Japanese
UVERworld
Skream! マガジン 2021年02月号掲載
2020.12.21 @横浜アリーナ
Writer オザキケイト Photo by 鳥居洋介
世界中の人々の生活を一変させてしまった新型コロナウイルスは未だ収束の兆しは見えず、依然高止まりを続ける感染者数を鑑みて、音楽をはじめとするエンターテイメントは再び不要不急のレッテルを貼られかけている。現に毎年恒例だった年末の大型フェスも開催中止を発表し、改めて当たり前なものはないのだと実感させられた。しかし、だからこそUVERworldが毎年恒例である年末のアリーナ・ツアーを開催したことには大きな意味があり、生でライヴを観ることができる喜びを噛みしめることができた。今年は"UVERworld ARENA LIVE 2020"と題され、5日間3会場で各会場2部制の計10公演となり、本稿ではTAKUYA∞(Vo)生誕祭でもあった12月21日の横浜アリーナ公演の1部の模様をレポートする。
まだ外が明るい昼下がりに会場に入ること、会場内BGMがはっきりと聴こえるくらいに場内が静かなこと、あげればキリがないほど見慣れないことは多く、開演に向けてカウントを続けるスクリーンの時計が時を刻んでいた。そのカウントダウンが残り1分を過ぎるとフロアからは急かすように手拍子が起こり、歓声がなくともその手拍子の具合だけでフロアのボルテージが上がっていくのを感じることができた。定刻、SEをバックに真太郎(Dr)が登場し、内臓を揺らすようなビートを叩きだすとそれに呼応するようにサックスを鳴らす誠果(Sax)とのセッションでライヴはスタート。ステージ後方に伸びた4本の階段からそれぞれTAKUYA∞、克哉(Gt)、彰(Gt)、信人(Ba)がステージインすると「Making it Drive」で一気に会場をグルーヴの渦に巻き込み、外はまだ昼の2時だということを忘れてしまうほどにドープな世界へ案内してくれた。"そのままでいいよ。今日もみんなが歌う場所をTAKUYA∞が全部歌ってあげる!"と制限により声を出せないCrew(※UVERworldのファンの総称)に声を掛けると「stay on」でのお決まりのシンガロング・パートをTAKUYA∞とメンバーが担う場面も見られた。続く「UNKNOWN ORCHESTRA」のイントロが響くと一斉にフロアが飛び跳ね身体を揺らし、ド派手なパイロとともに会場のギアをあげた「ROB THE FRONTIER」をはさみ、このセクションの最後を映画"ブレイブ -群青戦記-"の主題歌でもある新曲「HOURGLASS」で締めくくった。
この日の主役であるTAKUYA∞が"ド平日の昼間にこんな集まってくれたからにはただじゃおかないよ。ただでは帰さないからね!"と意気込むと早々にそのサプライズが正体を現す。"名古屋からヒップホップのカリスマが来たぞ!"の声とともにステージインしたAK-69と2016年にフィーチャリングした「Forever Young feat.UVERworld」を披露。さらに"誕生日は祝ってもらう側が祝ってくれる人を幸せにしようってのがUVERworldのモットーだからさ! これで終わりじゃないよ?"とTAKUYA∞がいたずらっ子のような表情を見せると、彼の親友でもある愛笑むfrom徳川eq.が登場し新曲「来頂江」を初披露。こうして誕生日に友人が駆けつけてくれるTAKUYA∞の人望と、Crewを喜ばせたいというTAKUYA∞の気持ちの両方を感じられた一幕であった。
このコロナ禍においてUVERworldは6月の無観客配信ライヴを皮切りにライヴ活動を再開させ、11月の真太郎生誕祭で制限付き有観客ライヴを再開させた。その11月以降セットリストに組み込まれることが多くなったのが「GO-ON」だ。
"音 リズム メロディー 声 君が無きゃ僕は息だってできないんだ"
この歌詞のように音、リズム、メロディ、声があればライヴをすることはできる。しかしそこにCrewがいないとやはり味気ない。この曲にはそんな想いが宿っているような気がするのだ。そしてその想いは最後の"君がいれば最強のMusic 豪音を轟かせられるんだ"という一節に繋がる。つまり、声を出せずともCrewが目の前にいさえすればUVERworldは最強の音楽を轟かせることができるのだ。
