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COLUMN

ビレッジマンズストア 水野ギイの"家、帰っていいですか?" 第5回

2025年09月号掲載

ビレッジマンズストア 水野ギイの"家、帰っていいですか?" 第5回

家が⼤好きバンドマンが家にラブレターを⾶ばすコラムのお時間です。正直コラムのタイトルをカロリー少ない⾵にしたかっただけで家に関することを書かなければならないルールはないのですが、⾔いたいことが溢れ出て⽌まらない。だれかおれを⽌めてくれ。
隔⽉ということは前回は2ヶ⽉前、どうですか寂しかったですか?さらに書いているときから掲載されるまで約1ヶ月。残念ながら外気に触れない快適な家の中でコラムを書くので1ヶ月後の季節の挨拶も出てきませんが、まるでタイムマシンですね。1ヶ月後のあなたに会いに⾏きます、よろしくどうぞ。

というわけで本題
さて、タイムマシンで思い出したのだが
⾃⼰啓発の謳い⽂句によくある【5年後、10年後に「あれをやっておけばよかった」と後悔した⾃分が、タイムトラベルで現在に来た。と思って⽬の前の課題に打ち込みましょう。今未来を作るのです。】
みたいな類の話、どう感じるだろうか。おれはですね、あれ、本当に素晴らしいと思う。 あ、今がっかりしたよね。分かるんだおれそういうの。
おれのことをよく知ってる⼈ならば「⽔野は意識低いしそういう焚き付ける系のやつ嫌いそう、⼼弱ってるときは福満しげゆき先⽣の漫画以外読めなさそう」という認識だろう。 後半は正解だ。まあ聞いていただきたい。

先⽇ラジオに出演した際「ツアーで1週間家を空けるときも、必ずエアコンは付けたまま⾏きます」と発⾔して⼤層驚かれた、というか引かれた。エアコンのリモコン無くしたのかな?と思ったあなた、舐めるなよ。ちゃんとある、今すぐはちょっと、どこにあるか分かんねえけど。あるよ、あるもん。
そのときは「ギターがあるので空調管理しないとなんすよへへ」と誤魔化し、なんとか⾯⼦を保った。
がしかし、本当の理由は全然違う。
一⼈暮らしおじさんが一番つらい瞬間はいつか。そう、帰宅したときである。
ドアを開けた瞬間籠った湿気とムワっとした熱気、さらに前々回のコラムで綴った「遠出から帰ると部屋から知らないおじさんの匂いがする」現象。
地獄のような部屋、何⽇間か頑張った体はちょっと突くだけでジワッと汗が吹き出る。疲れた、すぐに快適な空間で横にならないと死ぬ。
ここで想像してもらいたい。
このとき、空から突然綺麗な天使(Gカップ)が現れて「1000円払ったら 0.2秒でこの部屋を涼しく快適な空気に変えましょう、どうですか(ボヨンボヨン)」と⾔われたら、と。
おれなら迷いなく「ありがとうございます!」と即答するだろう。
もう⾔いたいことは分かるはずだ。
おれは未来を買ったのだ。(課⾦して)未来のおれの天使になってあげたのだ、おれは天使だったのだ。
未来の⾃分のことは⾃分がけっこう知っている、おれなら救える。⾃堕落なお前を喜ばせてあげられる。Gカップじゃなくてごめんな。
ちなみにエアコンだけじゃなく空気清浄機、電気、なんならパソコンのモニターも付けたままだ。全部有料でも⽔野が喜ぶからだ。

明⽇に⼩さな希望なんていくらあってもいい、どうせどうやったって悲劇は勝⼿に当て逃げしてくる。知ってる分の確実な幸せは逃さず⼿に⼊れていたい。
明⽇の⾃分のためにちょっと慣れないフレンチトーストを漬け込んでおく、テレビ番組の録画予約をする、好きな曲を⼝ずさめるようにしておく、全部叶えてあげられるよ。
おれだ、おれは過去のお前だ、かわいいかわいいおれのあいつは明⽇、喜んでくれるかな。

ビレッジマンズストア

2003年11月に結成。焦燥と劣等感をもって焦燥と劣等感をぶち壊す、名古屋が生んだロック・バンド。2024年、Zepp Shinjuku (TOKYO)ワンマン開催。2025年は"村立20周年企画"として、6月にベスト・アルバム『遊撃』をリリース。8月にライヴDVD発売。現在ツアー"アルティメット御礼参り"を開催中で、10月からはファイナル・シリーズ"ファイナルアルティメット御礼参り"を行う。