Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

COLUMN

ビレッジマンズストア 水野ギイの"家、帰っていいですか?" 第6回

2025年11月号掲載

ビレッジマンズストア 水野ギイの"家、帰っていいですか?" 第6回

隔月で2分の暇潰しを提供する水野ギイのコラム、今回もトイレのお供にどうぞ。
ビレッジマンズストアは現在周年イヤーを終える頃、新たな挑戦やこれからの楽しみにウズウズしています。このコラム然り、なるべく目につく場所で楽しさを共有する術を探そうね。

ということで挨拶もほどほどに本題へ。
面倒臭い、全てが面倒臭い。細胞を入れ替えるのも面倒臭い。特に面倒臭いのは食事睡眠洗濯掃除排泄女の子その他全ての人間的行動、そう「生活」である。これが本当に面倒だ。理由は分かっている、一人暮らし独身男性バンドマンは「生活」しなくてもそこそこ「生」できるのだ。誰にも怒られない、誰にも迷惑をかけない、ちゃんとしてても喜ばれない、全てが自己満足。
正直ちゃんと生活してる奴、格好つけすぎてるか頭おかしい奴だと思っていた。
繰り返しになるがこれが全員に当てはまるとは思っていない、この考えに至るのは自分が一人暮らしゆるふわ独身バンドマンだからだ。周りにも間違っているのはお前だと散々言われている。分かってるんだ。
30代も折り返し済み、もしこのままのおれがその日の気分で女の子と結婚なんてした日には悲惨な結末が待っていることは自覚している。
どうにか少しだけでも矯正せねば、と感じていたのだが、そんな中最近魔法の言葉を覚えた。人間らしい生活が一発で手に入るすごいものだ。
今日は自分と同じ境遇の人にこの魔法の言葉を送りたい。

「イケてる孤独死がいい」
今死んだらどうなるだろうと常に考えておくのだ。
不審に思った仲間が家のドアを開ける(当然カギなどかけていない)。靴めっちゃ綺麗に並んでたら躊躇わず入ってくれるよな、そのフレンドリーさが優しくてイケてる。機材とおもちゃで足の踏み場もない部屋の中、山積みになった洗濯物の中に埋もれるドロドロになった死体、イケてない。格好悪すぎる。少し片付けておこう。裸足で人ん家嫌だよな、スリッパ並べとこう。
死体見るついでに自慢のギターも見ていってもらおう、綺麗に拭いておくか。そしてイケてる孤独死はいい匂いから、変な枝みたいな芳香剤も置いておこう、死体はまあしょうがないとして、腐りそうなものをゴミ箱に放置するのはやめるか。死んだボーカル見るの少しショックだろうから、落ち着くために茶でも飲みたいだろう、冷蔵庫も綺麗にしとこう。
あとは自分だ。見つかるならやっぱベッドの上だよな、なるべく毎日寝相良く寝よう。白目は剥く、すまん。
孤独死は風呂も多いらしい。だらしない体見せるわけにはいかん鍛えておこう。目ヤニも取る、いつもいい感じの死に顔でいよう。服は迷うよな、バチバチにキメてたら逆に寒いまであるよな、でも高校のジャージは捨てよう流石に。
このようにいつか訪れるイケてる死体発見現場を日頃意識しておけば知らんうちに生活がいい感じになる。早く死来い、とさえ思う。
そしてこれは関係ないのだがこの魔法の言葉を意識してからインターネット履歴とエロ動画が全て消えた。これは本当に関係がない。
あとは君がイケてる第一発見者になってくれれば嬉しい。

全ての物事に終わりなんてない方がいいけどね、終わりを意識しないものほどつまらないものはないよ。先が見えなくなった時、やり方が分からなくなった時、大人になったら誰も答えを教えてくれなくなっちゃうけども、最後の一瞬をイメージしてその時を最高で迎えられそうな方に進むってのはどうだい。

ビレッジマンズストア

2003年11月に結成。焦燥と劣等感をもって焦燥と劣等感をぶち壊す、名古屋が生んだロック・バンド。2024年、Zepp Shinjuku (TOKYO)ワンマン開催。2025年は"村立20周年企画"として6月にベスト・アルバム『遊撃』、10月にデジタル・シングル「Teenage Zombies」をリリース。現在全国ツアーのファイナル・シリーズ"ファイナルアルティメット御礼参り"を開催中。