ちょうどこの日は冬至で、1年で一番昼の時間が短いこの日を"ちょっとロマンチック"と語るTAKUYA∞のロマンチストっぷりを堪能することができたのが新曲「Teenage Love」と「ConneQt」だろう。どちらもEDMの要素のある冬にぴったりのゆったりとしたラヴ・ソングで、この2曲を並べるのがニクい。そしてここからはライヴは終盤戦へと差し掛かり、楽器隊によるインスト・ナンバー「Spreadown」で再びフロアの熱をぐっと引き上げると、その熱に火をつけた「Touch off」で相変わらずの爆発力を見せつけた。
冒頭にも書いた通り、未だにこの未知のウイルスの収束の兆しは見えない。いつになればこれまで通りオール・スタンディングで声やソーシャル・ディスタンスを気にすることなくライヴを観ることができるのか。そんな思いを受け止めてくれたのはイントロが響くなりひときわ歓声があがった「Colors of the Heart」の"もう一度この手で 明日を描けるから"の一節だった。しかし、無観客配信、制限付き有観客と少しずつこれまで通りを取り戻してきたし、ライヴすら観ることができなかった時期を考えると制限があっても生の爆音を浴び、同じ空間や時間を共有することができる喜びをしっかりと感じ、世の中の現状を踏まえると、ある程度納得することができているのも事実だ。そんな我々に喝を入れるように"どんどん最高が更新されていってる! そろそろここでピーク持っていこうぜ!"と叫び始まったのは無観客ライヴでは演奏されなかった「IMPACT」だった。この曲こそCrewの存在と声が必要不可欠で、そんなこの曲で事前に"Screaming For IMPACT"と題しCrewに募っていたシンガロングの録音を使用したのだ。録音といえどもその迫力は凄まじく、久しぶりに会場が揺れる感覚を肌で感じ、本当に見たかった、感じたかったものはこれだったのだと忘れていた感覚を取り戻すような瞬間だった。
"本当にカッコいいヤツってのは制限された状況であろうと、起きたその事実の中で、自分でストーリーを作って楽しんで人生を盛り上げていけるヤツだと思うんだよ"。この言葉は「AFTER LIFE」の前にTAKUYA∞が語ったものだが、この姿勢を体現しているのがまさしくUVERworldだろう。これは様々な制限があるなかでも、彼らが最大限に"これまで通り"を求めた結果なのだ。もちろん、完全にこれまで通りにならないこともあるかもしれない。しかし、それでも彼らはできる限りのこれまで通りを求め、まだ見ぬこれからに想いを馳せるのだ。そんな彼らの想いはこの日の最後に用意された新曲「EN」に込められていた。早口にまくしたてるTAKUYA∞の語りには迸る熱い気持ちが宿り、そこには"願う以上に自分で変えろ"という核心を突くメッセージがあった。
それはこんな時代でも前だけを見据え進むという彼らなりの決意表明であり、Crewに対しての問い掛けでもある。"いつかこの曲を一緒に歌おうな! そんな日が必ず来るぞ!"というTAKUYA∞の言葉の通り、求め、歩いたその先にこの曲を会場全体でシンガロングする景色があるのだろう。そして、ニューノーマルと呼ばれるこれからの時代にもUVERworldというバンドは必ずや足跡をつけてくれることを確信したライヴでもあった。「EN」の締めくくりの歌詞のように、彼らはまた理想を追い求め、今日も行くのだ。
[Setlist]
1. Making it Drive
2. stay on
3. UNKNOWN ORCHESTRA
4. ROB THE FRONTIER
5. HOURGLASS
6. Forever Young
7. 来頂江
8. GO-ON
9. PLOT10. Teenage Love
11. ConneQt
12. Spreadown
13. Touch off
14. Colors of the Heart
15. IMPACT
16. AFTER LIFE
17. EN
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