Japanese
festival M.O.N -美学の勝利-
Skream! マガジン 2015年12月号掲載
2015.10.24 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 石角 友香
"自分だけじゃない、この8人の価値観が間違ってないこと、生き方を祝福するためのイベント"と、夏の時点で門田匡陽は語っていたが、まさに有言実行、いや、それ以上にお互いの生き方を認め合う人間同士が作り上げる、何かとても温かく、時に嫉妬を覚えるほどの"確かなもの"が、この夜にはあった。
"festival M.O.N -美学の勝利-"と題された、門田が所属してきた(もしくは現在進行形でしている)BURGER NUDS、Good Dog Happy Men、Poet-type.Mのライヴを一夜にして見せるツアーもこの日の東京公演でファイナル。BURGER NUDSは昨年、再結成し、すでにライヴも行ったとはいえ、この日、久々の邂逅を果たしたファンも多いようで、フロアからも再会の声がそこかしこから聞こえてくる。
内なる興奮が立ちこめるムードの中、ステージの暗幕が開くと、BURGER NUDSの3人、門田匡陽(Vo/Gt)、丸山潤(Ba/Cho)、内田武瑠(Dr/Cho)が歓声と拍手に迎えられ登場。1曲目から激烈なフィードバック・ノイズと爆裂するビートが髪の毛を振動させるような「ANALYZE」でスタート。乾ききっているのになんというロウ(ナマ)感!PAを通さないスタジオライヴを聴いているような体感だ。極端に音数が少なく、1音1音、気を緩めたら最後、瓦解しそうなトライアングル。でも、そこには緊張感とともにこの3人ならではの無敵感が漂う。
"「festival M.O.N」へようこそ、BURGER NUDSです"と門田が言えば、丸山は丸山でマイペースに"帰ってきたね。テンション低くてすいません"と笑わせる。中盤にはまだ音源化されていないがすでにファンのあいだでは"誰も頼らないで良い 君は独りで良い"という歌詞がある程度、浸透している新曲「LESSON」が披露される。新旧いずれも今のBURGER NUDSの演奏ではあるのだが、若干ミュート気味なコードや、よく"歌う"ベース・ライン、有機的なグルーヴを持つこの曲は特に再結成後の彼らの有り様がよく見える。MCでは楽屋での出演者の和気あいあいとしたムードや、"始まったから今日でこのツアーがもう終わってしまうのが寂しい"という門田の言葉に、今ならではのフラットな心情が窺えた。そしてもうひとつの新曲「絶滅危惧種のペンギン達が可哀想」という、らしからぬタイトルを持ったそれは、少しアブストラクトでどこかPoet-type.Mの表現にも似たニュアンスに新鮮な驚きがあった。後半はグッとテンポを落としたダークな「AM 4:00」、透明感のあるアルペジオに磨きがかかった「MARCH」など、このバンドがずっと性格や資質として持ち続けている青臭さが、もっと自覚的に深い青になっていくような力強さを演奏で実感させ、ラストは最初の音源である1stシングル『LOW NAME』の1曲目、「ミナソコ」。10代の破壊衝動やグランジへの憧憬は少なくとも彼らにとって"はしか"のようなものじゃなかったのだ。"嫌なものは嫌抗体"を内蔵してしまった、大人の3人による今のBURGER NUDSは"強い"。年内に新作を録音できるかも?というニュースにも引き続き期待したい"ところだ。
門田のナレーションが流れ"夜しかない街"への誘いとともにPoet-type.Mの面々が登場。1曲目から先日リリースされたばかりの『A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-』のダークでデカダンスの薫り漂う「だが、ワインは赫(Deep Red Wine)」。ストリングスやSEは同期だが、生音の演奏との違和感はない。そもそも舞台設定がある方がその世界観に没入しやすいPoet-type.Mの作品性にマッチしているようにも思える。それにしても楢原英介(Gt)のイマジネーション溢れるフレージングが素晴らしい。これまでリリースされた春~秋盤からまんべんなく選曲されているのだが、メッセージとしては辛辣な楽曲が多く見受けられる。特に優しい声で馴れ合いのシーンに対する嫌悪を淡々と発する「救えない。心から。(V.I.C.T.O.R.Y)」のポスト・パンク的なビートと輝度の高いギター・サウンドの"冷たさ"は、音楽的なレンジの広さや自由度を誇るPoet-type.Mにあっても、ひとつ音楽的な軸になっているように思えた。続く、「バネのいかれたベッドの上で(I Don't Wanna Grow Up)」もその質感を湛えながらもトライヴァルなフロアタムが躍動感を加えていた。