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INTERVIEW

Japanese

Drop's

2016年05月号掲載

Drop's

Member:中野 ミホ(Vo/Gt) 荒谷 朋美(Gt) 小田 満美子(Ba) 石橋 わか乃(Key) 奥山 レイカ(Dr)

Interviewer:松井 恵梨菜

-今回収録されている、初の映画主題歌2曲についてもお聞かせください。まず、主題歌のお話をもらったときはどんなお気持ちでしたか? 実際に主題歌を書き下ろすという形で映画に関わることができた今の心境も教えてください。

中野:私自身、映画が好きで普段からよく観ていて、映画音楽にも憧れがあったので、お話をいただいたときはすごくワクワクしたし、嬉しかったです。自分やメンバー以外の人と関わり、ひとつの作品を作り上げることは刺激的で、新たな発見もあり、素敵な経験でした。作って良かったなあと思う曲になりました。

荒谷:いつか映画作品に関われたら、と思っていたのでとても嬉しかったです。みんな気合十分って感じでデモ制作に取り掛かりました。実際に映画館で最後に自分たちの曲が流れてきたときは、なんだか緊張もしたしすごく感慨深かったですね。

小田:主題歌に決まったときはみんな歓喜でした(笑)。それも2作ともほぼ同じ時期にお話をいただいたのでとても嬉しかったのと同時に、背筋が伸びる感じというか......。2作とも余韻がとても大切な映画だと思うので、"無伴奏"が公開された今、それを担う責任を感じてますし、映画を観た方にもDrop'sの曲で良かったと思ってもらえたら嬉しいです。

石橋:自分たちが他者の作品にどのように携わっていけるのか、不安でもあり、楽しみでもありました。台本や映像などを見せていただいて、自分の中でのイメージを音にするのに、普段の曲作りよりもこだわりも多かったので、思い入れが強い2曲になりました。

-秘密の恋に揺れ動く男女の物語が描かれた"無伴奏"ですが、最初に映画のストーリーに触れたとき、どう感じられましたか?

中野:最初に原作を読ませていただいたときは、1960~70年代という時代背景や学生運動など、自分が経験していない大きな波や激しさを感じました。ですが、映像になったものを見せていただいたときに、時代なんて関係ないということと、人の愛の強さや青春のキラキラとした美しさもまた、強く感じました。

-「どこかへ」は歌とアコースティック・ギターのみでシンプルに展開する前半が印象的でした。映画のどんな部分を表現しているのでしょうか?

中野:矢崎仁司監督から、"映画のことは気にせず、たったひとりに向けたラヴ・ソングを書いてほしい"というお話をいただいて、私個人のつぶやきのように歌を作りました。ですがこのアコースティック・ギターの三拍子は、映画の映像を最初に見せていただいたときに、なんとなく湧いてきたものです。

-次に、性暴力被害を取り上げた映画"月光"の同名主題歌は、孤独と一筋の光が描かれた歌詞、ピアノの伴奏によって終始物悲しい曲調に仕上がっていて、Drop'sの新しい一面を見た気がしました。この楽曲についても、映画のストーリーに触れたときの感想や曲に込めた思いなど教えてください。

中野:最初に台本を読ませていただいて、重いテーマに取り組んでいる映画だと思ったし、どのように寄り添うのがいいのか悩みました。でも、他者と関わろうとすることで、光が少し見えるのではないかと考えて、このような曲にしました。監督から、ピアノをフィーチャーしてほしいとのお話があり、ピアノの音色にはすごくこだわりました。

石橋:台本を読ませていただいて、衝撃を受けました。誰にも言えない強い感情が渦巻いていて、最後に少し希望が見える感じが伝わればいいなと思います。バンドが入る箇所からはイントロとピアノの種類を変えて録音しました。フレーズの音の使い方もこだわっています。

-アルバム・タイトルと同じ「ドーナツ」という曲が収録されていますが、アルバムと曲、どちらのタイトルが先にあったのでしょうか? アルバム・タイトルを"DONUT"にした理由もお聞かせください。

中野:曲が先にありました。去年の夏ごろに、弾き語りのために作った曲です。アルバム・タイトルは"からっぽ"を表したくて、この楽曲もあったので"DONUT"というワードを入れて考えていたのですが、ばしさん(石橋)が"DONUT一語がいい!"と言っていて、それもシンプルでいいなあと思い、"DONUT"になりました。かわいいし気に入っています。

-「ドーナツ」は、心に穴の空いた主人公を"ドーナツ"に喩え、"涙"が本当の自分だというあたりに、人の弱さや本音がうまく比喩表現されていると感じました。これは中野さんご自身のことを歌われた曲なのでしょうか?

中野:はい。心に穴が空いたというか、本当はいつも周りに影響されているだけで自分の中身はからっぽなんじゃないかと思って。だけど涙が流れるときは、自分の心が本当に動いているときだなあと思ったので。それが誰かと関わったときだともっといいなと思いました。

-「ドーナツ」では"涙だけが わたしなの"と出てきますが、Track.4「ダージリン」では"ラストシーン"で"ひとすじの涙が こぼれた"とあり、Track.10「部屋とメリー・ゴーランド」では"この涙/どこへ行ってしまうの?"と歌っており、"涙"の描き方がとても印象的でした。中野さんにとって"涙"とはどんな存在なのでしょうか?

中野:自分の心の素直な部分がふと溢れるような、失くしたくない大切なものです。