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INTERVIEW

Japanese

ドラマストア

2017年05月号掲載

ドラマストア

Member:長谷川 海(Vo/Gt) 松岡 大暉(Ba) 松本 和也(Dr/Cho)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-そもそも今回の作品にはもともとテーマはあったんですか?

長谷川:いや、なかったですね。ただ最終的に、主人公が登場して、物語の主軸があって――っていう曲がちゃんと揃ったんですよ。結局ドラマストアがドラマストアたる所以というか、"俺は俺の思ったとおりに曲を書くけど、キャスティングは聴いているあなたが自由に決めてね"っていう感じのアルバムに仕上がって。"俺たちがしたいこと、図らずしてちゃんとできてるやん"ってめっちゃ安心した記憶はあります。

-先ほどおっしゃっていた"大きな変化はない"っていうのは、つまりそういう軸がブレてないということで。

長谷川:そうですね。今改めて"君を主人公にする音楽"っていうふうに銘打たせてもらってるんですけど、自分が音楽に救われた経験や自分の変化の機になった曲を思い返すと、やっぱりその曲の中で生きている自分がいるんですよ。"ええ曲やな~"っていう漠然とした感じじゃなくて、"この曲に救われたとき、自分はこんな感じやったな"、"今この世界に入り直したら、きっと俺はこんな顔するやろうな"ってすごく想像できるようなものに、自分の作る音楽もしていけたらええなっていうふうに強く思ったんですよね。

-でも、それって難しくないですか? 音楽をやってる時点で何かを表現したいというある種の欲望やエゴがあるわけじゃないですか。それなのに主人公はあくまで自分ではなく"君"で。

長谷川:そうですね。"自分はこの曲の中でこういうふうに生きる予定です"っていう感じで僕は曲を書いてるんですけど、聴く人によっては全然違うふうに捉えられることもあるじゃないですか。その差が僕の中ですごく楽しいんですよ。「至上の空論」もMVがドロドロなんですけど、もちろん僕はあんなつもりで書いてないですし、でも監督は全然違う捉え方をしていたから、"それめっちゃおもろいな!"ってGOサインを出した経緯があって。僕はライヴ中に"今から一緒に音楽を作るんだよ"っていう話をよくお客さんにするんですよ。聴いてくれている人の顔ひとつ、手拍子ひとつ、一緒に歌ってくれたその声ひとつ、それらはすべてあなたたちが持っている楽器なんだから、あなたたちはあなたたちでライヴをしてるじゃないか、と。表現を発信する側で居続けたい傍ら、表現を受信する人間でもありたいんですよ。そこまでいくと"音楽=聴くもの"っていう壁も超えられるんじゃないかなと思ってますし、この矛盾は孕んだまま、武道館まで行きたいですね。

-なるほど。それを踏まえて歌詞についてうかがいたいんですけど、曲ごとに別々の主人公がいるとはいえ、ひとつ共通点がありますよね。それは何かしらの後悔を抱えつつ、"このままじゃいけない"と気づいてるという点で。

長谷川:あ~、それはすごく言われますね。結構ドラマストアって、というか僕がそうなんだと思うのですけど、ネガティヴなことから始まる曲が多いんですよ。それは......僕、今はすごく幸せなんですけど、そうじゃなかった過去に起因してるんやろなぁっていうのがあって。昔の話で申し訳ないんですけど、大学生になるころまでは、ちょっと勉強したら人並み以上の点数が取れるし、うまい人を見たらスポーツの術もある程度は盗める、みたいな何でもできる人間だったんですよ。でも逆に言うと、一番にはなりきれなかったところもあったんですよね。そんな僕が、唯一"お前スゲーな"って認められたのが音楽、作曲、歌っていう部分やったんですよ。なので、ようやく自分で見つけたこの戦場、自分で見つけたこの武器を手放したくないっていう気持ちが強くて、"あのときしんどいって思ったことは今日のためにあったんやろうな"って思うようになったんですよ。

-かなりポジティヴに聞こえるんですけど、そういう考え方は音楽をやり始めたころからあったものなんですか?

長谷川:いや、薄かったと思います。だけど前にやっていたバンドを含め、今までやってきた2、3年間の中で、憧れの先輩すら仲間になってライバルになって、ひいては全国デビューできて、マネージャーがついて、大きいライヴにも出れて......みたいなところで、少しずつ僕の中で自信として固まっていったんでしょうね。それが今になって曲、歌詞という明確なものとして発信できてるんやと思います。

-ということは、音楽に対しては自信があるはずなんですよね。でも、先ほどのお話によると、長谷川さんの不安を松本さんや松岡さんが拭ってくれるっていうバンド内の関係性があって――

長谷川:そうなんですよ~! 外に対しては"いやいや、俺がやらなきゃ誰がやんねん!"みたいな顔しがちなんですけど、身内に対しては不安を見せちゃうんですよ。だからこそ自分の不安を一番に察知してくれているチームと一緒にやれている今が一番楽しくて、不安に思ってることも含めて思いっきり発信しても大丈夫っていう状態なんです。

-なるほど。いや、先ほど初めてライヴを拝見したんですけど、曲のグレーな感じに反してステージ上のみなさんはカラッとした明るいテンションだったので、ギャップに驚いたんですよ。

一同:ははははは(笑)!

長谷川:まぁ、グレーがスタートだからこそ「至上の空論」みたいにブラックに落とすこともできるし、「スイミー」(Track.2)みたいにまっさらな白にして終わらせることもできるし。ヒューマン・ドラマもできるし、SFもできるし、ラヴコメもできる。そういう状態にしたいんですよね。