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INTERVIEW

Japanese

THE SPELLBOUND

2022年11月号掲載

THE SPELLBOUND

Member:中野 雅之(Prog/Ba) 小林 祐介(Vo/Gt)

Interviewer:阿部 仁知

様々な思いを受け取って一緒に新しい未来を作っていく――その責任と重圧、そしてファンと共有するかけがえのない喜び


-BOOM BOOM SATELLITESから地続きって話がありましたけど、そういう気持ちのファンの方って結構いると思うんですよ。そういった思いに対して中野さんはどう感じていますか?

中野:いろんな思いがあって完結した思い出として取ってある人もいっぱいいると思うんです。ただ人によって差はあると思いますけど、僕の人生は続いていくし、ファンだった人たちも長い年月これから歳を重ねていくと思うんですね。明日になればまた明日の空気を感じて、表現として昇華して新しいものを見せていくのはとても大事なことだと考えています。だからこそ過去に大切にしていた思いがあったとしても、一緒に新しい未来を作っていくということができたらいいなって思っていて、その責任があるんだなとも思っています。小林君みたいな人が僕の前に現れて、分かち合って進んできてくれていることは本当に幸運だったし、この出会いがないと、もともとBOOM BOOM SATELLITESのファンだった人とは、全然関係性が違うところから音楽活動を始めなければいけなかったかもしれない。小林君がいろんなものを引き受けてくれているなかで、THE NOVEMBERSともBOOM BOOM SATELLITESとも違う、新しいことを僕にやらせてくれるチャンスと勇気を貰っているところがあるんですよね。だからこそ、もともと僕たちの音楽のファンだった人たちも、安心して音楽に身を委ねられるところがあるんじゃないかと思います。

-それを聞いて僕もいちファンとしてすごく共感するところがありました。昨年7月の初ライヴで"THE SECOND CHAPTER"ってタイトルを付けられてて、これはもちろん中野さんや小林さんにとっての第2章という意味もあると思うんですけど、BOOM BOOM SATELLITESの第2章と捉えてもいいのかなってニュアンスと、おふたりの覚悟を感じていたんですよ。でも小林さんはもともとファンということもあって、すごく重圧があるだろうという想像もしていました。実際そういった期待を受けることを小林さんはどう感じていますか?

小林:すごくずっしりと重いものではあるんですよね。僕は中野さんと音楽をやるときに、BOOM BOOM SATELLITESの大ファンだったし、今と比べればカジュアルな気持ちで、中野さんに"ブンブン(BOOM BOOM SATELLITES)の曲やったほうがいいですよ"とか"みんな聴きたいと思いますよ! 僕も聴きたいし"みたいに喋ってたんですよ。でもライヴが近づけば近づくほど、"とんでもないことになってしまった"みたいなプレッシャーがありました。未だにそれは僕の中で強くあるんですけど、それ以上に"小林君で良かった"って言ってくれるファンの人もいて、ライヴでファンのみんなの顔を見ていると、重圧も全部吹っ飛んじゃうくらいの喜びがあります。僕もBOOM BOOM SATELLITESが大好きで良かったと思う瞬間でもありますし、みんなで一緒に未来に行けるっていうのは、すごくいいことだなと。

-小林さんだからこそっていうのは僕もとても感じます。今年の夏"SONICMANIA"でライヴを観たんですけど、「KICK IT OUT」(BOOM BOOM SATELLITESの2006年のアルバム『ON』収録曲)をやってたじゃないですか。僕は"ついに!"って思ったんですけど、おふたりがTHE SPELLBOUNDの表現に誠実に向き合ってるからこそ、先ほど中野さんが言ってた、知ってる曲が聴けたから嬉しいとは次元の違う感慨がありました。そういうところの心境も少しずつ変わってきたのかなと感じまして。

中野:THE NOVEMBERSのカバーを選ぶときもそうなんですけど、THE NOVEMBERSの熱心なファンの顔を思い浮かべますし、いつも何かしらのプレッシャーや責任を感じるんですね。"THE NOVEMBERSに泥を塗ってはいけない"と。同じくかつて僕がやってたバンドではあっても、BOOM BOOM SATELLITESの曲を選ぶときもいつもかなりの緊張感を持って選んでます。バンドが今出しているアンサンブルと出音には自信があって、ちゃんとものにできる自信はありましたが、「KICK IT OUT」もやるまではずいぶんドキドキしましたね。

-中野さん自身にも、BOOM BOOM SATELLITESに泥を塗ってはいけないという責任感があるんですよね。

中野:僕にもあります。そして小林君なんかはもっともっと......。よくやれるなって、僕ははっきり言ってすごいなと思いますね。

-"BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary BOOK ブンブンサテライツ"についてもうかがえればと思います。まず10月に川島さんの七回忌、11月にデビュー25周年を迎えるタイミングということで、中野さんにとっても、"今改めてBOOM BOOM SATELLITESを振り返る"ということに、何か心境的な区切りもあったのかなってことが気になりまして。出版の経緯を聞かせてください。

