Japanese
WHITE ASH
Skream! マガジン 2015年07月号掲載
2015.06.13 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 石角 友香
ライヴハウスでお客さんが体育座りでヴォーカリスト"じゃない"人の弾き語りを聴く場面が登場するなんて、さすがWHITE ASHである。と、いうのもこの日は下北沢LIVEHOLICのグランド・オープンを祝うとともに、5月末に誕生日を迎えたギターの山さんのバースデー・パーティ(他のメンバー曰くあくまでおまけ)でもあったからだ。
早々にソールド・アウトしていたこの日の公演。ニュー・アルバム『THE DARK BLACK GROOVE』を携えたツアーは当然、アルバムの新曲中心で、文字通りクールなWHITE ASHを見せ、次のフェイズを確信させてくれたのだが、さてこの日はどうか。オープン5日目にして早くも一部でプロレス入場を知っているファンもいたようだが、平身低頭で登場するメンバーのステージ上とは違う普通の人っぷりに驚く。一体どのタイミングでスイッチ・オンするのか? しかし1音出せばもうそこはWHITE ASHの世界だ。大きなグルーヴを持つ「Hopes Bright」でスタートし、序盤から久々に「Number Ninety Nine」を盛り込んできたり、早くもダンス・フロア化していく。最初のMCでのび太がセットリストをどうするか悩んだところ、"LIVEHOLIC GRAND OPENING SERIES"そのものがかなり攻めたラインナップであることに刺激されたのか"僕らも最近やってない攻めのセットリストで行きます!"と宣誓すると、すかさず大きな歓声が起こる。音数を絞り込んで、タイトなアンサンブルで聴かせるスタイルは一貫しているものの、キャパ180という距離感はまるでバンドの始まりを思わせるものがあり、UKの郊外にある小さなヴェニューで偶然かっこいいバンドに出会えたような気分になるから不思議だ。
のび太のイーヴルな単音フレーズ、一番圧のある音を発し続ける彩のベースが映える「Extreme」や「Thunderous」、ザクザク切り刻むようなコード・カッティングが痛快な「Zodiac Syndrome」、ロック・バンドのスケール感をサウンド・スケープで作り出した「Maze」とシームレスに演奏していく4人。そもそもBPMの速さで興奮を煽るタイプのバンドじゃないことを、久々にライヴで披露するレパートリーから知るという、このバンドのメカニズムを知るいい機会でもあった。ひとかたまりのブロックが終わると相変わらず親しみを込めてメンバーの名前がそこここで呼ばれるのだが、中には"たかしー"とのび太の愛猫の名前やら、のび太の本名まで出てくるあたりは、距離が近いこともあって笑いがフロア中に広がる。まぁ、そこはやはりWHITE ASHならではの演奏とMCのギャップ感健在といったところか。再びギアを入れて、削ぎ落とした「Deadmans On The Dancefloor」、すでに浸透しきっている印象の「Teenage Riot」など新旧織り交ぜながら、潔いまでのショート・チューンを連投していく。ここまですでに13曲プレイしてきたのだが、曲が短く凝縮されているのはもちろん、歌も各楽器もすべてがフックだらけだからいくらでも聴きたくなるというWHITE ASHの強みを再認識した。
さて、この日の主役(?)山さんの誕生日エピソードが、"お姉さんからもらった勝負パンツ"という、このキャパだから笑えるさじ加減。途中、剛のバスドラと"ヴォーカルののび太です!"の自己紹介で、山さんのエピソード・トークが強制終了させられる場面は爆笑した。そして13曲もプレイしてきたにも関わらず"ここまでまだ40%です。ここから攻め攻めで行くんですけど、みなさん大丈夫でしょうか?"の一声とともに本気で攻め攻めのキラー・チューン・エリアに突入。「Kiddie」、のび太のエモーショナルなヴォーカルが映える「Velocity」、「Jails」、ハンドマイクで前方まで出て行きながらのび太が歌う「Paranoia」と、おいしいところが凝縮されまくった4曲を駆け抜けると、"ようやく60%まできました"とのび太。"新しいライヴハウス誕生の歴史に関われて嬉しいです!"と本編ラストに用意してきたのは、なんと8月5日リリースの両A面シングル「Insight / Ledger」から「Insight」。エフェクトのかかったヴォーカルと同期をイントロダクションに配し、アルバムでのヘヴィネスとはまた違う新境地を早くも届けてくれたことにWHITE ASHの気概を感じた。
踊り倒したフロアから起こるアンコールに応えて登場したのは本日の主役、山さん。なんとエレキ弾き語りをするというので前方というかほとんどのお客さんに体育座りを促し、何を披露するのかと思ったらHYの「AM11:00」!さすがコーラス担当の美声というかあたたかい歌声を聴かせて、大きな拍手が起こった。しかし不思議な光景......その後、3人も再登場し、まずはLIVEHOLIC店長への花束がフロアのお客さん伝いに届けられ、そして山さんへのバースデー・ケーキもステージに届けられるという、ダブル・バースデー祝いに。締めに「Stranger」をプレイし、曲調はダークなのにムードはハッピーという、これまたWHITE ASHならではのエンディングを飾ってくれたのだった。
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