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INTERVIEW

Japanese

WHITE ASH

2016年03月号掲載

WHITE ASH

Member:のび太(Vo/Gt) 剛(Dr) 彩(Ba) 山さん(Gt)

Interviewer:石角 友香

-タイトル・チューン「Spade Three」(Track.3)は2分ない短さで、"必要最低限"な印象ですね。

のび太:音数にしろ構成にしろ、昔よりどんどんシンプルな曲の作り方がわかってきて。「Spade Three」に関しては、セオリー通りにやるならもう1回ここで大サビがくるんだろうけど、この曲の良さはすでに存分に伝わってるはずから、大サビをやると蛇足だなと思って。じゃあもうここで終わっちゃえっていう感じで。個人的には前作よりも全体のヴォリュームがあるだろうなと思ったのに、前作よりもトータルの時間が少なくて、"マジか?"と思っちゃったんです。ある意味、ロックとかロックンロールには3分っていう基準がひとつあって。僕がバンドを始めるきっかけになったARCTIC MONKEYSの「I Bet You Look Good On The Dancefloor」(2006年リリースの1stアルバム『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』収録)って曲はたしか2分53秒で3分ないんですよ。でもその1曲で人生ガラっと変わってるから、何かを変えたいときに3分なくてもいいっていうのは、自分の経験で証明されてるんですよ(笑)。

-たしかに(笑)。今作の中には「Dumbass」(Track.7)みたいにデジタル・ロック的な曲もあるじゃないですか。でもそれはロック視点からのデジタルなんでしょうね。

のび太:そうですね。「Dumbass」は原型を剛が作ってきて、それをもとに僕が曲に仕上げていったんです。イメージとしてはTHE PRODIGY的なマッチョな感じにしたくて。今回のアルバム自体はバンド・サウンドの曲が基本的にメインなんで、「Dumbass」はアルバムにおいて、ひとつのアクセントというか、ちょっとした僕らなりの遊び心でもありますね。なので、逆にそういう飛び道具的なものを入れるのであれば振り切った方が面白いなと思って。

-剛さんはこの曲をどう考えて作っていったんですか?

剛:前作で、ライヴにおいてもシーケンスを多用し始めたこともあって、それが武器になるんじゃないかなと思ったんですよ。その流れで、まだ今作のテーマがロック・アルバムだって定まってなかったときに、曲やフレーズをいろいろ作っていて。その中でちょうどイントロのリズムが思い浮かんできて、そこから勢いで作ったら今の形になったんです。でも最終的に、WHITE ASHってやっぱりかき鳴らすギターがあるから"ロック"の範疇に収まっていると思うんですよね。サウンドはデジタルなんだけど軸になるのはギター・ロックだっていうバランス感というか、そこは意識してやれたと思います。

-こうしてアルバムを重ねるごとに"かっこいい"の第1章、第2章って段階を踏んでるんじゃないですか? WHITE ASHってバンドは。

剛:ちょっとずついろんな要素を足していってるって感じもありますね。インディーズのころから、"ロック"と"不穏さ"みたいなイメージはあったし、今聴いても根底にあるものだと思うし。作品を出すごとに多少方向性は変わっていってはいるんですけど、やっぱり歩いて来た道にちょっとずつ要素を足していってると思います。

山さん:だから前作の『THE DARK BLACK GROOVE』も軸にはロックがあったし、そういう意味では、軸はロックでいろんなことをやりつつというところはブレてない。だから今回のアルバムでガレージ・ロックをやったとしても、ちょっと違った味になるっていう感じで、バンドとしてやってることは変わらないのかなと。その"足されていく"っていう感覚はそういうことかと思います。

-今回、ほんとに剛さんのドラムが印象的なんですが、「Gamble」(Track.10)は違うジャンルからの援用や影響があるんじゃないですか?

剛:ロックっていうものが1番の源流ではあるんでしょうけど、そこから自分の中でいろんなジャンルに移動してって吸収して――それがソウルだったりファンクだったりフュージョンだったり、自分の中でクロスオーバーしてる部分はあるんですけど、プレイとしてそこまで意識してるってことはないですね。単純に自分の中から出てきてるものなんじゃないかと。

-なるほど。そして「Snow Falls In Lavender Fields」(Track.6)、これは山さんのギター・サウンドが聴こえた瞬間に景色が見えるというか。

山さん:もともとギターとヴォーカルだけでもらった曲だったので、方向性は変えずリズム隊は入れてないです。ギターでどういうアプローチをしようかと考えて、メロが立つ曲だったのでハープみたいな音で"奏でる"というところに行き着いて。

のび太:バッキングはエレキのクリーンで弾いてるんですけど、後ろの方でものすごく歪ませたギターを小さく鳴らしていて、それがすごく靄がかった景色やそういう空気感を出しているんです。それがたぶん、この曲のなんとも言えない感じに繋がっていると思いますね。最初、彩さんのベースも入れてたんですけど、指で弦を弾くことで人間的な、血が通っている感じが曲にニュアンスとして入って雰囲気がちょっと変わってしまうということで、低音部分にはチェロを入れて。だから"美しさ"みたいなものはあるんですけど、生きてる心地はしないっていう不思議な空気感の曲になったなと思います。

山さん:今までだったら、のび太の弾き語りだけで成立してるっていうところで完結していたかもしれないんですけど、これまでの作品を経て、身につけたアプローチもいろいろあったから、こういうアレンジを形にすることができたのかなと。だから景色を見せられるような曲になったんだと思います。