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INTERVIEW

Japanese

a flood of circle

2016年03月号掲載

a flood of circle

メンバー:佐々木 亮介(Vo/Gt)

インタビュアー:沖 さやこ

-佐々木さんがじゃんけんで勝っていたら......どうなっていたでしょうね。

俺が勝ってたら岡ちゃん(※AFOCの元ギタリスト、岡庭匡志。メンバーの協議のうえ2009年10月に脱退)がヴォーカルだったかもしれない(笑)。でもAFOCのそういう歪さも含めて愛しいものだと思っているし、今は"これが俺たちのスタイルだ"と言えるんですよね。メンバー・チェンジの歴史を売り物にしたいとは思わないけど、それがあったからできた曲があるのは確かだからそれは堂々と背負っていきたい。そもそもブルースやロックンロールには100年の歴史があるから、それも全部背負って先に進みたいんですよね。

-おっしゃった"先"というのは今回言うと、新曲「青く塗れ」(DISC 2:Track.1)ですね。初回盤でしか聴けないのはもったいない曲です。DISC 1に入れても良かったのでは?

んー、「青く塗れ」は「花」よりもリラックスして言いたいことをバッと書ききったという曲だから、「花」をメインにしたベスト・アルバムという方向性とはちょっと違うなと思ったんですよね。だから初回盤のDISC 2は新曲を表題にしてリテイクが3曲入っている4曲入りのニュー・シングルがついてくるようなイメージにしたくて。挑戦すらもリラックスして楽しんでできているので、いいモードだなと思っています。

-AFOCは強い信念がサウンドにも通った曲が多いので、こういう"ぶちまけてやれ!"という解放感のあるテンションは新鮮ですね。とてもキュートで遊び心が効いた曲だと思いました。歌詞もそうで、"俺の人生お先真っ青 バケツに手を掛ける"というラインは秀逸だなと。

4thアルバム(2011年リリースの『LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL』)ではお先真っ暗でも勝負をして立ち向かっていく曲が増えてきたんですけど、3rdアルバム(2010年リリースの『ZOOMANITY』)くらいまで本当にどうなるかわからない、けど転がっていくだけ......というお先真っ暗な状態で。「青く塗れ」は"世界中どこでも自分のカラーをぶちまけにいく"というテーマで書いてたので、前向きにどんどんなっているという感じがしてて。"お先真っ青"は結構それを象徴している歌詞ですね。10年やってきて今が1番オープンで1番青いなと思うから(笑)。そういうモードが自然に出てるんじゃないかな。いっぱい蹴躓いて転がってたバンドが今が1番健康的というのは幸せだなと思いますね。

-そうですね。「青く塗れ」は、『I'M FREE』(2013年リリースの5thアルバム)以降によく見受けられる、佐々木さんのトーキング・ブルースとラップの中間の、語りながら歌うあのスタイルのひとつの到達点と言えますね。

そろそろトーキング・ブルースでもなくラップでもないあれに名前つけようかな(笑)。俺は自分の声をそんなにいい声だと思ってないけど武器だとは思ってるから、歌い方やリズム、フロウはいろいろチャレンジしていきたくて。ラップはどうしても英語の発音や雰囲気に寄ってしまうから、そうじゃないものにしたい。普通に喋っている日本語のリズムは、他の外国の言葉では絶対に表現できないものがあるんですよ。それをもうちょっと見つめなおしてもいいんじゃないか?と思って。しかもロックンロール・バンドがそれをやるというのが俺にとって大事なトライアルになっている。「青く塗れ」はそれを全開でやりましたね。実は最初メロディがあったんだけど、ぶっ壊して言葉をぶちこみました。

-DISC 2に収録されているTrack.2「Miss X Day」、Track.4「God Chinese Father」は再録。潰れた音鳴りが印象的な「God Chinese Father」はかなり初期の曲だそうですね。

インディーズ・デビュー前に出してたCD-Rに入れてたのが、デビュー盤にも入っている「ブラックバード」、「308」と、この「God Chinese Father」だったんです。10年分全部見せるベスト・アルバムだから本当に特盛にしたくて、あの幻の曲すらも入っていたらいいなと思って。昔はもっと小賢しいことをしていたんですけど(笑)、リアレンジしてその当時とは全然違う曲になりました。......『花』のカップリングの「鬼殺し」で根詰めて作るのではない一発録りの良さを掴んだんですよね。当然クリックも聴かないしヨレまくるんだけど、この3人で5年やってきたから培われてきたバンドのグルーヴによって生まれる勢いがあるなと思って。今回の「God Chinese Father」はそれをアップデートしたものですね。アンプもドラムも全部同じ部屋に入れてマイクを立てて、ぎちぎちで鳴らしまくって録ったんで、かなりイっちゃってる感じの音になっているんじゃないかな。部屋鳴りも入ってまさに"ガレージで録った音"というか。

-そしてこれまでスタジオ・レコーディングを避け続けていた、ライヴでしかお耳にかかれない名曲「プシケ」(DISC 2:Track.3)も遂にスタジオ・レコーディングされましたね。

そうなんです。「God Chinese Father」の再録と同じくらい勇気がいりましたね(笑)。「プシケ」はライヴで"メンバー紹介"をぶちまける曲で、結成当初からあるんですけど"ライヴでしか聴けない曲があっても面白いじゃん"という発想で今までずっと録ってこなかったんです。でも10周年だからこそライヴとは違う、レコーディングでしかできないアレンジで「プシケ」を録れないかなと思って。ライヴでメンバー紹介をする部分はフィードバックを重ねてノイズで和音を鳴らして、その音の層がふっと消える――昔だったらメンバー紹介なしで録音する勇気はなかったかもしれないけど、今はレコーディングでしかできない緊張感を生み出すという方法も面白くできましたね。気に入ってます。

-DISC 3は裏ベスト的な選曲で佐々木さんの弾き語りが収録されていますね。佐々木さんがすぐ近くで歌っているような感覚が心地よかったです。

隣で歌っているような生々しい感じにしたくて、部屋のスピーカーで聴いてもらうシチュエーションを考えて音作りにめっちゃこだわりました。ブラジリアン・ファンクをやってるSeu Jorgeというミュージシャンがいるんですけど――彼は俳優もやっていて、俺の大好きなWes Andersonというアメリカの監督の"ライフ・アクアティック"という映画に出演しているんですよね。その映画の中で彼がDavid Bowieの曲をクラシック・ギターで演奏して、ポルトガル語で歌っているんですよ。何を言っているのかわからないんだけどポルトガル語にしか出せない雰囲気があってすごく変わったグルーヴになっていたんですよね。サントラを聴いてみても録音に余計なリバーヴがないし、目の前で弾き語りをしてくれてるような音像だったので、そういうものは日本であまり聴いたことがないなと思ってそれにチャレンジしてみました。