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Japanese

MAGIC OF LiFE

Skream! マガジン 2015年07月号掲載

MAGIC OF LiFE(ex-DIRTY OLD MEN)

Official Site

2015.06.13 @LIQUIDROOM ebisu

Reported by 沖 さやこ

バンド改名後、初のアルバムとなる『Storyteller』を今年3月にリリースし、4月19日には地元である栃木県は栃木市総合運動公園総合体育館にて主催イベント"Don't Stop Music fes.栃木"(通称・栃フェス)を開催し、成功を収めたMAGIC OF LiFE。栃フェス後にスタートしたこの全国ツアーはメンバー曰く"毎回最高だった"とのこと。ファイナルを迎えたこの日も、とにかく会場が幸福感に溢れていたことが印象的だった。それは場内が暗転したとき、もとい開演前からそうで、ほぼ男女同率の観客はみんなデートの待ち合わせのような、ときめきを胸に抱えていたように見えた。MAGIC OF LiFEの音楽もまた、男の子と女の子の物語を描いたものが多く、その物語と現実がこのときからすでにリンクしているようだった。
 
高津戸信幸(Vo/Gt)が楽曲の歌詞を用いた導入の台詞を放ち、自らが"Storyteller"となり「balletto」へと繋ぐ。彼の描く物語を実体化するような説得力のある渡辺雄司(Ba)と岡田翔太朗(Dr)のリズム隊と、まさしく"音の色"と言うべきリフを重ねていく山下拓実(Gt)。4人それぞれが、観客へと自らの物語を実直に放っていく。高津戸が観客へ"おいでおいで、みんなもっと近くにおいで"と優しく語りかけると、観客もまた笑顔を浮かべて駆け寄っていく。その光景を見ていて、MAGIC OF LiFEの音楽の中で語られている男の子と女の子は、もしかしたらバンドとリスナーの関係性なのかもしれない、と思う。序盤から荒々しいスピード感に満ちた音像で駆け抜ける4人。高津戸は喉を潰すのではないかと思うほど、身を削るように歌う。
 
高津戸がMCで"楽しいね、音楽やってて良かったわ""テンション上がりすぎて初っ端から声を張り上げすぎた"とフロアへラフな語り口で話しかけ"どうしても忘れられない夜にしましょう!"と力強く叫ぶと「栄光への一秒」へ。4人が同じコースを全力で突き抜けるような疾走感だ。それはなんだか4人のデッドヒートを見ているようでもある。ダンス・ナンバー「変えるのうた」、ポップ感のある「Concrete Earth」は高津戸のヴォーカルも相まって切実さが溢れていた。すると山下のギターと、岡田の爽やかなシンバルの音が重なり、高津戸がひとことひとことを丁寧に発してその音の中へ物語を落としていき、その物語から「Zombie(s)」へ。MAGIC OF LiFEの楽曲の向こう側には、深い深い物語が存在している。彼らがそこを明確に表現することにより、聴き手もさらにその奥へと踏み込めるのだ。『Storyteller』というアルバムは、高津戸信幸のソングライターとしてのひとつの集大成なのかもしれない。続いての「ブリキ」でのラストのシンガロングは、夜明けのような安堵感が場内を包む。
 
ツアーの思い出話などを挟むと、ミディアム・ナンバーのセクションへ。「月に揺られて」はコーラスでも鮮やかに魅せ、「りんご飴」もまた丁寧にひとつひとつの音を奏でていく。そこから高津戸がギターと共に1本のストーリーを囁くように語り、『Storyteller』の1曲目である「First morning」が鳴った瞬間の光景は非常に美しかった。
 
"音楽は素晴らしいって、最近すごく思うんですよね"と語る高津戸。順風満帆ではなかった活動の中で、もう投げ出そうとしたこともあったそうだ。だが求めてくれる存在がいたから、どうしても好きになれなかった自分を好きになろうと努力して、背中を押してもらって音楽を続けることができた、と穏やかに語る。次の曲は"階段ですれ違う男の子と女の子の物語"。彼はそのストーリーをひとつひとつ伝える。"これは僕の音楽人生においての出会いの物語です""あのころの自分が感じた想いを伝えたくてこの曲を書きました。僕らはみんながいるから世界が輝いて見えます"と真摯に語り演奏された「箒星の余韻」は、彼の描いた物語も気持ちもすべてが音楽になっていた。
 
高津戸以外のメンバーでのインスト枠から怒涛の後半戦。曲を重ねるごとにフロアからはバンドへの愛がどんどんとめどなく溢れ出していく。「ジェットモンスター」では山下がタオルを回したことで、フロアが後方まで一斉にタオルを回しだす。高津戸が"でっかい声聞かせてよ!"と叫んだ「呼吸」はシンガロングやクラップにかけ声があがるなど、両者の全身から生まれる相思相愛が作り上げた空間だった。「夜空のBGM」「リリム」と畳み掛け、"俺らにはこれしかないから、全部さらけ出してここに立ってます。いつまでもみんなの心に住み続けられるように、全力で歌い続ける"と言い、アルバムのラストである「storyteller」でライヴ本編を締めくくった。
 
アンコールでは改名1周年を記念したイベントを東名阪で開催することを発表。"心から尊敬するバンドが来てくれます。これからもみんながワクワクドキドキすることをやっていきます""みんながいたから今日はすごく楽しかった。ありがとう!"と感謝を伝え、最後に10代のころに作ったという「blue"D"」を披露した。"手のひらサイズのちっぽけな夢"という歌詞に合わせてフロアはステージに向けて掌を向ける。その景色がとてもやわらかくてあたかかく、最後までバンドが同じ熱量で愛し続けられていることが、とても掛け替えのないことだと思った。"命の魔法"という名前を掲げた彼らは、これからさらに深くその魔法をリスナーと共に育んでいくだろう。