そして、軍靴の響きのような不気味なSEから始まった「神の犬(Do Justice To?)」。ブレイク的なシーケンスに水野雅昭(Dr)の生のビートが切り込み、加えて伊藤大地が加わり意表を突くツイン・ドラムが展開。腕組みしてサビを歌う門田の姿に"支配者"を揶揄した印象を抱いたのは拡大解釈かもしれないが、単なるドラマー・バトルとは対極なある種の戦闘状態すら想起さえるツイン・ドラムの迫力も相まって、ライヴのハイライトになっていたのは間違いない。興奮の中にも空恐ろしさを忍ばせる、それはこの8人に共通する意識が成せる技なのだと思う。大きな歓声と拍手を受けた後は、秋盤の中でもメロウネスを感じさせる「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」、そして"A Place, Dark & Dark"のテーマ曲めいていて、しかもGood Dog Happy Menからの流れも感じさせる架空の国の楽団ぽくて、自由に闊歩するようなビートの「楽園の追放者(Somebody To Love)」が、ラストに配置された。MCもなくフィクショナルに展開するPoet-type.Mのライヴだが、門田の表現が過去から地続きであることを実感できたことは大きいし、門田、楢原、宇野剛史(Ba)、水野のライヴバンドとしてのタフさも頼もしい進化だった。
そして今回のツアーのみの限定再結成ということで、ファンも素直に大歓迎ムードの中、トリのGood Dog Happy Menが往時の衣装で登場すると、大人になった4人だが同級生パワーというか、遠慮のないイノセンスが溢れてワクワクしてしまう。1曲目はGood Dog Happy Menならではの"街=the GOLDENBELLCITY"を舞台にした物語の船出のナンバー「Nightmare's Beginning」。チェンバー・ポップというお手本なしに、THE BEATLESや70年代のDavid Bowieが持っていたロック・バンドのケレン味さえも、この4人だからこそ表現できる――さしずめやんちゃなパイレーツは怖いものなしだ。人力ブレイクビーツなツイン・ドラムのイントロに大きな歓声が上がった「Bit by Bit」は、門田だけでなく、内田武瑠や韮沢雄希(Ba)が重ねる声やコーラスが、シンプルに複数の人間が合奏する楽しさをどんどん膨らませていく。少しレア・グルーヴの味わいもある「Pretty little horses」では伊藤のコンガがグルーヴに新たな色彩を加える。一気に祝祭感が広がるフロアに向けてというか、メンバー同士の雑談というか、これまでとはまったく違う空気がステージ上に流れる中、当初、冗談交じりに伊藤大地がこのイベント名に"お~い、門田祭り"を提案していたことなどで、さらに場があたたまる。そこに内田のホイッスル、そしてドラム・バトルに自ずとクラップも大きくなる「そして列車は行く」、シャッフルのビートをすべての楽器、4人の躍動感そのもので表現する「Apple star storyS」でもまた、全員が自由に歌をぶっこんでくる。決して大げさじゃなくロンドンにMUMFORD & SONSが、コロラドにTHE LUMINEERSがいるのと同じか、それより粋なぐらいGood Dog Happy Menというバンドが東京に存在していることが嬉しくなってくる。かと思えば、例えばPRIMAL SCREAM がカントリー・ブルースに傾倒していたニュアンスに近い「ユートピア」など、ルーツ・ライクな音楽がトラディショナルへの憧憬に留まらないところが、Good Dog Happy Menらしいはみ出し方なんだと思う。余りにも楽しい時間は早すぎて、ラストの「前夜祭」のエンディングを再び内田と伊藤のツイン・ドラム・バトルでプリミティヴに彩ると、このイベントの副題"美学の勝利"が理屈抜きで腹落ちした。"ひとりで立っている"人間同士が、ひとつの曲に向かって息を合わせる姿を見ていると、心から"いいな"と思える。もしかしたら"生きる"ことも同じなんじゃないだろうか。
止まないアンコールに応えて再登場した4人。6年ぶりの邂逅とは思えないマジック・タイムがここには存在していた。特にPoet-type.Mにも引き継がれている"the GOLDENBELLCITY"の登場人物を描いた「黄金の鐘」は、今再びGood Dog Happy Menを聴く必然も表して、アンコールにセットされたんじゃないだろうか。3バンドおのおのが触発し合ったからこそ生まれた、エモーション。そして副題に偽りなしの実感を得たオムニバスとなった。
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