Japanese
ビレッジマンズストア
Skream! マガジン 2025年12月号掲載
2025.11.08 @東京キネマ倶楽部
Writer : サイトウ マサヒロ Photographer:タカギユウスケ
ロック・バンド、ロック・バンド、ロック・バンド。水野ギイ(Vo)はライヴ中、様々な文脈でその言葉を繰り返した。歌か楽器のできるやつが数人揃った集団、という要件だけでは説明し切れないパワーの正体。結成20年を超えてもまだそれを解明できなくてがむしゃらに走り続けている彼等にこそ、一番良く似合う肩書きに違いないと思った。
昨年2024年11月の"ビレッジマンズストア村立20周年記念公演「正しい夜遊びの解」"以来、ツアーを終えたらまた次のツアーへと駆け出し、ひたすらにライヴ漬けの1年間を過ごしてきたビレッジマンズストア。アニバーサリー・イヤーを締めくくるワンマン・ツアー"ビレッジマンズストア 村立20周年記念ツアー「ファイナルアルティメット御礼参り」"を折り返し、水野いわく"因縁の地"だという東京キネマ倶楽部へと降り立った。
楽器隊4人がステージに現れ音を鳴らすと、東京キネマ倶楽部の代名詞である下手側階段上のサブステージにスポットライトを浴びた水野が堂々登場。オープニングを飾った「黙らせないで」はウォーム・アップに十分すぎる一曲で、早速シンガロングが巻き起こる。水野はフロアに身を乗り出して、オーディエンスの手を取りマイクを向ける。
"ロック・バンド好き? ロック・バンドやろうぜ!"。無邪気に吼える水野に煽られて、「1P」の四つ打ちのリズムに乗った一面のバウンスが。筆者のいる2階席にも揺れが伝わる。そして最新シングル「Teenage Zombies」へ。率直に言って、感動的だった。20周年という年月が結晶化したメロディと言葉に一人一人が歌声を重ね合わせて、新たな景色を彩るアンセムが生まれる。そんな特別な瞬間だった。
ライヴは序盤とは思えない濃度で進んでいく。「トラップ」で坂野 充(Dr)が変幻自在のビートでオーディエンスを先導し、「みちづれ」ではウエムラの躍動するベースラインが楽曲を牽引したかと思えば、岩原洋平(Gt)、荒金祐太朗(Gt)の両翼がダイブして、観客の頭上で身を捩りギターをかき鳴らす。全員が、"俺が主役だ!"と叫ぶようなプレイ。ロック・バンドという暴れ馬の手綱を5人が別方向に引っ張った結果、奇跡的なバランスでそこに留まり続けている。
誰よりも自分が楽しんでやろうというエゴが全開なのは、オーディエンスも同じかもしれない。「みちづれ」の"Hey Ho,ちゃんとすんな"というリリックに、大きなモッシュピットとクラウドサーフが応答する。天井知らずにヒートアップする彼等を前に思わず水野が演奏を中断し、"怪我だけしないように"と投げ掛けるシーンも見られた。信頼のもとで、それぞれの身勝手を曝け出してぶつけ合う。
中盤には水野がアコースティック・ギターを携え、アカペラから「盗人」を歌唱。汗も引かないままにセンチメンタルな旋律を紡ぐその姿はややちぐはぐだけど、だからこそ真に迫っていて美しい。続くMCで"なんと、今までのツアーで一番動員が多いです!"と発表すると、会場が大きな拍手に包まれる。次回の節目には"今までに見たことのない(東京)キネマ倶楽部でのライヴ"を作り上げたいという野望を口にしつつ、"次の話をするために、今日は20年の中で一番カッコいいライヴにしないと"と意気込み、"俺たちでビレッジマンズストアを最強のバンドにしようぜ!"という一言を「夢の中ではない」に繋げてライヴを再開。ビレッジマンズストアはまだまだこれからのバンドだ。再び未来に向けての疾走が始まる。
「猫騙し人攫い」、「MIZU-BUKKAKE-LONE」とダンサブルな楽曲が続き、岩原と荒金によるサブステージでのギター・ソロの掛け合いが熱狂に拍車を掛ける。一瞬の静寂を挟み「アダルト」がエモーショナルに響いて、「アディー・ハディー」では"遊べ!"という水野のシャウトを合図に、カラフルなダンスフロアが咲き乱れる。
妥協もペース配分もお構いなしのまま、ライヴはいつの間にやらクライマックスへ。唯一のオリジナル・メンバーである水野が、坂野(2009年)、岩原(2012年)、荒金(2018年)、ウエムラ(2023年)と4人の仲間たちの加入を順を追って振り返り、"水野ギイ、頑張って良かったね"と自らを労う。"今日が最高の日だったねって言えるようになるの、たぶんすぐじゃないよね。だから、俺たち続けていかねえとなって思うよ。売れようぜ、俺たち!"。ここまでまっすぐに宣言されたら、こちらもまっすぐに応えざるをえない。「サーチライト」で、天井を突き破らんばかりの歌声が響き渡る。
"お前が今日ここにいたことを、10年後に自慢できるようなロック・バンドになるぜ。ビレッジマンズストアに任せとけ。これが20年やってきたロック・バンドだ!"。いくらキャリアを重ねたって、自信過剰なままでいてくれ。誰もがその大胆不敵な言葉に強く頷くなか、本編ラストを飾ったのは「PINK」。いくつもの拳が掲げられ、岩原の絶叫が響き、フロアは一斉にヘッドバング。水野はオーディエンスの上で叫びのような声を一身に浴び、目を閉じる。そうしてアウトロでステージに倒れ込むと、"全部使ってやったぞ、バカ"と吐き捨てた。
アンコールでは、ハードオフで購入したというポカポンゲームで水野とウエムラが対戦。ウエムラが勝利した暁にはアンコールの曲を決められるというご褒美があったものの、水野があっさりと勝ってしまった。披露されたのは「ロマンティックに火をつけて」、「Don't trust U20」、「ボーイズハッピーエンド」の3曲。前のめりに、感傷に浸る間もなく駆け抜けてくれた。坂野以外の4人は全員サブステージに登って、主役の座を奪い合う。フロアではダイバーが大渋滞。わけが分からないくらいにグチャグチャだけど、みんなが笑顔だった。"ロック界ではうるさいやつが一番カッコいいから。ずっと遊んでね。ずっと変わらずやろうね。俺たちがロック・バンド、ビレッジマンズストアでした"。メンバーが舞台を降りた後も"うるさいやつら"の興奮は収まらず、会場に鳴り響くエンドSE「Teenage Zombies」の大合唱は続いた。
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