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INTERVIEW

Japanese

Shout it Out

2016年07月号掲載

Shout it Out

Member:山内 彰馬(Vo/Gt) 細川 千弘(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-私は"青春=つらいことがあっても無我夢中でのめり込めるものがあること"だと思っているんです。「青春のすべて」(Track.1)は音がすごく生き生きしているので、どんどん音楽にのめり込んでいるShout it Outだからこそ出せるものだなと思ったのですが。

山内:僕もそれが青春だと思うんですけど、その真逆も青春だと思っているんですよ。よくInstagramのコメントやTwitterのリプライで、同世代の子から"そうやって打ち込めることがあってすごくうらやましいです。僕にはそういうものがまったくなくて、将来何になろうかずっと迷ってます"と言われるんです。僕はそれもすごく青春だなと思って。

-あぁ、たしかに言われてみるとそうですね。"やりたいことがない"と言う二十歳前後の子たちは多い。それが今の若い世代にとって青春のひとつだと。

山内:僕はずっと"将来は音楽を仕事にしたい"と思っていたんですけど、中学生まではバンドをしていなかったから夢でしかなかった。高校生になってようやくバンドをやるようになったし、高校生はしっかりと進路のことも考えさせられるやないですか。それで現実と向き合って、"本当にこの選択でいいのだろうか?"とすごく不安を抱えて。「青春のすべて」ではそういう憂鬱を表現したかったんですよ。今までは若さゆえの青さを表現したくて、ジャケットの色味も"青"やったんですけど、今回は"曇り空"なんです。最初から結構ちゃんと具体的な画のイメージが浮かんでいて、弾き語りでスタジオにこの曲を持っていったときにも"曇り空のイメージでアレンジを作ってほしい"とお願いして。だからジャケットやミュージック・ビデオでもそれを表現したいと思っていたら、撮影で見事に天候が味方をしてくれました。

細川:青春時代が"曇り"という人は案外多いと思うんです。僕もそうなんですけど、内に秘めている葛藤が10代にはあるな......と思って。それをちゃんと歌詞に書いて、"青春のすべて"というタイトルで爽やかな青春を持ってこないところが彰馬らしいなと思いました。

山内:"青くてきらきらした青春"というのは、それを経験したことのある人たちが"あのころは良かった"と似たように言うことが多いんですよ。そういうきらきらしたものは振り返ったときの方がきれいに歌えるかなと思って。だから、リアルタイムで感じた"今しか歌えないこと"を曲にしたかった。それで"曇り空"を歌いました。

-とは言え「青春のすべて」は少しだけ振り返ってるとも思うんですよ。けどその青春にまだ片足が残っているような......そういうニュアンスが二十歳目前というリアルさというか。

山内:これは今だから言えることでもあるんですけど。振り返るほど大人にもなれていないのに振り返っているというのは、二十歳という明確な大人のラインを目の前にした、本当に10代最後の背伸びなのかなと。軸足は青春時代に残しながらなんですけど(笑)、つま先を大人に突っ込んだ状態だからできたことなのかなって。だから半年早かったら作れてない歌やし、あと半年遅くても大人になってしまいすぎていたんじゃないかと。本当にこのタイミングで作れて良かったなと思います。

-青春には"涙"も欠かせない成分のひとつだと思うんですけど、Shout it Outの曲の中で"涙"の要素を最も強く感じた曲でした。『Teenage』はとにかく"みんなの背中を押そう"という気持ちが前に出ていたから、その成分はほとんど感じられなかったんですよね。それが全国でいろんな人の前で演奏して、たくさんの人と関わっていくことによって漠然としていたヴィジョンが具体的なものになってきて――だからこそ今回は伝えたいことがはっきりしている。加えて『僕たちが歌う明日のこと』で山内さんが自分自身のことを歌うようになって、さらに素直に自分を曲に出せるようになった。だから『青春のすべて』は名に違わず、ちゃんと山内さんの青春のすべて、"涙"の成分までトレースすることができたのかなと思いました。そのぶん、今までにはなかった説得力が今回ある。

山内:あ~......なるほど! 全然気づかなかった(笑)。

-歌も変わりましたね。今までは"背中を押したいと言っている僕が堂々としなければ説得力がない"という意識ゆえの強さがあったけれど、今は自分を解放しているニュアンスもあるし、生身の自分自身で体当たりするような、飾らない強さが生まれてきていると思います。

細川:あぁ、"山内彰馬"というヴォーカリストとしてのひとつの表現が確立されてきたな、とは最近ちょっと思っていて。

山内:曲作りはすごく自分と向き合う作業なんですけど、それを年中やっているということは年中自分と向き合うということなので、自分の変化は周りに言われないとわからないんですよね。だからドキッとしました(笑)。