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LIVE REPORT

Japanese

緑黄色社会

Skream! マガジン 2019年02月号掲載

2018.12.21 @マイナビBLITZ赤坂

Writer 秦 理絵

ステージにはカラフルな大きな風船をあしらったセットが組まれていた。まさに緑黄色社会が鳴らすポップな世界観をそのまま反映したような空間。リョクシャカ(緑黄色社会)が11月7日にリリースしたミニ・アルバム『溢れた水の行方』を引っ提げた全国ツアーのファイナルとなったマイナビBLITZ赤坂公演だ。バンド史上最大規模の会場で開催されたそのライヴは、多種多様なアーティストが溢れる音楽シーンの中で、リョクシャカが唯一無二のポップ・ミュージックを鳴らすバンドとして着実に突き進んでいることを伝える、渾身のライヴだった。

おもちゃ箱をひっくり返したような賑やかなSEに乗せて、小林壱誓(Gt/Cho)、穴見真吾(Ba/Cho)、peppe(Key/Cho)がスタンバイ。ピンスポットを浴びた穴見がスラップ・ベースを繰り出すと、ひと際高いステージ中央に長屋晴子(Vo/Gt)が姿を現した。1曲目は「Alice」。ロング・スカートを翻しながら、"楽しんでいってね!"と笑顔を見せるヴォーカリストとしての鮮烈な存在感に目を奪われてしまう。peppeが弾く華やかなピアノのフレーズに乗せてシンガロングを巻き起こした「恋って」、エレクトロでスウィートなpeppeと長屋共作のダンス・ナンバー「Bitter」と、それぞれにまったく違う世界を描きながら、すべてがリョクシャカと言える楽曲たちで展開されていく。丁寧に編み込まれたアンサンブルは決して一朝一夕で手にしたものではない。バンド結成から7年。"もっとこの歌を伝えたい"という信念を抱き続け、大切に育んできたものだ。

"今回のツアーは気持ちを大事にして、みんなと感情を共有できるツアーにしたくて回ってきました。楽しい気持ちはもちろん、悲しい、悔しい、恥ずかしい気持ちとかも歌うので、素直な気持ちで聴いてくれたら嬉しいです"。MCでは、長屋が"溢れた音の行方"と題したツアーへの想いを伝えた。刹那的なバラード曲「視線」、R&Bテイストのグルーヴを打ち出したバンドの新境地となる未発表の新曲「ひとりごと」など、美しい展開が続くなか、素晴らしかったのが、中盤、長屋が自分自身の内面と深く向き合った「regret」と、さらに重々しいバンド・サウンドの中で、迷いから立ち上がってゆく心境をドラマチックに描いた「Re」だった。そのヴィジュアルから華憐でポップなバンドという印象の強いリョクシャカだが、曲によってはダークで尖った部分も剥き出しになる。そんなとき、彼らは"ポップ・バンド"と呼ぶよりも、"ロック・バンド"と呼ぶ方が相応しいと思う。

小林&穴見のコンビが生み出した洋楽ライクなダンス・ナンバー「Never Come Back」、疾走感溢れるライヴ・アンセム「アウトサイダー」などを畳み掛けて、会場の熱気がヒート・アップしていくクライマックス。長屋が"もっと広い世界をみんなと一緒に見てみたいです"と伝えると、最後に「あのころ見た光」を届けた。バンドの過去と現在の想いを交錯させながら、ひとつずつ夢を叶えて次の世界に進んでいこうという、バンドの意志を刻んだ力強い楽曲だ。それは、いくつもの感情を描き出した笑顔の絶えないライヴの中で、彼女らが一番伝えたいメッセージだったと思う。

アンコールでは、"喋ると終わっちゃうから、ゆっくり喋るわ(笑)"と、終わりを惜しむ長屋。改めて"もっと大きな場所でみんなに会いたい"と、これからについての強い想いを語り、お客さんの頭上を銀テープが盛大に舞った「始まりの歌」でライヴを締めくくった。ひとつのツアーが終わっても、また新しいバンドの物語が始まる。だから"さよなら"ではなく、"またね"と、再会の約束を交わすようなリョクシャカらしいフィナーレだった。


[Setlist]
1. Alice
2. 恋って
3. Bitter
4. 視線
5. またね
6. ひとりごと
7. サボテン
8. regret
9. Re
10. 大人ごっこ
11. 君が望む世界
12. Never Come Back
13. アウトサイダー
14. リトルシンガー
15. 真夜中ドライブ
16. あのころ見た光
en1. want
en2. 始まりの歌

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