきれいで、制作していてもすごく楽しかったです。

-北澤さんへの信頼感が厚いというか、「LSD -Love Suki Daishuki」に続いてこうして作曲自体を任せられるだけの関係性が築けているんですね。

しーな:私がプライベートで仲がいいのもありますし、以前「LSD -Love Suki Daishuki」で編曲に入ってもらっていた経緯もあるので、「さよならランデヴー」はより安心してできましたね。レコーディングでもゆうほちゃんがディレクションをしてくれたんですけど、楽器もそうだし、歌もそうだし、歌詞のちょっとした直しをしてくれて、まさに"ゆうほP"という感じでした。

-しーなさんの歌詞については、映画主題歌ということを意識しているんですか。

しーな:キャッチーで、ちょっと切なさがある感じというのはあったんですけど、インディーズでの活動が終わって、メジャーに行くとタイミングでもあったので、自分のこれまでのまとめのように歌詞を書いていったので、実はあまり映画のことを考えていなかったんです(笑)。

-そうだったんですね。結果的には映画のエンディングに相応しいような、余韻のある曲にもなっています。自分のこれまでのまとめのようなということですが、これまでしーなさんが書いてきた曲、作品は振り返ってみるとどんなものになったと感じていますか。

しーな:振り返ってみると、その時々の自分の感情をちゃんと歌えていたなと思います。

-そうですね。ここが変わり目だったなと思う時期はありますか。

しーな:やっぱり、かほ(ex-Ba/現NEE)ちゃんがいなくなったときかな。2nd EP『LOVE&POP』(2020年リリース)くらいのときは、病んでたから(笑)。コロナ禍でもあったので、ちょっと暗めでしたね。

-そこから、あさかさんが加入して4人となって加速できていった実感はあったんですか。

しーな:加速してたかどうかは自分たちでは分からないんですけど、頑張って前向きにやってはいましたね。

-本作でもう1曲の新曲が「愛うぉんちゅー」です。"あいあいあいあいあーいI need you"というサビがキャッチーな、ノイジーでパンキッシュな曲ですね。

しーな:この曲は2~3年前に録って温めていた曲なんです。それがメジャーでのアルバムに入れられて良かったですね。

まれ:お客さんに歌ってもらえたら嬉しいところがたくさんある曲なので、聴き込んでライヴで一緒に歌えたらいいなって思ってます。この曲のギターは田渕ひさ子(ex-NUMBER GIRL etc./Gt)さんがアレンジをしてくれたんですけど、間奏のところもすごくかっこいいので聴いてほしいです。

あさか:何年か前に録っていたので、あまり自分が何を弾いたか覚えてなかったというか。マスタリングしたものが来たときに、"え、こんなんやったっけ?"みたいな。"こんなんもう弾かれへんで"ってなってましたけど(笑)。また練習しなきゃなって。これはライヴでも数回やっていて、以前台湾のライヴでもやったよね?

しーな:うん。

あさか:そこでの反応も良くて、みんなサビでハートポーズをしてくれたりして。

なお:歌詞やリズムもキャッチーなので、台湾でやったときも反応が良かったんですけど、改めてこうしてアルバムに収録できたので、これからのライヴでどんな反応になるんだろうと今から楽しみです。

-既発曲の再録の選曲はどのように決まったんですか。

しーな:東京初期衝動の強みはライヴなので、そのライヴ感を皆さんにも味わっていただけたらと思って、今回は、ライヴのセットリストみたいな感じで選曲をしているんです。

あさか:曲順もライヴを意識したもので。

-2019年11月にリリースした、1stアルバム『SWEET 17 MONSTERS』収録の曲も多いですが、当時の作品と今回では結構変わったなと感じるところもありますよね。まずしーなさんに関して言えば、声の感じも違うくらいで。

しーな:声、違いますよね。最初の頃って歌えなかったんです。「ロックン・ロール」とかも、当時歌えなすぎてレコーディングで泣いていたくらいだったんですけど、ライヴを通してどんどん歌えるようになって。それが今回のアルバムでレコーディングできました。

-当時もこうしたかったけど、思うように歌えなかったというジレンマですか。

しーな:自分が出したい声とか歌とか、歌い方も、当時は何も分からなかったんですよね。今でもやりたい歌ってなんだろうって思うんですけど、今はライヴをやっていくうちにできていったものが、自分のやりたいことなんだろうなと思ってます。

-初期の曲だと「Becauseあいらぶゆー」等は当時、すごく甘味のあるヴォーカルでしたよね。今はよりパワーもあって、エッジの鋭い感じがあるというか。

しーな:そうですね(笑)。この約6年間を通して、たぶん自分がやっていることに間違いがないって感じられたんだと思います。

-最初は何か自分がやっていること、歌うことに不安があった?

しーな:だって「Becauseあいらぶゆー」で"殺しておけばよかった"なんて歌ってますから(笑)。これを人前で歌うのはちょっと......ですよね。でも支持してくれるお客さんもいるわけだし、ちゃんとライヴとして仕上がってもいるので、だいぶ自信が付きました。

-しーなさんにとっての一番の変化はその自信というところでしょうか。

しーな:私だけでなく東京初期衝動自体、この何年かで自信はすごく付いたと思います。今回のアルバムのアートワークも、アーティスト写真もそうですけど、以前だったらこういう写真は撮れなかったなって思いますし。

-4人の顔を正面から捉えたアルバムのアートワークもアーティスト写真も、その表れなんですね。まれさんは、これまでの音源と再録との違いや自身の変化についてどう思っていますか。

まれ:1stアルバム『SWEET 17 MONSTERS』の頃はまだ楽器自体を始めたばかりで、何も分かっていなかったし、まさに初期衝動そのものっていう感じで(笑)。レコーディングでも、私、めっちゃズレまくっていたんです。今回の再録では落ち着いて周りの音をよく聴くということに一番気を付けました。