Japanese
UVERworld
Skream! マガジン 2021年07月号掲載
2021.06.12 @横浜アリーナ
Writer オザキケイト Photo by 森好弘
エンターテイメントが世間からのけ者にされてから2度目の夏を迎えようとしている。1年前と比べると多少風向きは変わり、アーティストもエンターテイメントやアートの火を消さないために、細心の注意を払いながらライヴ活動を行っていくフェーズに入ったようだ。とはいえ、今まで通りのライヴ本数をこなすことは難しく、例にもれずUVERworldも今年に入ってのワンマン・ライヴは3月に行ったのみ。そんなUVERworldが6月12日、13日の2日間にかけて神奈川横浜アリーナで"UVERworld Premium Live 2021 at Yokohama Arena"と題してライヴを開催した。もちろん本公演もコロナ禍以降お決まりとなった1日2公演で、2日合計4公演。セットリストも大幅に変え80曲近い曲数を演奏した。本稿では6月12日の昼公演の模様をレポートする。
当初違和感があった開演前の静けさにもすっかり慣れた。刻々と開演時間に向けカウントダウンを続けるスクリーンの時計が残り1分を指すと、待ちきれないCrew(※UVERworldファンの総称)が立ち上がり手拍子を始め開演を煽る。すると、SEに乗せゆっくりと登場した真太郎がドラム・ソロを始め、それに呼応するように誠果もサックスで加勢。そして、TAKUYA∞(Vo)の"UVERworld、始めます"の声と特大のパイロとともに、「Touch off」でライヴはド派手に幕を開けた。また、最近の彼らのライヴではおなじみになった、アプリを通してCrewのシンガロングを募集する企画"Screaming For THE LIVE"で集まった声を早くも「RANGE」で披露し、"行けるところまでじゃなくて、行きたいところまで行こう"とメッセージを届けてくれた。
徐々に温まってきたフロアを一気にダンス・フロアへと変えた「ODD FUTURE」、自らの生き様をもってその歌詞を体現した「PRAYING RUN」を経て、"いろいろな規制やいろんな事情があるなか、どうしても(このライヴを)やりたかった理由はたったひとつ。俺たちが音楽のもとに何かを感じて、学んで成長して、またここからスタートする。それは不要不急ではないから"と語り「在るべき形」をプレイすると、久しぶりに緊張しているというTAKUYA∞に代わり真太郎がマイクをとり、今日は予想だにしないことが起きると何やらサプライズがあることをほのめかした。
"初日に一番いいものを作っておいて、それを超えようとする残り3公演にしたい"と、自らに高いハードルを課すストイックさは相変わらずに、「一滴の影響」を披露したところで、先ほど触れたサプライズの正体が早くもお目見えすることになる。昨年末のアリーナ・ツアーで披露された新曲「来鳥江」には、ゲスト・ヴォーカルがふたりいることは発表されており、そのうちのひとりは昨年のライヴにも登場した盟友、愛笑む(徳川eq./Vo)である。この日は隠されていたもうひとりのゲスト・ヴォーカルが登場するというのだ。"これはヤバいよ。誰が来ると思う? 想像して!"といたずらっ子のような表情を見せるTAKUYA∞が呼び込んだのは、なんと俳優の山田孝之。予想外のゲストの登場に誰もが思わず声が出そうになるのを必死にこらえ、晴れて完成形となった「来鳥江」を堪能した。
中盤に差し掛かると、ステージ中央のせり出し(通称:デベソ)に集合し、よりCrewの近くで楽曲を届けてくれた。攻撃的な言葉をグサグサと突き刺す「誰が言った」をアグレッシブに放てば、大切な人への愛を歌った「美影意志」を優しく歌い上げる。そして、TAKUYA∞は"こんなときだからこそ歌いたい曲があって、こんなときだからこそみんなに聴いてほしいセットリストで今日は挑んでいます"と述べ「白昼夢」を披露。"悲しい過去を忘れさす歌じゃなく/悲しみに立ち向かえる歌を"、"そんな闇の中でも 君と共にある歌を"と歌うこの曲こそ、この1年間で抱えきれないほどに膨れ上がってしまった、行き場のない悲しみや虚しさを糧にできるような、我々の心に寄り添う歌であった。それは「THE OVER」でも同様で、人が人を想う気持ちが人の心を動かすのだと、まさにこれがエンターテイメントの在るべき姿であると思い知らされた瞬間でもあった。
久しぶりに披露する曲の連発且つ、メッセージ性のある楽曲が並んだことから、"少しは俺が緊張してた理由をわかってくれたんじゃないかと思う"と苦笑いをするTAKUYA∞は、そのバトンを楽器隊へと渡し、インスト・ナンバー「Massive」を5人でプレイ。克哉と彰は抜群のギター・アンサンブルを響かせ、信人(Ba)は真太郎とともにグルーヴを生み出す。そして、誠果はとどめと言わんばかりに高らかにサックスを鳴らすと、オーディエンスは力いっぱいのハンズ・クラップでそれに応えた。
再びステージに舞い戻ったTAKUYA∞が、"今までで一番かっこいいUVERworld見せますよ!"と吼えると「Q.E.D.」で終盤戦のラスト・スパートが始まる。さらに「IMPACT」で会場の熱を最高潮に持っていくと、Crewから募ったシンガロングが鼓膜を突き刺し、会場が揺れ、それを見たTAKUYA∞は"最高だよ。これだよな、やっぱり!"とサムアップしてみせた。この日、TAKUYA∞が再三口にしていた"俺たちはまだ失っていないものもたくさんある"という言葉は、まさに彼らの生き方そのものである。失ったものを嘆くより、限られたルールの中での最大限を見つける。その生き方を表すように「7日目の決意」では"匍匐前進でも前に進んでやるよ、UVERworldは。まだまだ自分も終わりたくないってやつだけでいいよ。手叩いて見せてくれ!"とCrewに声を掛けると、横浜アリーナ全体が手を必死に打ち鳴らす音に包まれた。この音は紛れもなく"まだ終わりたくない"、"俺たちはまだ終わっていない"という声だった。
このただでは倒れない生命力こそが、我々の背中を押し続けるUVERworldの、UVERworldたる所以であるところを見せつけたところで、彼らは"この先信じられないような悲しみや苦しみがあっても、そんなものたった5分そこらの曲に変えて、全部プラスに変えていってやるよ"と昨年末にも演奏された新曲「EN」をプレイ。この日のラスト・ナンバーとした。熱い気持ちを早口で捲し立てるTAKUYA∞は、"いつか必ずみんなで歌えるって信じてんだよ!"と叫び、まだ見ぬ未来に想いを馳せ、去り際には"またお互いに成長して、さらに素敵な場所で、素敵なお互いになってお会いしましょう"とCrewにメッセージを送り、ステージをあとにした。もしかしたら、彼が信じているような未来はすぐには訪れないかもしれない。しかし、あの瞬間に響きわたった手を打ち鳴らした音の耳鳴りと、光を宿した彼らのその瞳が、"俺たちはまだ終わっていない"とその未来だけをまっすぐに見据えていた。
[Setlist]
1. Touch off
2. RANGE
3. ODD FUTURE
4. PRAYING RUN
5. 在るべき形
6. 一滴の影響
7. 来鳥江
8. 誰が言った
9. 美影意志10. 白昼夢
11. THE OVER
12. 終焉
13. Massive
14. Q.E.D.
15. IMPACT
16. AFTER LIFE
17. 7日目の決意
18. EN
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