Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

kobore

2022年03月号掲載

kobore

Member:佐藤 赳(Gt/Vo) 田中 そら(Ba)

Interviewer:秦 理絵

koboreが大きな進化を遂げた。東京 府中で産声を上げ、徹底した現場主義を貫いてきた彼らは、これまでずっと現場=ライヴハウスに似合うロックを鳴らしてきたバンドだ。そこから一転、3月9日にリリースされるメジャー2ndアルバム『Purple』は、多彩な楽器が重なり合い、これまで以上にポップでメロディアスな楽曲を収録することで、より広い層へとリスナーの裾野を広げていくような1枚になった。作詞作曲にはメイン・ソングライターの佐藤 赳だけではなく、田中そらが手掛けた楽曲も初めて収録する。以下のインタビューでは、なぜkoboreがここまで大胆にバンドをアップデートさせたのか、佐藤と田中に話を訊いた。それは変化ではなく、広がる選択肢のひとつ、ということだ。

-前フル・アルバム『風景になって』(2020年リリース)の制作時期はコロナ禍に突入した頃で、かなりダメージを食らってたところもあったみたいでしたけど、今はどうですか?

佐藤:もうコロナコロナ言うのも飽きてきましたね。やれる範囲でライヴをやれるようになったし、そんなものにライヴのパフォーマンスが左右されなくなったし。MCでもコロナのことは言わないようにしてるんです。負けたくないっていう意地ですよね、コロナなんかに。今はどっちかっていうと、(要請で)ライヴがやれないよりも、誰かがコロナになっちゃってできなくなることが多いので。健康に気を使うことが最優先です。

-そらさんは?

田中:赳と一緒で、ライヴで気持ちが左右されることはなくなりましたけど、延期とか中止っていうのはまだまだあるので。そういうのは慣れないですね。一回一回受け止められなくて、落ち込むこともあります。ただ、そのぶん音楽制作に関してはいつも以上に前向きにやれたんですよ。コロナは最悪なんですけど、成長するきっかけになったのは事実なんですよね。"僕、成長しました"って、自分から人に言えるくらいには成長したと思ってるんです。そういうのって自分で言うものではないじゃないですか。

-他人が見て言うものですよね。

田中:そう。逆に言えば、1回、地の底に落とされたぐらいの苦痛があったので。成長できたのはそれがデカかったのかなと思います。

-自分ではどういうところが成長したと感じますか?

田中:精神面はそんなに成長してないです、正直(笑)。でも、その弱い精神面を紛らわすために音楽に没頭したから。演奏とか制作技術が向上したんです。

-今回のアルバム『Purple』を聴かせてもらっても、それは感じました。まず、すごくポップですよね。メロディが映える緻密なアレンジだし、垢抜けたというか。

佐藤:うん、俺もポップだな、と思う曲もありますね。メロディとかキャッチーさを意識した曲を多めに詰め込んでるところもあるので。とにかく今回はやりたいことをめちゃくちゃ詰め込めたなっていう手応えがあるんですよ。

田中:赳が持ってくるデモの時点で、すでにポップめな曲が多かったのはメンバーとしてもびっくりしたんです。ずっとバンドを一緒にやってきたけど、赳の中で何か変わってきてるんだろうなって思いました。今までのkoboreはこぶしを挙げるような曲が人気なんですよ。だから今回のアルバムはガラッと変わってて。どう受け止められるか不安なんですけど......ただ、曲がいいんですよね。

-本当にその通りだと思います。

田中:赳が持ってくるデモの時点でポップだなとは思ったけど、漏れなく全部良かったので。"もっとロックなほうにしよう"とかは言わなかったです。

-赳さんの中では何か曲作りの意識を変えたんですか?

佐藤:いや、自分の中で何かを変えたつもりはないんですよね。僕からしたらただただ自分の好きな音楽を目指したら、このアルバムができたっていう感じなので。そりゃ、(前作から)1年も2年もあれば、聴く音楽や、見える景色は変わってくる。言いたいこともやりたいことも変わってくるだろうなっていうのは、アルバムができたあとに思いました。だから、意識して変えたっていう実感ではないんです。

-"意識が変わった"のではなく、例えば、より広い会場に届くように歌の飛距離を伸ばしていくとか、歌そのもののパワーを強くしたいとか、ソングライターとしてアップデートしたい気持ちが強くなった、というのはありますか?

佐藤:あ、そうですね。今野球の話が出たのでそれで言うと、本当にどストレートを投げるみたいな感じの方向性から、キャッチボールをしてみたくなったんですよ。

-うんうん、それ、すごくわかります。

佐藤:自分の人間性的なもので何かが突き動いた感じがありました。それで今回はこういう楽曲がたくさんできたんじゃないかなと思いますね。それは別にコロナとかは関係なく。シンプルに20代の1~2年が通り過ぎ去った結果、みたいな感じで。

-具体的に言うと、去年はEX THEATER ROPPONGIみたいな広めのハコでライヴを成功させたし、今年はZepp("VIOLET TOUR 2022")が控えてる。っていうなかで、届けたい音楽も変わってきている。

佐藤:見える景色も当然違うわけですしね。あんまり会場が小さい/大きいとか、(お客さんが)多い/少ないとかは言いたくないですけど。そこでやれる限りを尽くすなかで、より寄り添えたらいいのかなっていう心境です。

-今言った"キャッチボールになっている"っていうのを一番感じた曲は「Tender」でした。これ、本当にメロディもいいし、コード感もいい。

佐藤:いいですよね。(アルバム制作の)序盤にはコード進行だけできてた曲なんですよ。このコード進行なら、めっちゃいいメロディが作れるわって満足して、そのまま置き去りにしてて。

田中:そうだね(笑)。

佐藤:何曲かあがってきて、次何を作るか? ってなったときに、このコード進行をもとに作り直してみますか、みたいな感じで。中盤ぐらいにできあがったんですよね。

-これまでもkoboreは音楽への想いを歌った楽曲が多いですけど、これもそういうタイプではありますよね。

佐藤:世の中にラヴ・ソングが多いなと思ったんですよ。そんなにラヴ・ソングっているかなぁ? と思って書き始めたんです。ちょっとアンチじゃないですけど。奇跡的なことなんて日常を過ごしてて起きるものじゃないし。みんな、そういうのに憧れてるんだなって感覚はあるんです。それよりかは、もっと日常にあるけれど、気づけない優しさを歌いたいなって。それで、柔らかさ、懐の深さを意味する"Tender"っていうタイトルにしたんですけど。壮大なラヴ・ソングじゃなくて、世の中のラヴ・ソングに対する、もっとこういうものなんだよっていうのを意識して歌詞は書きましたね。

-""音楽"って/僕の為に歌う事じゃないと知った"と歌ってるじゃないですか。

佐藤:はい。