Japanese
Shout it Out / the equal lights / the irony
Skream! マガジン 2016年07月号掲載
2016.06.12 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 沖 さやこ
4日目は、新進気鋭の若手バンドが3組集結した。
一番手は2ndミニ・アルバム『10億ミリのディスタンス』を完成させたばかりのthe ironyが登場。"ついてこいよ!"という威勢のいい船津陽史(Vo/Gt)の言葉とともに、「アンバランス」からライヴはスタートした。雄々しい演奏、よく通るヴォーカル、歌謡曲風のメロディでもって、メンバー全員が笑顔で積極的にフロアへと歩み寄ってくる。ポップ・センスのあるメロディをバンドが一丸となって押し出す、爽やかな熱量を持つギター・ロックだ。ミディアム・ナンバー「幻影少女」では切なさを醸しながらもパワフルに歌い上げ、船津がアコギを抱えた「Hallelujah」は地元九州の風景をリアルに綴るフォーク的アプローチも。ロックンロールに緩いダンス・ビートを合わせた「クピドの誘惑」は男らしさを全開にさせるなど、どの曲でもきれいに楽曲の世界観を切り取っていく。「sprout」ではハンドマイクになった船津がフロアに飛び降りて後方まで走り抜けた。シンガロングにコール&レスポンス、クラップ、ジャンプなどなど、ライヴを盛り上げる手段を網羅しているところに、ライヴ・シーンが発達した2010年代的センスを感じた。リリース・ツアーでの羽化も期待したい。
二番手は2015年末にTOWER RECORDS限定でシングルをリリースし、今年8月にミニ・アルバム『LaLaLa-prima』でUK.PROJECTよりデビューを果たす、大阪出身のthe equal lights。1曲目「ファンファーレ」のイントロで一気に壮大な世界に染め上げた。それぞれの楽器はもちろん、同期音、巧みなコーラス・ワークと、音色の細部にまで愛情を注いでいることを感じさせる。自分たちの音楽を強く信じているからこそ、彼らの演奏は星屑が零れ落ちるような、煌きの絶えない音をしているのだろう。その場が彼らの音の泉に満たされていくのが目に見えるようだった。「ゼロタイムリンク」は小鳥の鳴き声のような軽やかさを持つ複雑なリズム・ワークとエモーショナルなギター・カッティングで魅せ、「DREAM=A」はシンガロングでさらに一体感を強めた。現実というには透明度が高いし、夢というには景色が鮮明。「Ethica」の音の深さ、柔らかさは、まるで水の中のようだった。"最後は思いっきり遊びたいな!"とミシマテツオ(Vo/Gt)が言い、締めは「Alche(mist)」。日の出のように雄大な音とシンガロング。一面が光で満ちていった。
トリを飾るのはメジャー・デビューを間近に控えたShout it Out。"未確認フェスティバル"グランプリ受賞以降とんでもないスピードで成長し続けている彼らは、さらにたくましくなっていた。太く頑丈になった音は、しっかり土を蹴って全力疾走していく少年の姿を想起させる。ひとつひとつの音に気持ちをぶち込んでいるがゆえに、音の温度がとにかく高い。よく晴れた真夏の日光のようだ。手抜きや小細工一切なしで突き進む姿は見ていて気持ちがいい。MCでは"下北沢にはギターを背負っている人が多いので、下北沢にいるときだけは(自分たちが)メイン・カルチャーになった気がします"と山内彰馬(Vo/Gt)が笑う。この言葉は、裏を返せばバンド・シーンがメイン・カルチャーではないということ。彼らはそういう悔しさを全部ソリッドでポジティヴなエネルギーに変換できるのだ。ミディアム・テンポの「ハナウタ」は露口仁也(Gt)の繊細でセンチメンタルなギターが光った。
"みなさん青春してますか?"と語りかけた山内は、7月にメジャー・デビューをすること、19年間生きてきた青春をそのCDにすべて詰め込んだこと、その作品が胸を張れるものになったことを真摯に語る。そのあとに演奏された「青春のすべて」は、彼らの情熱が嘘偽りなく鳴り響き、微かな涙の成分を感じさせた山内のヴォーカルも胸を抉るものがあった。彼の真っ黒な瞳の放つ眼光は、二十歳を目前にしてさらに鋭い。山内が"最後の曲に全部全部置いていくからアンコールはいりません。今日は本当にありがとう"と言い、ラストに演奏したのは「17歳」。声を枯らして歌う、飾らない美しさがひたすら眩しかった。
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