Japanese
Poet-type.M
2015年07月号掲載
Member:門田匡陽
Interviewer:石角 友香
現行のバンド・シーンに対してきっぱり"NO"を突きつけ、ファンタジーという表現が持つ想像力の強さを前面に出す門田匡陽のプロジェクト、Poet-type.M。2015年1年をかけて彼が創出する架空の国"A Place, Dark & Dark"の第二章となる夏盤が到着した。この新作はもとより、彼のキャリアと価値観を集大成するイベント"美学の勝利"についても訊いた。
-"春盤"(前作『A Place, Dark & Dark -観た事のないものを好きなだけ-』)をリリースしてみて手応えはいかがでしたか?
春盤でみんなが1番話題にしてくれたのが「救えない。心から。(V.I.C.T.O.R.Y)」(春盤:Track.4/詳しくは前回インタビューを参照)だったんですよね(笑)。それが意外半分、"まぁそうだよな"って気も半分してるんですけど。ああいうことを言う人にやっぱり飢えてんのかな?って気はちょっとしましたね。あと、春盤はPoet-type.Mの新しいミニ・アルバムだったんだけれども、僕がこれまでやってきたBURGER NUDS、Good Dog Happy Menでの表現や経験がいい具合にPoet-type.Mで昇華されているという印象を受けた人が多かったみたいで。それは良かったなと。
-夏盤ですが、春盤で門田さんが自分に例えた"サーティーン"が人と出会い始めたなという印象がすごくしたんですが、どうでしょう。
これは大いなるネタバレになっちゃうんですけど、春盤ではサーティーンが旅立ったところなんですね。それが夏盤でいったら、サーティーンは「唱えよ、春 静か(XIII)」(春盤:Track.1)の直後の状況が今回のTrack.1「バネのいかれたベッドの上で(I Don't Wanna Grow Up)」だったりするんです。で、実はこの夏盤の中にはいろんな年の夏が入っていて。おそらくそれから5年から10年経ったのがラストのTrack.6「ダイヤモンドは傷つかない(In Memory Of Louis)」になってるんです。
-そんなタイムスパンが?
はい。なので「バネのいかれたベッドの上で」での一人称"僕"は、おそらくその「ダイヤモンドは傷つかない」で転落死してしまったルイの視点なんです。ルイとサーティーンの物語なんです。だからその「バネのいかれたベッドの上で」の副題が"I Don't Wanna Grow Up"なんだけど、訳すと"大人になんかなるもんか"ですよね。で、大人になんかなるもんかっていうふうに思ってるルイが皮肉にも「ダイヤモンドは傷つかない」で大人にならないで終わるというか。ま、そういう物語を作ったのはなぜかというと、僕にとっての夏のイメージって"追悼"ってイメージがすごく強いんです。
-それはどこから?
夏って子供のころの方がポジティヴな季節じゃないですか。夏休みがあって。でも僕はその夏に友達同士で海行ってはしゃいだりとか、フェスに行って楽しんだりとか、そういう思い出はまったくないんです。下町生まれだから余計そうなのかもしれないけど、1ヶ月のあいだ、ずーっと追悼イベントがあるんですよ。花火大会ももともとは、江戸の大火の被害者を弔う意味で始まったもので。そのあとに灯篭流しがあったり。僕はボーイスカウトやっていたので、そういったものの警備としていつも入っていたんですね。
-そうした行事の背景をご存知なんですね。
はい。で、そのあとは慰霊堂清掃奉仕が夏のあいだはあったりして。なので、僕はそういったイベントごと、お祭りを楽しいと思ったことは1回もないんですよ。いつもそれを真に受けて真剣に考えちゃうんです。なので、花火を見るととても寂しくなるし、慰霊堂清掃奉仕に関しても、そういうことがあって今の自分がいるということを常に考えてしまっていたので、子供ごころに夏の1ヶ月って、ずっと追悼の1ヶ月だったんですよ。なので"Dark & Dark"の夏を表現するにあたって、自分にとっての夏ってなんだろうな?って考えたときにも真っ先にこういう物語ができて、変わらざるを得なかった。だから僕のことを知ってる人は"門田、夏をどうすんだろ?"って思ったかもしれないんですけど、でも夏は......僕が思う夏を色濃く表現できたなと思います。
-ただサウンドが示してるものはブライトネスが高いし、生命感があると思ったんですが。
うん。例えば1曲目の「バネのいかれたベッドの上で」とか、Track.5「瞳は野性、星はペット(Nursery Rhymes ep2)」とか、そういうコミカルな曲とか、そういったものはより躍動感を感じられるようにアレンジしたいっていうのはありました。それは僕もそうだし、ならやん(楢原英介)も今回、サウンド・プロデュースで一緒に作ってくれて、彼の功績が大きいと思います。今までだったら、ここまでビート感は出なかったと思うんですよね。僕はどっかで少し甘さが残ってるのが自分のサウンドだと思ってたから。なので、今回はわりとオケの音に関しては、僕が今まで作ってきた音楽の中で1番コントラストがはっきりしたっていうのはありますね。
-タイトルのことをお聞きするんですが、どこからこの言葉を発想したんですか? ある種の慣用句ではありますが。
ダイヤモンドっていろんなメタファーに使えると思うんですけど、"沈黙は金、雄弁は銀"ってことわざがあるじゃないですか。今回の"ダイヤモンドは傷つかない"は、まさにそこで、実は今回の夏盤の裏テーマには"情報"って言葉があるんです。で、情報ってものに関して歌ってる曲が何曲かありまして、Track.2「その自慰が終わったなら(Modern Ghost)」もそうですし。
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