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INTERVIEW

Japanese

パスピエ

2016年12月号掲載

パスピエ

Member:大胡田 なつき(Vo) 成田 ハネダ(Key)

Interviewer:秦 理絵

この1曲で何かが解決したとしても、悩みは続いていくから。面倒だけど、踏み出していかなきゃいけない

-5周年の節目の作品で"葛藤"がテーマというのは、なんと言うか混沌としてるような。

成田:5周年という部分に絡めて話すなら、やっぱり自分たちの世界を広げるためには、これからも葛藤し続けなきゃいけないって思うんです。結局、この1曲で何かを伝えたとしても、それが100パーセント伝わるのは難しいことで。でも、そこに出たものが良ければ周りの方は称賛してくれるし、違ったら違うってなるだろうし。ここで何かが解決したとしても、その葛藤はこの先も続いていくんですよね。面倒だけど、踏み出していかなきゃいけない。それはわかってることで、そういうことを表現したかったんです。

-そうやって振り返ってみると、パスピエの5年間というのは、自分たちが意図してることとはどこか違うふうに捉えられ続けてきたという感覚なんですか?

成田:まぁ、正体不明のバンドっていうところも、遊び半分でアー写をイラストで描いたところからカテゴライズされるようになりましたからね。今まではカテゴライズされることに対して、どうやって殻を破っていくかの繰り返しだったと思います。そのままメジャー・デビューしたので、ライヴでの表現はすごく考えたんですよ。そのカテゴライズに乗っかって、顔を出さずにライヴをやるのがいいのか? とか。でもライヴは自分たちを曝け出して表現する場だなと思ったから、顔を出したんです。そういう意味では、音源とライヴもパスピエは対なんですよね。

-たしかに対の部分に注目すると、不思議とあらゆるものが対に見えてくる。

成田:すべてが対っていうのも、結局ふたつのものが表裏一体で重なり合ってるからだと思っていて。たぶん離れていたら、対っていう言葉は使わないかなと思うんです。それが今年はうまく組み合わさるイメージを持てたんですよね。

-今も"受け手にどう捉えられるんだろう?"、"そうか、じゃあこう出るか"みたいな試行錯誤は続いているんですか?

成田:それは一生、ゼロにはならないと思います。もう5年もやってるので、5年前から見てくれてる人と、今から知る人とでも捉え方は違うと思うんです。だから、この活動をずーっと続けていったときに、"パスピエって最初は顔を出してなかったんだ"っていう人も出てくるだろうし。まぁ、悩みはしますけど、それを作品にしていかなきゃいけないのが今の立場ですね。

-ちなみに「メーデー」のサウンドについて、ここ最近の流れではBPMは遅めで上がる曲に興味が向いてましたけど、今回は疾走感のある曲になってて。

成田:前作、前々作みたいなミドル・テンポの曲を作ることで、今回のアッパーな曲もより映えてくると思うんですよ。毎作聴いてくれてる人にも、ちゃんと起伏を作っていきながら、そのタイミングでベストなものを見せたいなと思ってるから、結果的にそういう曲になったんです。"今年こういうことを見せますよ"って言ったのに、そうでもない部分も結構あったりするので(笑)。でも、僕らのなかではただのアッパー・ソングではないなっていう曲ができました。

-たしかに、テンポが突然スローになったりして、一筋縄ではいかない展開というか。

成田:今年はずっと"余分なものを削ぎ落とす"っていうのが曲作りのテーマだったんですけど、今回の曲に関しては、オンのところはオン、オフのところはオフっていうメリハリが出せればと思ってたんです。今までの作り方は、常に何かしらうねっていたり、動いていたものの融合体だったりしたんですよ。今回はシンセのメロディとか、暴れるところはしっかり暴れるんですけど、抑えるところは抑えるという感じで。あと歌の部分でも、芯のしっかり通ったサウンドになったなと思います。

-大胡田さんはどんなことを意識して歌いましたか?

大胡田:この世界観っていうのかな......それが音でも文字でも強かったので、歌うときの自分なりの感情みたいなものは意識しましたね。この曲は歌を録ってるときから、ライヴではもっとオーバーな感じでやろうと思ってたんです。CDとライヴでは歌が結構違うかもしれないので、そこも聴いてもらえたらと思います。

-どうして違う歌い方にしようと思ったんですか?

大胡田:CDはすごくいろんな人に聴いてもらうし、私の姿が見えないまま耳で聴いてもらうものなので、その人自身が自分と重ね合わせたりとか、その人からいろんな感情が引き出せた方がいいと思うんですよね。だから、押しつけがましくならないように。逆にライヴでは、私の気持ちもちゃんと出していけたらなと思ってるんです。

-わかりました。こういうとき、"5周年を彩るアッパー・チューンが完成"とかキャッチコピーで言えたらわかりやすいんですけど、いい意味で今作も単純な言葉では伝えづらいパスピエらしいキラー・チューンができたな、と思ってます(笑)。

成田:まぁ......彩ってはないですよね。

大胡田:たしかに(笑)。

成田:そこの、伝えるときのもどかしさみたいなものは、僕らのなかにもずっとあるんですよね。でも、それでしかやってこなかったので。そういう部分を認めてもらうためにどうしたらいいかっていうことを、これからも考え続けていくんだと思います。

大胡田:曲を作るうえでは5周年ってあんまり考えてないんですよ。いつもどおり新しいことにチャレンジをしたものをシンプルに出してるんです。