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INTERVIEW

Japanese

ビレッジマンズストア

2025年10月号掲載

ビレッジマンズストア

Member:水野 ギイ(Vo)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

活動休止していた荒金祐太朗が復活し、満を持しての鉄壁フル・メンバーで20周年イヤーを爆走中のビレッジマンズストアから、新曲「Teenage Zombies」が到着。今年4本(!)のツアーを駆け抜ける彼等がその最中に完成させたというストレートなロック・チューンが、あまりにもけたたましい祝砲として鳴り響く。怒濤の2025年を締めくくるワンマン・ツアーと、そのゴールテープの先へ。情熱と血で赤く染まったゾンビたちの行進は、全速力でまだまだ続く。

-昨年11月にZepp Shinjuku (TOKYO)で開催された20周年記念公演"(ビレッジマンズストア村立20周年記念公演)「正しい夜遊びの解」"以降、とにかくずっとツアーをし続けていますよね。"(ビレッジマンズストア 村立20周年記念ツアー)「スーパー御礼参り」"、"(ビレッジマンズストア村立20周年記念企画)「馬鹿御礼参り」"、"(ビレッジマンズストア 村立20周年記念ツアー)「アルティメット御礼参り」"、そして来る"(ビレッジマンズストア 村立20周年記念ツアー)「ファイナルアルティメット御礼参り」"と。

ですね。この周年イヤーはライヴをしまくろうねっていうのは最初から決めてたので、予定通りに。楽しそうにツアーをしてると、ありがたいことに誘ってくれる人も増えたりして、余計スケジュールが埋まっていくっていう。

-バンドの仕上がりはいかがですか?

俺等はもちろんいい感じですし、なんなら今年は観てくれてる人たちが仕上がってる。ベスト・アルバム(2025年6月リリースの『re:Rec BEST「遊撃」』)のリリース・ツアーも兼ねてるツアーなんですけど、やっぱりベストを出していろんな人が多くの曲を知ってくれたなって。それによってバンドもテンションや意識が高まったり、っていう相乗効果を感じてる状態ですね。

-フロアの空気感が変わってきたと。

そうですね。より楽しそうになった。まぁ俺は別に、どんな方法でも好きに観てねっていうスタンスなんですけど、とはいえみんなが楽しそうにしてるとこっちもいろんな仕掛けを考えることに注力できるから、それはいいことかな。

-ベスト・アルバムの制作もそうですけど、この1年間は過去のことを振り返る機会も多かったんじゃないかなと思います。

かもしれない。収録されてる曲をよりいい感じに演奏できるようになったし、逆にそこに入ってなくてライヴでもやってなかった曲をやってみたくなったり、っていう変化もありますね。でも、振り返ることはあれどそこに意識が向かってるっていうわけじゃないから、バンドとしては新しくなり続けてる。

-『(re:Rec BEST)「遊撃」』でかつての楽曲を再録したことで分かった現在のバンドの強みってありますか?

今でもガムシャラではあるんだけど、曲に対する理解は深くなってるから、楽しくやりつつもサウンド的にどしっとしてきてると思います。再録したことによってそれがさらに強まったし。ガチャガチャしてる部分と芯のある部分が、今はすごく好きなバランスになってる感じ。

-『「遊撃」』での再録はライヴ感のあるサウンドが印象的でしたけど、それを経てさらにライヴでの演奏が洗練されてきてる?

レコーディングでは、演奏の生々しさをあえて出そうねっていう方法で録ったんですよ。初期衝動のままに漏れたそれじゃなくて、狙って表現するそれ。だから、より目指してるガチャガチャ感に近付いた。

-昔は自然にそうなってたものを、今は意図的にやってるんですね。

そうそう。コントロールできずに"そうじゃねぇのに"っていうものが出てくるのも面白いんだけど、俺の中では"そうじゃねぇのに"を見せた時点でバンドって失敗なんですよ。だから、それが出なくなってきたっていうのは成長。

