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INTERVIEW

Japanese

FIVE NEW OLD

2019年03月号掲載

FIVE NEW OLD

Member:HIROSHI(Vo/Gt)

Interviewer:山口 智男

-今回の4曲はいつごろから取り組んでいたんですか?

去年の夏ぐらいから徐々に始めて、ツアー中とツアー終わりにかけて作ってました。

-じゃあ、ワンマン・ツアーを経たことで作る曲が変わったところもあるんですか?

大きな変化は「What's Gonna Be?」にはあるかな。リズムでもっと楽しませることができたらいいなっていうのはツアーで感じてましたね。あとは「Don't Try To Be Perfect」。「Better Man」もそうなんですけど、よりスケールの大きいものっていうのはやっぱりライヴを重ねるごとに出てくるし。ツアーに出る前から曲は用意していたんですけど、「Better Man」はもっとコンパクトな曲だったんですよ。でも、ツアーに出てからアレンジしていくうちに、そういう部分が出たなと思います。「Please Please Please」も歌ってほしいという思いが強かったので、サビだったりアウトロだったりは、みんなで声を出して楽しんでもらえるようにってなりましたね。

-「What's Gonna Be?」に込めたメッセージをもう少し教えてもらえますか?

要するに腹を括って前に進もうってことです。自分の人間性もそうなんですけど、黒か白かはっきりさせることがそんなに得意ではないんです。自分が思っていることを整理するのも時間がかかったりするんですけど、だから音楽をやっているってところもある。僕はグレーなものはグレーだし、グレーでいいと思っているんですけど、その中で選択はしなくちゃいけないということはあって、そのためにはやっぱり何か決断して前に進んでいこうっていう。それは自分に対してもそうだし、ちょうど春なのでこれから何か環境が変わっていく人もきっといると思うから、その人たちに向けて"一緒にやっていこう。前に進んでいこう"っていう気持ちが表れていると思います。

-その一方で、「Don't Try To Be Perfect」ではタイトルどおりのメッセージを送っていますが、これは自分に対しても歌っているんじゃないのかなって。

そうですね。すべてを整えようとして、かえって身動きが取れなくなってしまうこともあると思うので、トライする順番というか、すべてを整えなくてもいいから、とりあえずやってみたら何か感じることもあるだろうし、まず前に進むことにトライしてみるのがいいんじゃないかなって。

-曲を作っていると、どうしても完璧主義に――

なりがちですよね。でも、不完全さが余白になっていくというか、90年代のオルタナ・バンドを時々思い出したように聴くんですけど、みんなそんなにうまくないなって(笑)。けど、そこに良さがあると人は感じるものだから、そういうものを愛せるように......普段は、そういうものをいいなと思う心も持ち合わせている人も多いと思うんですけど、自分のことになるとそういう心って見失いがちだなって自分も感じるので。そこを自分に置き換えられたらいいよねって思いますね。

-その余白の部分を、信頼しているメンバーに任せてもいいんじゃないかっていう。

そうですね。「Better Man」のサビは、こんなふうになると思わなかったですね(笑)。最初WATARUが作ってきたデモを聴いたときは、"なんだこれ!? 不思議で面白い"ってなって、"なんか聴いたことがあるけど、なんなんだろう?"ってレコーディングまで全然わからなくて、録ってから"あぁ、WEEZERみたいだ"って。サビのギターの感じが。

-言われてみると、たしかに。では、各曲の音楽的な聴きどころを簡単に教えていただけますか? 「What's Gonna Be?」はリズムで楽しませたいとおっしゃっていましたが。

