Japanese
UVERworld
2022年08月号掲載
Member:TAKUYA∞(Vo) 克哉(Gt)
Interviewer:増田 勇一
周りから期待を寄せられることによって、成果が向上することがある。それをピグマリオン効果というのだそうだ。UVERworldの最新シングル『ピグマリオン』はまさしくそれに由来するものだが、面白いのは、そのタイトルから予想されるようなあからさまな応援ソングでは全然なく、空間に富んだトラックに乗せて、TAKUYA∞自身の"今"の心情が実にさりげなく綴られていること。その最新曲、そして7月に発売されたインストゥルメンタル・ベスト・アルバムに関することを中心に、TAKUYA∞と克哉のふたりに話を訊いた。
-初のインストゥルメンタル・ベスト・アルバム『INSTRUMENTALS-∞』を聴いて、このバンドの強みが歌詞とメロディばかりではないことを改めて実感させられました。ヴォーカル抜きのトラックでここまで楽しめるバンドというのも、きっと珍しいはずです。
克哉:そうかもしれないですね。普通のロック・バンドのインストだったら飽きちゃうかもしれない。ただ、僕らの場合はバンド・サウンドから掛け離れた曲もあるし、音楽的にいろんな挑戦もしてきたし。だからこうして33曲並べても楽しんでもらえるものになるのかもしれないな、とは改めて思います。ただ、気軽にカラオケみたいに使ってくれて構わないんですよ。実際に歌ってみて、そこでTAKUYA∞のすごさを知ってほしい。もちろん単純にBGMとして聴いてもらってもいいし、あと"ここにこういう音、詰まってたんや!"みたいな細かいところでの発見も楽しめるはずだし。
TAKUYA∞:ヴォーカルなしでも聴き応えがあるなとは自分でも感じますし、"ヴォーカルなしのほうがカッコいいんじゃない?"って本心から思う曲もあります(笑)。まぁ、それは自分が当事者だから思うことなんでしょうけどね。ただ、自分は曲を作ってるだけで演奏には一切関わってないアルバムですけど、楽しんでもらえるものになったんじゃないかと考えてます。それこそ"歌ってみた"みたいなことをやりたい人たちにも。
克哉:いわゆる裏メロってものを、結構こだわりを持って作ったり弾いたりしてるので、そこを聴いてほしいというのはありますね。だから"あ、ヴォーカルの後ろでこんなきれいなメロディが流れてるんや"、"聴いてて心地よかったのはこのメロのせいだったのか"みたいな発見があるかもしれないし。これを聴いたうえでライヴを観に来てもらえると、そういうことをいっそう実感できるようになるんじゃないかと思うんです。大きな会場とかでデカい音でやってると、逆に細かいところは聴こえにくかったりするんですけど、これを1回聴いておくと曲の構造みたいなものが脳に認識されるはずだから、またちょっと違う聴き方ができるんじゃないかなと思いますね。
TAKUYA∞:うん。ただね、UVERworldの曲を歌うのは難しいっすよ(笑)。キーも高いし、譜割もね。自分でもカラオケで歌うとめちゃくちゃ難しいと思うし、他人の曲を歌ったほうが上手いって言ってもらえたりするんです(笑)。本気じゃないと無理というか、軽い気持ちで歌えるものではないと思う。そこがいいところでもあるはずだけど。
-僕自身、軽い気持ちで歌おうとして挫折した経験があります。
克哉:右に同じ(笑)。このオケによくこんなメロディ乗せたな、と思わされることも結構あるんですよ。例えば「GOLD」とかもそう。オケができてから歌を乗せた曲もあれば、歌ができてからオケを作ったものもあるんですけど、作り手として、よくこんなメロディを乗せられるもんだなって感心させられることは多々あります。
-TAKUYA∞さん自身は、"これは歌メロが乗せにくそうだな"と思いながらトラックを作ることもあるんですか?
TAKUYA∞:自分で作るときはないですね。基本的にはトラックを作るのと同時にメロも聴こえてくるんで。逆に、それが聴こえてないときは結構大変というか、そうやってメロが聴こえてきたものだけがちゃんと完成されて世に出てるというか。だから実際、ボツになってる曲も多いんですよ。だいぶ捨ててますね。
-もったいない(笑)。作りたいトラックと、作りたいメロディ。それが合致しないこともあると思うんですが、そこはどうやって折り合いをつけているんですか?
TAKUYA∞:そこはもう感覚的なものでしかないですね。あんまり計算とかはしてない。前回こんな感じだったから今回こんな感じでいこうとか、そういうことすら考えてないし。実際、今回のシングルもこんな曲にしようと思って作ったわけじゃないというか。創作意欲は常にあるんですけど、それって自分でコントロールできるものではないんですよね。結局、作りたい曲しか作れないんです。そういう不器用さは自覚してます。
克哉:結局はそういうことになりますよね。首を傾げながらやってるものって、結局はあんまり良くならないというか。そういう感覚は僕にもあります。
TAKUYA∞:だからトレンドを追ったりできないんですよね。全然面白いと思えないから。アメリカでは今、ちょっとバンド・サウンドが戻ってきてる傾向があるじゃないですか。しばらくそうじゃなかったのに、10年以上前とまったく同じ音に戻ってるアーティストもいる。それもそれでいいんでしょうけど、僕的にはまったく響かないんですよね、それが今の流行りだったとしても。トレンドを追いかけて曲を作るということができないし、だからそういうものを取っ払ったところでこんな曲ができてくるんです。
-新しい曲が出るたびに話を聞いていて思うのは、"音"として最新のものを出したいという気持ちの強さ。でも、"最新=トレンド"というわけではないということですね?
克哉:うん。世の中で最新かどうかではなく、自分たちにとって最新かどうか。新鮮かどうか、と言ったほうがいいかもしれないですね。今回のシングルもまさにそういう曲で。
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