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INTERVIEW

Japanese

Hakubi

2024年04月号掲載

Hakubi

Member:片桐(Vo/Gt) ヤスカワ アル(Ba) マツイ ユウキ(Dr)

Interviewer:フジジュン

ひとり切ない夜。深い闇の底で、そっと寄り添ってくれる音楽。京都発3ピース・バンド Hakubiが、最新ミニ・アルバム『throw』をリリースした。昨年3月に2ndフル・アルバム『Eye』を発表、4月からは全国アルバム・ツアー"Hakubi one-man tour 2023 -Eye to Eye-"を開催し、8月には3度目の自身主催フェス"京都藝劇 2023"を成功させて、11月には東京、大阪でのワンマン・ライヴ"賽は投げられた"を実施。高い注目を集めて勢いに乗るHakubiの最新作は、自身と改めて向き合った原点回帰的な要素もありつつ、新しい表現にも果敢に挑戦した意欲作だ。バンドの振り幅を大きく広げてくれたフル・アルバムを経て思ったこと、今3人が考えていることとは? 最新作『throw』について、そして現在のHakubiについてたっぷり訊いた。

-Hakubiのミニ・アルバム『throw』が完成。まとまった作品というところでは、昨年3月リリースの2ndフル・アルバム『Eye』以来となりますが、前作以降の1年はHakubiにとってどんな期間でしたか?

片桐:前作の制作時は、コロナ禍以降の作詞作曲で伝えたかったこととして、"元気になってほしい"って気持ちが強かったんです。それ以前のHakubiの暗いところと比べたとき、光が刺すパーセンテージがすごく上がっていた楽曲が多くて、そういった楽曲を携えてツアーを回ったりするなかで、"自分たちが笑顔じゃないと、笑顔にさせられないよな"と考えていたんですが、"自分にしかできないことって違ったんじゃないかな?"と思ってしまって。今回の『throw』には結構、その気持ちが繋がってきてるところがあります。

-自分にしかできないこととは、具体的に言うとどんなことだと思ったんですか?

片桐:まず、明るいポップな音楽というか、みんなを楽しませる音楽だったら、他の人のほうが上手いと思ったんですよね。自分たちもやりたいし、みんなに笑顔になってほしいという気持ちはあるんですけど、"自分らに求められてるものや、自分にできることって、もっと違うことなんじゃないか?"っていうのにより近づいたというか。今までで一番明るいものを作ったからこそ、本質が見えてきた1年だったと思って。とはいえ、明るいものを求めたことが良くなかったわけじゃなくて、あのときは楽しんでできてたし、それが正解だったと思うんですけど、それを経てまた立ち返ってきた、原点回帰みたいなところも今作にはあります。今回は作った順にリリースしてきた曲に新曲を加えたミニ・アルバムになっているんですけど、前作で大きく幅を広げたところから、1年かけて自分たちのできることを突き詰めて、原点に戻っていけた感じがあって。1年通して考えられた結論というか、今の自分の心を投影できたと思っています。

ヤスカワ:そう。これまでいろんな音楽の振り幅を試してきたんですけど、期待値ほど認知されなかったし、結果として伴っていなかったんで、"インディーズの頃にやってたような、1曲に対するカロリーの多い曲を増やしていこう"って話はしていて。メジャー・レーベルのやり方とHakubiの昔の方向性を擦り合わせていくって、結構難しかったんですけど、今のレーベルも応援してくれて、この作品に繋がっていった感じでした。

マツイ:今、コロナ禍から出てきたバンドに伴って、ロック・リスナーに若い子が増えていて。そんな新しいリスナーに振り向いてもらうためにも、自分たちが昔から持つ強みを出すというのを意識してできた1枚やと思ってます。"新しい世代の人たちに響くHakubiの良さってなんやろ?"と考えたとき、やっぱり昔から持ってる強みを見てもらうのが、最短距離で届くんじゃないかなと。昔の自分たちも意識しつつ、コロナ禍で出した2枚のアルバムとかも踏襲しながら作れた1枚やと思います。

-サウンドや表現では最新型のHakubiを魅せることができていて。ミニ・アルバムだから一曲一曲がより色鮮やかに響くというのもあるけど、それぞれとしっかり向き合えてるし、楽曲の世界観が構築できているし、いろんな挑戦ができてる曲も多いです。

片桐:いろいろやりました(笑)。それもアレンジャーの人やプロデューサーの人ありきでできてるんじゃなくて、自分たちから出てきたもので作れているので、言葉だけじゃなくて音もリアル感を増したんじゃないかと思っています。

-では、そんな『throw』が完成しての率直な感想はいかがですか?