-興味深いです。普通は自然に漏れ出ちゃったものこそが本物でロックだっていう発想に向かいそうですけど。

俺はちゃんと用意したものを100点の状態で見せたいっていう気持ちがもともと強いから。あくまでその上で自由にやりたい。0点か100点か、が面白いバンドにはしたくなくて。"今日は本当に0点だな、でも最高だな"っていうバンドもあるんだけど、俺はそうじゃない。0か100かは痺れるけど、いつかは崩壊してしまう。20年やってきたことで、そうあることの弱みも見えてきたし。刹那的なものをぶつけるっていうのは、なんとなく安く見えてきたかも。いわゆるレジェンドクラスで今も活躍してる人はちゃんと100点を出し続けられてる気がします。突発的な何かは、その上で加えていきたい。

-そうしないと、高いテンションを保ったまま続けることはできないですもんね。

まさにそう。"いつまでもこれを続けていきましょう"っていうのは、意外と"自然にやりましょう"よりも難しいんですよ。それを無理しないで続けるには今ぐらいのバランスがいいんじゃないかな。無理して"ガチャガチャしてまーす!"っていうのはダサいじゃないですか。

-前のめりなまま活動し続けるのって大変だろうなと思っていたけれど、その話を聞くと納得です。

これまでの自分たちの好きだった部分、良かった部分とかはちゃんと覚えてるしね。それを大事にできるっていうのは長くやってる人の強みかな。

-この間のツアー("「アルティメット御礼参り」")では、黒歴史マンズストア(2010)として過去楽曲を演奏してましたよね。黒歴史って言うなら黙っていればいいのに、わざわざやるっていう(笑)。

いいっすよね(笑)。長くやってるのにバンド名を変えなかったから、高校生のときに作った音源とかが余裕で発掘されちゃうの。だったらまぁ、自分のやりたいことではないけど面白おかしくしてもいいかなと。バンド名を残してる責任だと思ってます。ほとんど知ってる人もいないだろうけど(笑)。面白かったです。

-活動休止していた荒金(祐太朗/Gt)さんが復活したのも、この1年の大きなトピックですね。前回の取材時(※2024年10月号掲載)には、水野さんが4人体制について"(最近は)「5」くらいあるぞ"、"祐太朗が戻ってきたら「6」になっちゃうんじゃないのって感じる"と語ってらっしゃいました。

そうなってるかもしんないなぁ。4人でやってたときの弱みも覚えてるし、今は5人でやることの大事さが分かった状態でやれてるから。メンバーが5人いるから5人で演奏してるっていう簡単なことじゃなくて、今このタイミングでこれを5人でやってるっていうことに価値がある。お客さんは当たり前のように俺たちがいると思ってもらって構わないけど、俺たち自身は自分がやってることは特別なんだと常に分かっておかないといけないっていう意識が、この1年間ですごく強くなった。

-一時的にメンバーを欠いたからこそ実感できたことですよね。

うん。15周年のときには、"よく続けてきたね"って言われても"いや、普通のことっすよ。特別なことなんてしてないっすよ"って返してたけど、今は違うなって。バンドっていうのは常にすごいことをしてて、奇跡的な確率で成り立ってる。それを実現できてる俺たちもちゃんとすごいんだっていうのを意識しようと思った1年だった。

-狙って荒々しさを表現していくということにも通じますね。そういった俯瞰的な目線がバンドには重要なのかもしれない。

そういうのが昔はできなかったんだと思います。結局はお客さんを喜ばせてあげたいだけなんだけど、その上で自分たちは特別なんだと認識してるっていうのが今かな。

-水野さんから見た今の荒金さんの様子はいかがですか?

酒はやめてますけど、楽しそうっすよ。自分がいなかったときのことが伝わってきて、やっぱり俺が必要じゃんって思ってくれてるんじゃないかな。それはガンガン思ってほしいし、いい意味でもうちょっと調子に乗らせてあげたい。メンバー全員がその気持ちを持っててほしい。俺さえ調子に乗らなければ大丈夫だから。

-そこは一歩引くのが水野さんの役割なんですね。

普通、逆なんだけどね(笑)。ヴォーカルは調子に乗っとけよっていう話なんだけど。でも俺は、全員でガッとやるスタイルが好きだから、そのために全員が自信を持っててほしい。ギタリストやベーシストが"俺が一番だ!"って思うことってわりと異常というか、普通の感覚じゃできないと思うから、それが可能なバンドでありたい。俺自身は、そんなこともねじ伏せるぐらいのヴォーカルでいようと思ってるから。