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INTERVIEW

Japanese

緑黄色社会

2020年04月号掲載

緑黄色社会

Member:長屋 晴子(Vo/Gt) 小林 壱誓(Gt/Cho) peppe(Key/Cho) 穴見 真吾(Ba/Cho)

Interviewer:吉羽 さおり

緑黄色社会のメジャーでの1stアルバムとなる『SINGALONG』が完成した。まず、耳を奪われ、心を高速で掴まれるその"歌"というものが強力に詰まったアルバムであり、その歌を多彩に彩り聴かせるサウンドも、大いに広がっている。緑黄色社会というバンドの広い音楽世界が詰まった作品だ。4人のポップな精神、遊び心、茶目っ気のある音楽的ないたずら心はとても高い。負の感情でも高揚感でも、心が爆発していくときのヒリヒリや、叫びがカラフルな色使いで音になっていてワクワクが止まらない。心が動く瞬間をパッケージした全13曲。その音楽の鼓動を聴いてほしいアルバムだ。

-前回のシングル『Shout Baby』(2020年2月リリース)の取材時は、ちょうどアルバムのレコーディング中でもありましたね。今回の制作は、スケジュール的にはどのような感じだったんですか? わりと余裕もあったような感じですか?

長屋:結構じっくりとやれていた感じでしたね。

穴見:ありがたいことにね。

-アレンジを楽しみながらできたんだろうなという感触は作品を聴いていても思いました。ボリューム感のあるいいアルバムで、トライもたくさん聞こえてきますし、タイトル通り歌というものが聞こえてくる作品で、その歌にどーんと背中を押されるような作品だと思います。アルバムに向かっていくうえでは、何かイメージなどはありましたか?

長屋:特に大きなコンセプトがあったわけではなく。まずフル・アルバム自体が2年ぶりで、久しぶりだったんです。アルバムは今の私たちを表現するいい機会だと思うので、今を表現するのに相応しい選曲もしたし、どういう私たちを伝えるかというのはすごく考えましたね。

-そういうなかで最後にできた、アルバムの最後のピースを締めくくった曲はどのあたりでしょう?

穴見:ラストは1曲目の「SINGALONG」ですね。

長屋:この曲は、すべてのレコーディングが終わった頃にアルバムのタイトルを考えて、アルバムのオーバーチュア/序曲みたいなものが欲しいなということで、最後にできあがった曲だったんです。

-「SINGALONG」はまさに幕開けに相応しいオープニング曲ですね。このアルバムに至るなかでは幅広い内容のシングル曲も多くリリースされました。そのシングル曲たちがちゃんと収まったアルバムであり、そういったシングルがまたアルバムの中で新たな役割やスケール感を担っているし、その他の曲もどんどん緑黄色社会のバンドとしてのサウンドの、枠というものを壊している感じが強くあります。より積極的に新しいものを提示していこうという思いはありましたか?

穴見:そうですね。例えば、「sabotage」とか、「想い人」とかは先行で出しているので、自ずとアルバムに入るだろうなというのはあったんですけど、だからと言ってそこに合わせるべく作ったものはなくて。自分たちが今本当に思う、大きな会場でやることや、みんなに届けたいという目標はメンバーみんなで共有していることなので、そうするためにはということだったのかな。でも、"こういうアルバムにしよう"とは作っていないんです。

長屋:アルバムだからこそできることってあると思うんです。ここまでシングルやEP、ミニ・アルバムが続いていたなかで、それではできないようなことを挑戦する作品にしたかったんですよ。今回で言うと小林が作った「inori」や、真吾が作った「スカーレット」のような曲は、こういうタイミングだからこそ、やりたいことができた曲かなと思ってます。

−「inori」はまさに新たなタッチの曲ですね。どういう方向のサウンドにしたいかというのは、小林さん自身が具体的に持っていた曲だったんですか?

小林:僕のデモの段階で今の形に結構近い状態になっていましたね。そこに編曲でTomi Yoさんに入ってもらって、エレクトロの要素やストリングスを足してもらって、より表情豊かな曲になった感じでした。もともと歌詞はついてなかったので、これがどういう曲になり得るのかというところまでは想像してなかったんですけど。

長屋:最近の壱誓のデモにこういう雰囲気の曲が多かったんです。その中でもこの曲は、独特な印象を持ちながらも、すごくキャッチーで。こういうものは、自分ではあまりたくさん聴いてこなかったし歌ってこなかったけど、挑戦してみたいなと思える曲でした。

-R&Bっぽい雰囲気ではあるんですけど、そこにもハマらないような不思議な温度感を持った曲ですね。歌詞も小林さんが書いていて、心の深いところにどっぷり浸かっているような曲になっている。

小林:歌詞は、もともとは長屋に書いてもらう予定だったんですけど、長屋も他の曲をいろいろとやっていて、そのタイミングで僕がどうしても書きたいことが出てきたので、長屋に"1回俺に書かせて"って言ったんです。プライベートでショッキングな事件に遭遇してしまって、そこで何もできない自分に対しての戒めと想いを曲にしたんですよ。だいぶオブラートに包んで、男女の恋愛の話に当てはめた歌になっているんですけどね。

-長屋さんのヴォーカルも新鮮な響きがありますが、そういった小林さんが書いた歌詞を、ヴォーカリストとしてどう表現するかという曲ですかね。

長屋:そうですね。内容については実際に私も話を聞いていたので、その気持ちを汲みつつでした。でも、人の歌詞を歌うときって、すべてを作り手と同じように理解できることはないと思うので、どこまでそこに寄せようかとか考えるんです。曲調とかも初めての感じだったので、普段とは違った歌い方で、テンションも変えていたし、息づかいや声色も変えながら探り探りレコーディングした曲でしたね。

-歌も実験的なパートがあるように思いますが、自分が書いていない曲だからこそ、どんどんいろんなことが試せそうですね。この曲はサウンド面もいろんな遊びをした多彩な曲ですが、鍵盤も彩りが豊かですね。

peppe:第一印象はサビがすごくキャッチーだなというのと、このメロディは、私は思い浮かばないなと思いましたね。実際のレコーディングでは、アレンジャーのTomi Yoさんと一緒にシンセの音を作っていきました。いろんな音を作り込んだので、これをどうライヴでやるかというのは、イメージはしているんですけど、実際にどうなるのかはまだわからないです。

-ライヴでは空気を変えられそうな曲でもあるんじゃないでしょうか。

長屋:本当にそうですね。ライヴの流れを変えるとか、ライヴ映えがしそうな曲だなと思っているので、楽しみです。

-今のバンドだからこそこういうことをやってみたいっていう思いは、小林さんにはあったんですか?

小林:全然そういうつもりはなく作っていたんです。とりあえず今出せるアイディアをっていう。peppeはわりとライヴの雰囲気を想像して書くことが多いって言うんですけど、僕はわりと部屋で思いついたことからやっていくものが多いので、歌詞が乗ったり長屋の歌が入ったりしてやっと景色が想像できるようになるんですよね。