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INTERVIEW

Japanese

ビレッジマンズストア

2025年10月号掲載

ビレッジマンズストア

Member:水野 ギイ(Vo)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

-さて、今回リリースされるニュー・デジタル・シングル「Teenage Zombies」(※取材は9月下旬)は、荒金さんの復帰以来初の新曲ですが。

あ、たしかに。全然意識してなかった(笑)。

-ツアーの合間に書いた曲っていう感じですか?

そう。ツアー中にホテルとかで。デモはスタジオに入らないで作りました。

-それは結構珍しいやり方ですか?

最近はそれが増えてきてるかな。祐太朗は住んでるところが違ったりもするから。やっぱりツアー中に作ることによって、よりライヴを意識できたっていうか。"明日これを演奏するとしたら"をリアルに考えられるわけですよ。だからライヴ感の出た曲になりました。

-20周年を記念した新曲とのことですが、制作段階からアニバーサリーを飾る楽曲にすることは意識してたのでしょうか?

そうかも。何もないときは"よし、名曲を作ろう"って取り掛かるんだけど、今回は20周年を迎えるにあたってどういうテンションで演奏していたいかとか、お客さんがこのタイミングでどんな音楽を聴きたいかっていうことを考えました。

-その答えが、シンプルでストレートなロック・チューンだったんですね。

そうですね。他の展開やメロディもあったんだけど、俺もメンバーもシンプルなほうがいいんじゃないかって考えてたから、全部削って。それと、いつもよりメンバーみんなの声を入れたんですよね。シンガロングのパートがあって。俺たち全員で歌える曲っていうのがやりたかったことの1つでした。ある意味お客さんのことは置いてけぼりでも良くて。細かい話なんですけど、今まではシンガロングのレコーディングって全員で同時に録ってたんですよ。

-1つのマイクを囲んで?

そう。でも今回は一人一人録って。別に聴いてる側としてはそんなに変わらないかもしれないけど、全員がしっかり歌うってことに力を注ぎました。ちゃんと5人の声を入れたかったから。全パートが横並びで映える曲にしたいっていう気持ちもありました。ここはこいつがガツンと来てるとかじゃなく、全員で。それがこのタイミングで聴きたい曲かなと思って。

-この5人で20周年を迎えたということは、水野さんにとって特別な意味があるんですか?

なるべくしてなったことだから当然意味はあると思ってるけど、4人のまま20周年を迎える予定だったのが、5人に戻って完璧な形で迎えられたっていうことが大きいかな。もちろん、ベストを作るときは今までやめていったメンバーのことも考えたし、その上で全員がそれを飲み込めるメンバーで良かったなと思う。そういう意味では、この5人で演奏してるっていうのは正解なのかな。いいやつに囲まれてるなとも思うし。

-そういった喪失を踏まえての"Teenage Zombies"という曲名はめちゃくちゃ秀逸です。

いやー、これは良いですよね(笑)。パッと浮かんで、すぐに決まった。ずっと変わらない気持ちでバンドができてるのはすごいなと思って、それを題材にしようって。例えばこの先、あんまり声が出なくなったり、身体が動かなくなったりするかもしんないけど、それでも同じ気持ちでやるんだろうから、もう10代のゾンビだなと思って。10代の心のまま墓まで行くんだと思う。

-20周年の総まとめでありつつ、未来に向けての言葉でもありますよね。この先も不死身だぜっていう宣言。

30周年でも歌いたい。それは意識して作ったかもしれない。

-このタイミングで"Teenage"っていう言葉選びもシャレが効いてる。"10代"っていうのは水野さんにとって重要なキーワードなんですか?

やっぱりみんな、バンドにハマるのは10代じゃないですか。俺なんかは14歳ぐらいで楽器を始めて、曲を作って、ライヴに足を運びまくって。そのときには将来のことなんか考えてなかったけど、いざ歳を取ってみたら、結局同じことをしてる。そういう基準になる年代っていうか、始めたのが10代だから一生10代のことは考えると思うんですよね。

-逆に、10代でできなかったことがコンプレックスになって、その後の原動力になるっていうパターンも。

あー、言われてみるとたしかにそうですね。10代でできなかったことが今はできてるっていう喜びもある。俺は、田舎で分厚い丸メガネをかけてるデブで角刈りの少年だったわけです。そりゃコンプレックスもめちゃくちゃあるでしょうし、そのときよりできることがめっちゃ増えて、だけど変わんねぇこともあるのがすげぇなとも思う。そのときの自分を喜ばせてあげたいっていう気持ちが未だにあるのかもしれない。

-バンドを始めてからも紆余曲折があったと思います。この曲の歌詞で言えば、"腕が外れ"て、"胸が潰れ"ているバンド。

そう。でも、傷を負った分だけ無茶できるっていうか。痛みを武器にできちゃう強さがロック・バンドにはあるっていうのを言いたかったのかも。マイナスになったときのことは忘れないから、さらに無理できちゃう。無茶の仕方が上手くなっていく。

-一度死んで蘇ったら前より強くなってるみたいな。

筋組織と同じですね(笑)。

-Bメロのフレーズもすごく好きなんですよ。ビレッジマンズストアは"声も匂いも変わらない"、一方で"ビルも言葉も変わっちまう"。バンドを取り巻くシーンも環境も。

うん。自分が変わってないといっても、バンドをやっている間にいろんなものが変わっていく。対バンするバンドだって変わっていくし、なんなら昔一緒にやってたバンドなんてもうほぼいない。そんななかで自分を鼓舞したいっていう気持ちはめっちゃ強い。それは強がるっていうよりも、変化を受け入れた上で進んでいきたいから。

-うんうん。

それはお客さんの身の周りにも言えることで。そのなかでこう歌うことで、"周りが変わったとしても、自分は変わらなくてもいいよな"って思えるんじゃないかな。バンドマンもお客さんも、"(状況が)変わったね"って口に出すのは怖いんですよ。でも、"変わったけど、大丈夫だよね"って言うのも大事だから、それを歌詞に落とし込んだほうがいいなって。それは昔から言い続けてることだと思う。

-ある意味、お客さんを安心させたいっていうことでもあるんですかね。

そう。やっぱりバンドって革新的であるべきだし、誰もが新しいものを求めてるし、常にシーンは変わっていくし、普通はそういう考えに至らないんだけど、20年続けてその面白さが分かってきた。状況も環境も変わらないままでいいかって言ったらそうじゃなくて、俺たちは変わらない武器を持ったまま売れてやろうぜって普通に思ってるし。そうやって強気でいてくれることって、お客さんにとってめちゃくちゃ気持ちいいから。

-研ぎ澄ませる面白さを示したい?

そうそう。同じ武器を持ったまま強くなったほうがカッコいいから。正直、別に新しいことをやろうと思えばできるんですよ。売れてる人をパクろうと思えばいくらでもパクれるし。ちゃんとやりたいことを1つ持ったままやり続けるほうが難しかったりして。だから、"俺たちはこのままやっていくよ"って言ってあげるのがカッコいいのかもなって。