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LIVE REPORT

Japanese

緑黄色社会

Skream! マガジン 2021年09月号掲載

2021.07.04 @東京ガーデンシアター

Writer 秦 理絵 Photo by 安藤未優

"ライヴができるって最高じゃないか!"。バンド史上最大キャパとなった東京ガーデンシアター。高い天井をほこる会場のステージに立ち、小林壱誓(Gt)は、今この瞬間にライヴができる喜びを爆発させていた。昨年は、アルバム『SINGALONG』を携えたツアーが、新型コロナウイルスの影響でわずか1公演のみの開催になってしまった緑黄色社会にとっては、今回のホール・ツアー"リョクシャ化計画2021"は、1年半ぶりとなる待望の全国ツアーだ。全9都市を回るツアーの6本目となった東京公演が行われた7月4日は、2012年に穴見真吾(Ba)が加入し、バンドが現体制になった記念日でもあった。"9年前はこんな大きい場所でライヴをできると思ってなかった。オーディエンスがひとりしかいない日もあった"(小林)と、これまでのバンドの歩みを振り返ったこの日は、この先もファンと一緒に最高の景色を作り上げることを約束する、愛と煌めきに満ちたメモリアルな一夜になった。

スクリーンに映し出された"LOADING"の数字が100パーセントに上がり切ると、メンバーを8bitで表現したRPGゲーム風のオープニング・ムービーが流れた。清涼感に満ちたバンド・サウンドに乗せて、長屋晴子の伸びやかなヴォーカルが響きわたった「夏を生きる」から、ライヴはスタートした。たいまつが燃え上がり、情熱的なラテン・アレンジで聴かせた「LADYBUG」では、穴見が客席にツースリーのクラップを煽り、ステージにスモークが立ちこめた「真夜中ドライブ」では、加速する疾走感を感じながら、peppe(Key)は軽やかにジャンプしながら鍵盤を弾いていた。4曲を終えたところで、サポート・ドラムの比田井 修が刻むリズムの中、"みんなのことを「リョクシャ化」する、私たちの色に染めるツアーです!"と、長屋が"リョクシャ化計画"の意味を説明。だが、このときすでに会場は、4人が繰り出すカラフルな楽曲たちによって、リョクシャカ(緑黄色社会)色に染まる幸福な空間ができあがっていた。

ステージが淡いピンク色に染まり、長屋がタンバリンを叩きながら、ピュアな恋の始まりを歌った「恋って」からは、リョクシャカ屈指のラヴ・ソングたちが恋とは何か、愛とは何か、を問い掛ける大きな物語を描いていった。peppeの華やかなピアノが甘くて苦い恋を彩った「Bitter」から、満点の星空の下であなたへの募る想いを独白するバラード「Copy」へ。4人の美しいハーモニーが重なり合った「愛のかたち」では長屋が丸、三角、四角をかたどったキュートなバルーンを片手に、童謡のような温かなメロディをなぞった。圧巻だったのは、ステージ前面に紗幕を下ろし、宇宙に導かれるような幻想的な景色を作り上げたバラード・ナンバー「結証」と「想い人」だった。陰りを帯びたバンド・サウンドが人との繋がりを描く「結証」から、愛を与え合う優しい感情を歌い上げた「想い人」への流れは、「恋って」で綴られたイノセントな感情が、やがて多くの出会いと別れを経験しながら、おぼろ気に愛の意味を見いだしてゆくまでの物語を見るような、あまりにも美しいハイライトだった。

後半は新曲を立て続けに披露、peppeのクールなピアノと穴見のスリリングなスラップ・ベースが炸裂したジャジーな新曲「ずっとずっとずっと」から、バンド初期の青春感が瑞々しくアップロードされた「これからのこと、それからのこと」へ。曲中でメンバー紹介とソロ回しを展開した「Alice」で、会場を最高潮の盛り上がりへと高めると、後半のMCでは、昨年ツアーが中止になったときに"みんなに支えられる瞬間がたくさんあった"と、感謝を伝えた長屋。"こっからね、だんだんとみんなに会える機会が増えていくと思うので、私たちに任せて。私たちが返していくから。もっと大きな場所につれていくから。だから、応援してほしい......っていうのは違うんだよな、私の中で。これからもみんなと一緒に頑張っていけたら嬉しいです"と、リョクシャカとファンの関係性は、決して一方通行ではないことを飾らない言葉で伝えた。

会場いっぱいに光が溢れるなか、"心の中で一緒に歌ってください"と訴えた「あのころ見た光」を経て、ライヴはクライマックスへ向かう。長屋と小林がツイン・ヴォーカルを聴かせた、開放感溢れるピアノ・ロック「始まりの歌」のあと、長屋が"みんなとなら最高のラスト・ソングに行けると思う"と言って届けた、本編最後の1曲は「Mela!」だった。ダンサブルでハッピーなサウンドに乗せて、会場のオーディエンスが思いきり腕を振り、手拍子をする。それは、バンドとファンの双方が全力でエネルギーを交感し合うことで作り上げられた、最高のフィナーレだった。

オープニングと同じように、RPGゲーム風の映像を挟んで突入した"アンコール"を、この日は"BONUS STAGE"と呼んだ。その1曲目に「Shout Baby」を届けると、"このくらいの規模感になると拍手がすごい"(長屋)、"分厚いよね"(peppe)と、オーディエンスに一本締めのように手を叩いてもらい、その迫力にはしゃぎ合うメンバー。堂々としたパフォーマンスとは一転して、初々しい反応が微笑ましい。ゲーム・ミュージックのようなサウンドが駆け抜ける新曲「アーユーレディー」を躍動感たっぷりに届けると、MCで長屋は、9年間のバンドの歩みを振り返った。人前で歌うのが恥ずかしくなったり、"音楽って楽しかったっけ?"と迷ったりする瞬間もあったと言い、"この9年間は、みんなで一緒に成長してきた、緑黄色社会の成長物語だなと思います"と、感慨を込めて伝えた。そして、この日を締めくくった本当のラスト・ナンバーは「Re」だった。peppeのピアノの伴奏に乗せて、"見据えてた世界が突然 姿を消して置き去り"と歌い出す、静かな熱を湛えたバラードは、3年前に発表された曲ではあるが、どこかコロナ禍からの再生も意味するような、熱い締めくくりだった。

ライヴの最後に、スタッフからのサプライズで、結成9周年を祝うバースデー・ケーキが運び込まれると、メンバーは次々に涙を拭った。"頑張ろうね、まだまだ"という長屋のひと言にも感動が滲む。そんな光景を見ながら、この日のリョクシャカのライヴは、"愛"が大きなテーマだったなと改めて思った。ファンからバンドへ、バンドからファンへ、スタッフからバンドへ。きっと緑黄色社会の成長物語は、これからもたくさんの愛と共に続いていくのだろう。

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