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LIVE REPORT

Japanese

Shout it Out

Skream! マガジン 2017年02月号掲載

2016.12.26 @新宿LOFT

Writer 沖 さやこ

Shout it Outと初めて顔を合わせたのは2015年11月。そこから1年間、彼らは経験を積めば積むほど急成長をしていて、"前回/前作よりも良くなっている"と驚かされてばかりだった。だがこの新宿LOFTでのワンマンは"ここがこうなればもっと良くなるのに"と思うシーンが何度もあった。それは断じて悪い意味ではなく、私にとって彼らに対する期待値が以前以上であり、ライヴ・タイトルにもなっている彼らの"これから"を感じさせるには十分すぎる好演だったということだ。新宿LOFTはShout it Outが"未確認フェスティバル2015"でグランプリを獲得する前から出演しているライヴハウス。大阪のバンドが東京でワンマンをすること、ロックの歴史を背負う新宿LOFTをソールド・アウトさせることの感慨は想像に難くない。彼らは過去最大のエネルギーを発していた。

ドラムの細川千弘がサポート・メンバーと共にステージに現れ、しばらくするとギター・ヴォーカル 山内彰馬がセンターへ。いつもどおりステージ上で気合入れをすると、弦楽器隊3人が細川へ身体と視線を向けて音を出す。客席から見るその3人の背中と、鋭い細川の視線からもすでに相当の気合が感じられた。1曲目はニューEP『これからと夢』のリード曲「DAYS」。1音1音で威力を放つ細川のドラミングに加え、曲の序盤からサポート・ベーシストのかーすけが暴れ馬のように食い入るプレイを見せてくる。バンドが特攻してくるようだ。続いての「あなたと、」は山内のギターも熱い音色を放つ。"楽器に気持ちを込める"という感覚が身体に染みついてきたのだろうか。Shout it Outの東日本のライヴでサポート・ギタリストを務める誓太は爽やかさや涼しさのある晴れやかな音色で、ウワモノとしてバンドに華を添えていた。
「生きている」、「影と光」は以前よりもグルーヴが強靭に。精力的なライヴ活動で、メンバーたちはもちろん楽曲も育っていることを実感する。特にこちらの心や記憶へ言葉やこの瞬間の空気を刻み込むように歌う山内の頼もしさは、フロントマンとしての芯の太さを感じさせた。彼の背後にはこれだけ感情的なドラムを叩くドラマーがいるのだから、感受性が豊かな人間がその想いの塊とも言うべきビートを背中から受け続ければ、それはたくましくなるだろう。山内と細川は同じバンドのメンバーとして協力しながらも、ライヴ中にもライバルとしての関係性を反映させているようにも見える。その真剣勝負とも言うべき空気感が、Shout it Outのパワーを増幅させているのではないだろうか。

ギターを弾きながら山内は、興奮気味なのか早口で新宿LOFTでの思い出を語る。"ちゃんと目に焼きつけて帰ってください。まだ始まったばかりだ、どんどん行こう"と言う声は笑っていた。「風を待っている」、「雨哀」とその言葉どおりのステージを繰り広げ、「列車」では山内の顔にしっかりと笑みが浮かんでいた。粗削り感は過去最高では? と思うほど失敗を恐れず果敢に突っ走る4人。小器用にまとまらない姿は見ていて気持ちがいい。3連符のリズムが幻想的なミディアム・ナンバー「トワイライト」は4人の集中力がこの日一番のエモーショナルなグルーヴをもたらし、涙腺をくすぐった。

山内がひと言"新曲を"と告げ披露されたタイトル未定の新曲は、かつての春の恋の未練、後悔を歌ったもの。表打ちのリズムのポップな楽曲に、強がりとセンチメンタル、純粋な気持ちが込められたキュートな曲だった。山内の恋愛観はしばしばSNSなどでユーモア混じりに綴られているが、それが最も反映されている楽曲と言っていいかもしれない。脱退したメンバーに向けた「これからのこと」は、山内と細川がこの曲で描いている"これから"が"現在"であることを感じさせる演奏。悲しみに暮れた様子はない。メンバー脱退からの3ヶ月で彼らが大きく前進していることを痛感した。
山内の"こういう特別な日を楽しいと感じられるのは、あなたがつらい日々を戦い抜いて、その足で今日ここに辿り着いたからこそだと思っている。また会える日を願って残りの曲を歌います"という言葉のあと「若者たち」、「逆光」、「17歳」と畳み掛けると、"言い残したことは何もない、でもまだまだ行けるんじゃないかと思っています。そのままどこまでも行こう"と言い本編ラストは「青春のすべて」。10代の青春を綴った曲であるが、私はShout it Outというバンドが"青春のすべて"だと感じてやまない。彼らはそれだけ太陽のように燃え盛っていて、青空のようにどこまでも高く突き抜けていて、水しぶきのような汗と熱が輝いている。常に自分たちの限界を超え、それを更新しようとするその姿は、"これから"に未知なる可能性を秘めているのだ。

アンコールではまず山内が口を開く。"2016年、良いことも悪いこともたくさんありました。良いことは噛みしめて、悪いことは乗り越えて、全部全部自分のものにして今日ここまで来ました......が。それは自分たちの力だけではなくて、あなたたちがいたからです"と話した彼は、何度バンドをやめようと思ったかわからないと告げる。だがそう思うたびに誰かの顔が浮かび、Shout it Outが自分たちだけのバンドではないと痛感したと語った。"あなたたちの力を借りてこれからどんな道を歩んでいくのか――そんな意思表示をしたかった"。そう言うと、3月8日にリリースする1stフル・アルバム『青年の主張』から表題曲を披露した。ヒップホップ調の韻の踏み方など、山内のアンテナに引っ掛かった様々な刺激もソングライティングに影響しているようだ。ラストは「光の唄」。ライヴの定番曲でもあり、インディーズ時代から彼らを支えてきた楽曲でもある。抱えている感情をすべて吐き出すような、ロック・バンドならではのハッピーエンドだった。
ライヴを終えたあとは、前日12月25日に二十歳を迎えた細川へハッピー・バースデーの大合唱と超巨大骨付き肉(ロウソク付)のプレゼント。細川は"最高の景色と最高のお肉をありがとう! いろいろありましたが、ここまで来れたのは紛れもなくみなさんのおかげです"と感謝を告げ、会場はあたたかい拍手に包まれた。

最後に、夏のワンマン時に比べ、山内のMCが格段に減ったことが印象的だった。それだけ演奏で想いを伝えられているということではないだろうか。2016年で音楽と自身の心の距離を格段に近づけたShout it Out。2017年は第1章の集大成と、第2章の始まりの年になるかもしれない。

[Setlist]
1. DAYS
2. あなたと、
3. 生きている
4. 影と光
5. 風を待っている
6. 雨哀
7. 列車
8. 君はまた夢を見る
9. ハナウタ
10. 星降る夜に
11. 花になる
12. トワイライト
13. 新曲(タイトル未定)
14. これからのこと
15. 若者たち
16. 逆光
17. 17歳
18. 青春のすべて
en1. 青年の主張
en2. 光の唄

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