片桐:今はこの作品がどう思われるのかが気になりますね(笑)。でも「最終電車」、「拝啓」、「Soumatou」、「Heart Beat」ってすでにリリースしてきて、みなさんの反応も良くて。特に「Heart Beat」が一番良かったですね。今もライヴでどんどんやってるんですけど、最初は青臭い感じがすごくイヤだったし、もっともっと大人になりたいなと思って。私、大人っぽい素敵な歌手にすごく憧れていて、People In The BoxとかThe Novembersが大好きで。"この人は何を考えてるんだろう?"って、その人のことをすごく考えるんだけどわからない、みたいな歌詞も書いてみたいんですけど、ストレートにしか書けないから、それがすごく恥ずかしくて。「Heart Beat」は、そんな自分の歌詞が好きだって言ってくれる人が多いし、メンバーもそう言ってくれるので。嬉し恥ずかしいって感じです(笑)。

-「Heart Beat」はたくさんの人に届くキャッチーさもあるし、日々何かを抱えながらしんどい思いをしている多くの人に当てはまる曲だなと思うし、そこからさらに深い世界へと誘ってくれる今作の入り口としてすごくいいし。"どうせなら負けたくはないよな"という、ギリギリのところから生まれる前向きな言葉がリアルに響きました。

片桐:曲を書いてるときは"みんなに当てはまる"なんて考えてないんですけど、もしかしたらこの歌詞のようなことをふっと思う瞬間があるかもしれなくて。自分の歌詞は自分だけのことを書いてるので、わかってもらえないんじゃないか? と思いながら書いてるんですけど、曲にして発表すると"私もそういうことを思ってました"とか"私の気持ちを代弁してくれてありがとうございました"って言ってもらえたりして、書いて良かったんだなと思える瞬間がすごく嬉しいんです。

マツイ:「Heart Beat」は去年の11月、Zepp Haneda(TOKYO)となんばHatchでワンマンをやるのに、お客さんにサプライズのプレゼントがあればいいなと思ってデモから急いで形にした曲だったので、制作日数は一番短かったし、勢いで作った曲やったんですけど、ライヴ後に反応もあって、MVも作れるくらいの曲になったんで良かったです。

-ヤスカワ君は『throw』ができあがっての感想はいかがでいかがですか?

ヤスカワ:いいもんはできたと思うんですけど、認知されないと意味がないので、どういう層に響いて誰が聴いてくれるかとかは、リリースしてからのお楽しみという感じで。今回は、今までみたいに実験的なことはしてなくて、それぞれの曲に今までやってきたことの系譜があって、進化系みたいな形でやれてるので、年相応の大人っぽさも入れつつ、原点に戻ったみたいな感じがあって。狭間にはあるんですけど、その悩んでる感じも曲に出ているので、そこも楽しんでもらえればと思います。

-キャリアって滲み出るものだから、自分が思ってる以上にキャリアに見合った表現ができてると思うし、上手くやりたいけどやれないというジレンマもHakubiの楽曲のテーマや作品性に合ってる気がして、リアルな表現に繋がってていいと思いますけどね。マツイ君はいかがですか?

マツイ:密度の高い7曲が揃ってるんで自信はあるんですけど、リリース前って"どうなるんやろう?"って気持ちが毎回あって。Hakubiが常に新しいことをやってるのをライヴでばっちり見せられるというところに不安はないんですけど、曲を聴いて、ライヴに行くか行かへんかが決まっちゃうんで。ライヴに行きたいと思ってもらえる作品を作れたかどうか? 自分では自信があるんですけど、リリース前は毎回不安です。