あと、ちょっとキテレツな感じというか、FIVE NEW OLDの今までの感じとはちょっと違うかもしれない。聴いてもらったら、らしさはもちろんあるんですけど、間奏はN.E.R.DとかGORILLAZとかのへんちくりんなリフを意識していて、そういうところも面白いんじゃないかな。「Please Please Please」は単純に聴く人が聴いたら懐かしいんじゃないかと思います。80'sとか90年代の初期の感じ? ちょっとクサい感じというか、トレンディな感じを楽しんでもらえたらいいかな。「Better Man」は、メロも結構気に入っていて、WATARUがつけてくれたサビのアレンジの奇想天外さもあるけど、スタジアムっぽいロックの大きなサウンド感もあるので、そこが聴きどころかなと。あと、ギターのリフ。あれ、1本で弾くのは難しくて、ライヴではみんなで合わせ技でやるんですけど、そこも楽しんでもらえると思います。「Don't Try To Be Perfect」が一番、トラップっぽさを含め、2018年~2019年っぽい音感だとは思うんですけど、メロディはすごくオーセンティックなので、メッセージとサウンドの雰囲気は一番楽しんでもらえるんじゃないかな。この曲もライヴでやるとすごく大きくなりそうですね。歌詞も一番FIVE NEW OLDっぽくて、ポップ・ソングなんだけど、ちょっと問題提起がある(笑)。

-問題提起は毎回あるじゃないですか(笑)。

そうですね(笑)。"こんなんでいいのかよ?"っていうのは常にあるので(笑)。"こんなんで生きていくしかないんだろうけど、こんなんでいいのかよ?"っていうのは。

-それが曲や歌詞を作る――

原動力にはなっていますね。こんなに技術を含めいろいろなものが進歩しているのに、なんで人間はこんなに成長しないんだろうって。それは自分も含めてですけど。"大衆は首のない怪物だ"ってチャップリンが言ってたみたいなことって未だに変わらない。それがSNSを通してより自分たちの手元に目に見える形で現れるわけですけど、そこに対して"言いたいことはあるぜ"っていうのは常にあります(笑)。バンドを始めたときからあるんですよ。でも、そのときは身近なことしか書けなかったけど、より多くの人の耳に届くようになってくれば、"自分はこう思うぜ"ってこと以上に、何かふと考えるきっかけというか......。頭を抱えて、自分の日々の生活もままならないほど世の中のことを考えて生きていたら、余白がなくなってくるけど、ふとした瞬間に思うってことだけでも全然違うんじゃないかって。むしろ、そういうことを言いたいというか、ちょっと考えてみようよっていう。たぶん、そこが大事なのかな。

-ちょっと考えてみるって行為も、FIVE NEW OLDがずっと掲げている"One More Drip=生活を豊かにすること"のきっかけになると。

自分だけじゃ解決できない問題もたくさんあるし、自分の生活の中にもいろいろなことがあるし、そんなに白黒はっきりできないわけで。でも、自分のことだけ考えるっていうのはたぶんそれはそれで物足りないと思うし、ちょっとした気づきとか、ちょっと立ち止まって考えたりすることとか、ちょっと想像してみることとかの積み重ねが、結局は何かが大きく変わることに繋がるんじゃないかな。ひとりで世界を変えようなんて、みんながスーパーマンじゃないわけだからできない。直接は、私は世界に関わっていないと思うような些細な行為でも、何か変えていくきっかけになるっていうふうに、希望論者みたいに思っている部分はあって、そういう意味ではすごくファンタジックなところはあるかもしれないんですけど(笑)。

-「Don't Try To Be Perfect」でも"Hope"と繰り返し歌っていますね。さて、リリース後は"FIVE NEW OLD ASIA TOUR 2019"で、5月より過去最大キャパとなるマイナビBLITZ赤坂を含む東名阪公演と続くわけですが、最後にその意気込みを聞かせてください。

前回思った、誰ひとり置いてけぼりにはしないっていうのは大前提としてあるんですけど、その前に海外に行って、言葉が通じないなかでも誰ひとり置いていかずに自分たちの音楽をどれだけ届けられるのか。もちろん国内とは環境が全然違うと思うので、そういう意味では僕たちもタフになって帰ってくると思います。それを経験してから立つ舞台なので、よりみんなに深く刺さるライヴができるんじゃないかな。そういうふうに思ってます。だから、今回のEPをしっかり聴いて、海外の人たちに負けずに歌ってくれると嬉しいな。僕たちもしっかりと届けるし、みんなの声も聴きたいし、もっとコミュニケーションを取れたらいいですね。そういえば、BLITZって2階席があるじゃないですか。高校生のころ、カラオケでふざけて"2階席!"って言ってたんですよ。それをついに本当に言うのかと思うと、マジ、ウケるなって(笑)。