Japanese
SEBASTIAN X
2013年08月号掲載
Member:永原 真夏 (Vo)
Interviewer:天野 史彬
-永原さんって、人一倍、“忘れたくない”感覚が強いのかなって思うんですよね。出会った人のこととか、時代のこととか。
そうですね……なんか、嫌ですねぇ(笑)。……でも忘れちゃうし、忘れちゃったらまぁいいかって思っちゃう自分が嫌だったんですけど、“お前こういう奴じゃん”って、自分の軽薄さも受け入れたし……。嫌だなって思うことに対して……それが過去の記憶に対してでも、その場の状況に対してでも、自分自身のことに対してでも、諦めましたね。それに、どんな状況にいても変わらない自分の芯があって。それをアルバムにしたら、きっとどこにでも行けるし、どの場でも歌えるんですよ。それこそ小学生ぐらいの頃から変わらない自分をアルバムにして、思う存分爆発したら、それを持ってライヴに行って見える景色は全部納得がいくだろうし。そのぐらいリアリティがある自分をちゃんとアルバムに込めようって思いました。“仕方ないじゃん、全部自分なんだから”って素直に思って。そしたら、5年10年歌えんじゃねっていう感じです。
-その永原さんの芯が、さっき言ってくださったパンク精神、アナーキーさであったりするわけですよね。だからこのアルバムって、今までで唯一、“禁じ手”のないアルバムですよね。全部に対して肯定的というか。
うんうん、そうですよね。まぁ、基本的には肯定的な、大らかなタイプですし(笑)。「MY GIRL(姫君へ捧ぐ)」とかはそれがプンプンしてますけど、いろんな自分、多面体の自分の全面をなるべく込めたアルバムです。だから、レコーディング終わって、帰る車でできたてのこのアルバムを聴いた時、自分がいるみたいで、すげぇ不快でしたもん(笑)。こんなのと絶対に友達になりたくないと思って(笑)。だから、みんな友達でいてくれてありがとうって思いました。
-(笑)「サマー・ハネムーン・ビート」みたいな曲も、今までは作れなかった曲ですよね。これは“季節がめぐり ときめきが消えても もう二度と来ない日々を 忘れはしないでしょう”って唄うノスタルジックなラヴ・ソングだけど、今まではいわば「愛の跡地」だったわけだから。
確かに!作れなかったです!さすがですね、そうなんですよ。あんまりこういう歌詞は書きたくないタイプだったので。でも、歌ってみたら今まで嫌だなと思ってた分、すんなりきて。これがほんとに自分の思ってる感覚だなって、書いてみて思いました。
-今回、詞が凄くシンプルになったなって思ったんですよね。「ヒバリオペラ」とか「三日月ピクニック」が特にそうですけど、キャラクター設定が明確にあったり、物語性が強かったりするものが多いなって思うんです。これは意識してました?
うーん……詞を書くことに関して、たとえばメッセージを伝えようとか、キメ台詞を入れようとか、いい詞を書こうっていう意識よりも、心底楽しもうっていうことを意識してやったからだと思います。楽しかったですね、このアルバムの詞を書くのは。こういうふうにしよう、ああいうふうにしようって、アイデアがたくさんあって。その湧き上がるアイデアに忠実に楽しんで書いたからかなって思います。主人公も伸び伸びしてるし、“どこにでも行って大丈夫だよ”“予想外の行動に出てもいいし、好きにしてもいいよ”っていう感じで楽しんで書けたので、そこじゃないですかね。
-「MIC DISCOVERY」に“不良少女 恋をして ロック少年 うつむいて”ってありますけど、結果として、特にそういう10代の子たちとか、若いリスナーが身を投じやすい歌詞が増えたなと思ったんです。
やっぱり、ロックとかパンクとかが好きな人には多いと思うんですけど、自分が初めて音楽に触れ合って衝撃を受けて、ぐーっと凄い速さでのめり込んでいったのって高校生の頃とかだったから。中学生の頃はひとりで聴くしかなかったけど、高校生になった時に、ライヴハウスに行ったり、共通の趣味を持つ友達を見つけたりして、“ここで生きていける”って思った瞬間があって。今でもそこに届けていきたいなっていう気持ちはあります。あとはやっぱり、精神年齢が同じくらいだからじゃないですか(笑)。めっちゃ話が合うんですよ、若いお客さんと。“わかる!”みたいな(笑)。だから、素直に書いて、若いお客さんが聴いてくれてっていうのは、お互いのシンパシーがあるんだと思う。私もお客さんにシンパシーは感じますし、そこは精神年齢が近いんですかね(笑)。
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