Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

the irony

2017年09月号掲載

the irony

Member:船津 陽史(Vo/Gt) 脇屋 周平(Gt) 川崎 嘉久(Ba) 工藤 伊織(Dr)

Interviewer:秦 理絵

どんなときもthe ironyは"誰か"を想いながら歌にする。故郷である九州で別れた誰かを、気持ちが折れそうなときに支えてくれた誰かを、共に生きていきたい誰かを。今回リリースされるミニ・アルバム『フリージアの花束を』でも、そんなthe ironyの軸はまったく変わっていない。むしろ大きな挑戦となった渋谷WWWでの初ワンマンを成功させたことで、彼らは自分たちの音楽に確信と自信を持てるようになっていた。だからこそ今作はバンド史上最もバラエティ豊かな楽曲たちを、とてもリラックスした状態で完成させることができたという。激しいだけがロック・バンドではない。燃えるような感情を渾身のバラードにのせて歌う。それがthe ironyのロック・バンドとしての闘い方なのだ。

-去年の11月23日に渋谷WWWで開催したワンマン・ライヴは大きなチャレンジだったと思いますけど、見事にソールド・アウトしましたね。

工藤:僕らにとっては高いハードルだったんですよね。去年インタビューをしていただいたときにも"正直怖い"っていうのは話したんですけど。それでも半年間かけて結果を出せたのは自信になりました。得るものもあったし、やって良かったと思ってます。

-得るものというのは?

工藤:あのワンマンを終えてから、普段の30分ぐらいのライヴでも内容が変わってきたんですよ。短い持ち時間でもバラードを2曲やるようになったんですよね。自分らのおいしい部分というか、本当の部分はどこなのかな? っていうのは見えた気がしますね。

川崎:まぁ緊張しましたけどね(笑)。あそこまで作り込んだライヴは初めてだったので。良いものができたと思うんですけど、大きな舞台でライヴをやる経験値はまだまだだなっていうのも思い知らされました。まだ狭い箱にホッとしてしまうところはあるので。

-船津さんはどうですか?

船津:僕は楽しかったとか達成感もあるんですけど、渋谷WWWって客席がひな壇みたいになってるじゃないですか。だからお客さん全員の顔が見えるのが嬉しかったです。僕らは全員九州から出てきて、知り合いもお客さんもいない、まったくゼロの状態から始めてるんです。そういうなかで苦しいながらも夢を持って音楽活動を続けてる。それを支えてくれる人がこんなにもいっぱいいてくれるなら、怖くないなと思ってやり切ることができましたね。

川崎:うん、全部が見えたよね。

脇屋:あの日は選曲とかセットリストもワンマンらしいことをしたくて、いろいろと凝ったことをやったんですよ。ドラム・ソロとかギター・ソロをやったり。だから楽しかった反面、燃え尽きちゃって。それで今回のアルバムの立ち上がりは遅かったんです(笑)。

-なるほど(笑)。じゃあ、今回のミニ・アルバムは、まず昨年末に渋谷WWWを終えたあと、2017年の年明けぐらいからじっくり作り始めた感じ?

船津:そうですね。結構ミーティングも重ねたんです。僕たちはどういうバンドになっていくのか、どういうコンセプトで作っていくのか。もちろん軸としてブレないものはあるんですけど。それを確認したうえで、1作目の『明るい未来の証明』(2015年リリース)とか、2作目の『10億ミリのディスタンス』(2016年リリース)にはなかったような作品にしたかったんです。

工藤:同じようなものを作っても意味がないよねっていうのは話しましたね。いままでの僕らの曲の種類で言うと、どうしてもバラードとアップテンポな曲、あとは「蒲公英」(『10億ミリのディスタンス』収録曲)みたいなミドル・テンポっていうような縛りがあったんです。でも、そうじゃない曲も入れていった方がいいんじゃないかっていうことは話したんですよ。

-そういうなかで楽器としてもストリングスやピアノを取り入れたりして、よりバラエティ豊かな作品になっていったんですね。

脇屋:『10億ミリのディスタンス』のときは全曲A面を狙って作ってたんですけど、今回は曲ごとに色を決めて作ることで幅を広げていったんです。「ラストダンス」と「Hallelujah」っていうバラードが2曲、あとはカントリー系の「balloon」があって、ギター・ロックも必要だから「アンダードッグ」を入れてっていう感じで、ある程度カラーを決めてから作ったんです。

川崎:だから、今回のアルバムはいままでで一番まとまってる感じがしますね。

船津:バランス感がいいよね。

工藤:"アルバム"になってる感じがします。

-そこが前作との大きな違いですよね。『10億ミリのディスタンス』のときは、自分たちは何が得意なバンドなのか、自分たちらしさは何なのかを見つめ直しながらの制作だったけども。

工藤:あのときは「幻影少女」っていう曲が軸にあって、自分たちはどんな歌を届けていくべきなんだろう? っていうのを考えながら作ってたっていうのはありますよね。

-でもいまはその答えは出てるから、バンドとして何をするかっていう大前提ではなく、作品として何を残すかっていうところに焦点を絞れたっていうことですよね。

船津:そうですね。ちゃんと軸を残したまま曲ごとにアプローチを変えていけたんです。だから今回はミニ・アルバムっていう6曲の中に、バラードが2曲もあるっていうのがthe ironyらしい闘い方じゃないかなと思うんですよ。

-さすがに前作までだと、そこまで振り切ることはできなかった?

工藤:みんながやってるような曲のバランスの方がいいのかなって考えちゃってました。例えばライヴで5曲演奏できるとして、バラードを2曲もやっちゃったら、シーンってならないかな? とか。でも、最近は逆に"そっちの方がいいよ"って言ってくれる人もいるので。それが僕ららしさなんだなって思えるようになったんです。

川崎:もともと全国流通盤を出す前のアルバムでは、そういう感じでやってたんですよ。だから、いまはひと回りした感じですね。原点回帰してるというか。今回はアッパーなロックな曲は1曲しか入ってないし、いい意味で開き直ってるんです。

船津:変な気負いもないし、リラックスしてできてる部分はあると思いますね。