中野:実は僕がきっかけの話ではなくて、川島君の家族から相談を受けたところからこの企画は始まっているんです。やっぱり時間と共にゆっくりと風化していくもので、それは摂理なので抗えないものがあると思うんです。でもだからこそ、毎日の仕事ではないですけど、時々何かをきっかけに、こういうことをやっていくことも大事だなと捉えています。例えば今回はしっかり読み応えのある本を残すとか。だからきっかけは川島君の家族に貰いましたけど、企画をかたちにするべくいろいろ考えて進めていって、結果としてはとてもいいものができたなと感じています。

-BOOM BOOM SATELLITESの25年や川島さんとの活動を、改めて制作過程で振り返ったと思うんですけど、改めて実感として思ったことってありますか。

中野:運命とか、出会いの幸運を改めて感じましたね。僕と川島君が出会わなかったらこの世に何も起きなかったわけですよ。大変なこともたくさんあるんですけど、それと同じくらい楽しい思い出、美しい思い出がたくさんあって。出会って何かを始めることで、ものすごくエネルギーを消耗しながら生きていくことになるんですね。その結果として作品やライヴの瞬間が生まれるんですけど、出会わなければそのエネルギーが消耗されることもなければ、何かが産み落とされることもない。そのときその場所にいた幸運ってすごいことなんだなと改めて感じますし、何かいいことが起きたりいい作品が生まれたり、僕たちのバンドだけじゃなくて、いつも偶然の集積で世の中の様々な素敵なことが生まれているのだろうと思います。僕と小林君が今一緒に音楽を作れていることも幸運な奇跡のひとつだと思いますし、それがすごく大きいことだったんだなってことを改めて振り返って感じました。川島君は短い人生の人だったので、いかにそれが貴重な時間だったのかということもしっかり認識できる。使命感を持って生きなければならない瞬間が訪れる人もいるっていうことは、もし漫然と生きている人がいるんだとしたら、人生の教訓としてもいいものなのではないかと思って。だからファンではない人も読んでみたら面白く読めるかもしれません。

-とても楽しみです。小林さんは長年大ファンということで、THE SPELLBOUNDとして迎えるBOOM BOOM SATELLITESの25周年は、リスナーともまた違った感慨があるんじゃないかなと想像したんですけど、小林さんとしてはどうですか?

小林:中野さんと一緒にいるときに、よく川島さんの話をいろいろ教えてもらうんですよね。"このとき川島さんはどんな感じだったんですか?"とか"乗り越えなきゃいけないことがあったときに川島さんはどんなふうに時間を過ごして、中野さんと乗り越えたんだろう"とか。僕の守護神じゃないんですけど、何かに取り組んでいるとき、川島さんを感じながらいろんなことをやっているなって思うことがあるんです。特にライヴで歌ってるのは僕ひとりなんですけど、心の支えみたいになっている瞬間もあるし、面白おかしいエピソードですごく勇気づけられている瞬間とか、こんなふうに楽しんでいいんだって胸を撫で下ろす瞬間もあるし。僕はすごく特殊な視点を持たざるを得ない場所にいますが、それこそ大げさじゃなくて、BOOM BOOM SATELLITESがいなかったら今の僕はいないくらい影響を受けていて、もし中野さんと川島さんが巡り会わなかったら僕自身中野さんと出会うこともなくて、全然違うことをやっていただろうと思います。だからBOOM BOOM SATELLITESはすごく大切な存在です。

-ライヴでも小林さんを通して川島さんを感じることがあって、今のお話を聞いてすごくグッときました。"ゴールデンカムイ"やTHE NOVEMBERSのファンの方々など、これを機に新たにBOOM BOOM SATELLITESを知る若いリスナーも多いと思います。そういった方々へのおふたりの思いを聞かせてください。

中野:これをきっかけにいろいろ楽しんでもらえたら音楽家として一番幸せなことなので、関心があったらぜひBOOM BOOM SATELLITESも掘ってみてください。そしてTHE NOVEMBERSも。

小林:自分ごとですけど、代えがきかない出会いや音楽ってあると考えていて、僕はBOOM BOOM SATELLITESもTHE SPELLBOUNDもTHE NOVEMBERSも、生き様がそのまま出ている代えのきかないものだと思って音楽をやっているので、これから出会う人の出会いがかけがえのないものになったらいいなと願っています。

LIVE INFORMATION

"『すべてがそこにありますように。』Release Party"
12月15日(木)Spotify O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット ¥6,500円(全自由/1ドリンクあり)
チケットはこちら

BOOK INFORMATION

BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary BOOK『ブンブンサテライツ』
<タワーレコード・中野ミュージック限定発売>
11月2日(水)発売
定価:¥4,510(本体¥4,100)
判型:四六判
発行:(株)音楽と人
タワーレコード 中野ミュージック