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COLUMN

Hakubi 片桐の"ひと折りごと" 第2回

2025年12月号掲載

Hakubi 片桐の"ひと折りごと" 第2回

#2[ことばのはじまりのひと折り]

私の人生の「折り目」を綴る「Hakubi片桐の"ひと折りごと"」。
第2回となる今回は、「ことばのはじまりのひと折り」を綴っていきます。

歌詞を書き始めた日のことを、私ははっきりと覚えていません。
昔から創作することは好きな子どもで、当時やっていた通信教育講座のポイントで初めて交換したのは「漫画家セット」。小学4年生の国語の授業で、物語を書く課題を原稿用紙10枚ほどでいいところを、40枚以上書いてしまったのは、今となってはとても恥ずかしい思い出です。

中学生になると、下敷きの裏側や缶ペンケースの表面に、好きな楽曲の歌詞の一節を書いたりしていました。
それまでは、創作した物語の中のキャラクターが発する「言葉」や、誰かの想いの乗った楽曲の「言葉」を書いていただけだった私が、「自分だけのことば」を綴るようになったのは、多分中学生になった頃だったのではないかと思います。

学校の授業中、ノートの隅に日記のようにその時思っていたことを書き留めていたのが、はじまりでした。

当時は詩を書いているつもりは一切なく、ピアノやギターは演奏していたものの、これらを歌にして自分で歌おうと思ったのは、「Lyu:Lyu」というバンドに出会ったからでした。

彼らの音楽は、必死で笑顔を振りまいて上手く生きようともがいていた当時の私のことを歌ってくれているようで、誰にも壊せない私を壊してくれるようで、救ってくれるようで、まさに「メシア(救世主)」でした。初めて私をライブハウスに連れて行ってくれたバンドでもあります。

苦しいこと、辛いこと、悲しいことを胸の中にいっぱいいっぱいにしまって、溢れ出さないように押さえつけていたそれまでの私は、彼らの音楽に「痛みを吐き出していい」「口にしていい」「そして、私は私の苦しみを歌っていい」と教えてもらいました。

それから、ノートの端に書いていた言葉はやがて、ただその時のことを綴るだけではなく、より本心をぶつけられる場所、自分と向き合うために必要なものへと変わっていき、私だけの「ことば」を表現するようになっていったのです。

それでも、どこかで「私の苦しみなんてちっぽけで、もっと辛い人がいる」と押し殺していたり、ネガティブなことを言うことで人に嫌われてしまうのではないかと思っていた当時の私は、
両親の思いのこもった本名で現実を生きる「私」と、そこでは生きられない「わたし」、片桐をうみだし、彼女が「ほんとうのことば」をこぼせるようになっていきました。

「分けよう」と決めたわけではなく、本当に生きるために必要だったから、自然とそうやって分かれていったのだと思います。実際に、片桐は私の真っ黒な部分を引き受けて生きてくれた、ことばの逃げ場所であり、居場所であり、相棒のような存在です。どちらも自分自身なのに、少し不思議な感覚ですが。

Hakubiというバンドを始めてから、今にいたるまでも、私とわたしの旅は続いていて、私だけの「ことば」を歌い続けています。

私の「ことば」のはじまり、折り目をくれたCIVILIAN、そして影響を与えてくれた多くの音楽家たちに、心からの感謝を。

Hakubi

片桐(Vo/Gt)、ヤスカワアル(Ba)からなる京都発ロック・バンド。2021年9月、メジャー・デビュー。2023年11月にはZepp Haneda(TOKYO)&なんばHatch公演を成功。飾らない言葉で綴られた内省的な歌詞と、弱さを押し隠す力強い歌声、繊細さと激情を併せ持つ楽曲とライヴ・パフォーマンスが多くの支持を集めている。2026年1月には自主企画"京都藝劇2026 - 四条 冬の陣 -"を開催する。