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INTERVIEW

Japanese

SEBASTIAN X

2015年03月号掲載

SEBASTIAN X

Member:永原 真夏 (Vo)

Interviewer:天野 史彬

-(笑)でもやっぱり、"ただいま"や"おかえり"という言葉は、さっきの話に出たような、空気感だけじゃない、言葉に出すからこそ生まれる関係性を象徴するような言葉だと思うんです。だから今、永原さんからこういう歌詞が出てくるのはすごく納得できるし、もっと言うと、永原さんはSEBASTIAN Xという居場所から、家に帰ろうとしているようにも思えてきて。

確かにそうかもしれないなぁ......。自分が帰る場所っていうのは、大人になるにつれてできてくるんですよ。自分が一緒に作っていこうと思える人間関係が大人になるにつれてできてきて、それが新しいホームになっていって。そうすると、やっぱり外に冒険をしに行きたくなって。だけど、いつの間にか"SEBASTIAN Xは冒険をしに行く場所"ではなくなってしまっていたというか。"SEBASTIAN Xが基地みたいになっちゃった"っていうことなのかもしれないです。バンドは、本当は冒険する場所じゃなきゃいけなかったのに。それは今初めて気づいたかも。メンバーみんなが持ち寄って冒険をする場所でもあるべきだと思うんです、バンドって。最初はそれが無意識にできていたけど、いつ間にか自分たちの基地みたいな意識になってしまって。自分たちが持ち寄る場所というよりは、基本の活動みたいなノリになってしまったのかも。

-あぁ~、なるほど。さっき永原さんはSEBASTIAN Xを組んだとき、実際の家庭の外にホームが欲しかったって言っていたけど、でも同時に、バンドは冒険の場でもなければいけなかった。でも、もう冒険ができなくなってしまった。そして、永原さんには新しいホームも、大人になるにつれて自分で作れるようになっていった。

うん、そうかもしれない。それはひとつあると思う。でも、あくまでひとつ。それだけじゃないんですけどね。夫婦みたいに、旦那が浮気したとか、莫大な借金を背負ったとか、暴力を振るうとか、具体的な何かがあったら、みんなを納得させられる離婚の理由になったと思うんですけど。でも具体的な理由がないけど、離婚する人たちもたくさんいて。それはバンドも一緒だし、私たちは後者でしたね。たくさん理由は思い浮かぶんですよ。ああだった、こうだったって。でも、それは全部、決定打じゃない。決定打は、空気感で4人がそれを感じたっていうことでしたね。

-わかりました。ただ、さっきも言いましたけど、この「こころ」という曲の素晴らしさは、永原さんの新しいモード、そしてこの先に歌われるべき歌があるっていうことを示していることで。それは永原さんにも見えているし、歌いたいっていう欲求はまだまだあるんですよね?

うん、あるある。あります、それは。その欲求に忠実に動きたいなっていう想いはすごくあります。やっぱりバランス云々より、そこの欲求にもっと忠実でありたいですね。......でも、こういう自分の新しい気づきみたいなものを歌詞に落とし込むところまでは、このバンドでやり遂げたかったのかもしれない。SEBASTIAN Xの最初の自主盤の『LIFE VS LIFE』って、あれはもう"暇だ暇だ"しか言ってないんですよ。暇だから世界規模に目を向け出す、みたいな。まぁ、暇じゃなくても世界に目を向ける人はいますけど(笑)、私の場合は暇すぎて、広い世界に行ってファンタジーに行って、そこから未来を見出して、いろんな場所に行って、最終的にこの『こころ』に辿り着いて......なんだか、『LIFE VS LIFE』から1周した感じがするんです。『LIFE VS LIFE』って、自分の中ではワンルームのイメージなんです。ワンルームで行われていたことを歌ったミニ・アルバム。でもそこから先、いろんな曲を書いたけど、ずっとワンルームには戻らなかった。ワンルームの曲は書いてこなかったんです。でもこの「こころ」は、全然違う形でワンルームに戻ってきた感じがして。

-家に帰ってきたんだ。

そうそうそう。だから、すごく面白いなって。ほんと、いっぱい作っておいてよかったなって思いますね。1年に1枚作品を作って、しかも20歳~27歳って、1番考え方も変わる時期じゃないですか。それが全部作品としてドキュメントされているのって、ほんと面白いなって思います。リード曲だけでも聴いていくと、ほんとにひとりの人間の成長を如実に、毎年毎年アルバムを作ることで表現できてきた、人格形成の渦中をドキュメントできてきたんだなって思うんです。それはほんと、バンドじゃないとできないので。プロデューサーがいてもできないし、商品としてパッケージされてもできなかったことだから、バンドじゃないとできないことができたなっていう感じもありますね。もちろん、そこから続けていくのもバンドのよさだけど、それはもう、私たちはタイミング的にできなかったんでしょう(笑)。

-変な訊き方かもしれないですけど、SEBASTIAN Xを活動休止させることによって、永原さんは何を失い、何を得るんだと思います?

何を失うんだろうか......やっぱり、バンドって盾でもあると思うので。なんやかんや言って困ったらみんなで責任を負えるし、都合が悪いことがあれば、ちょっと隠れることができる安心感はあると思うんですね。でも、そういう安心感を失って、自分としての表現を得たいなって思ってます。

-わかりました。僕もとても長い間インタビューさせていただいていたので、今回の活動休止についてはいろいろと考えたんです。ただ、やっぱり最後には納得せざるを得ないというか、「こころ」を聴いても、こういうことだったんだろうなって思って。だから僕が言えるのって、"気をつけて家に帰ってください"ってことくらいなんですけど(笑)。その果てに歌があれば、また聴きに行けるし。

ははは(笑)。うん、うん。

-じゃあ、こうやってメディアを通してSEBASTIAN Xに出会っていった人たちも大勢いると思うので、読者に向けて何か言いたいことがあれば(笑)。

えぇ~(笑)......いや、みんないろいろ思ってると思うんですけど、"割と大丈夫だし、いい感じなので、今後ともお願いします"って感じですかね(笑)。......こととしてはネガティヴなことだし、いろんな人を巻き込んでいるので、そんなに適当なことは言えないんですけど。でも、ここまでポジティヴィティをコアにしてやってきたバンドのメンバーですから、将来的には今回の活動休止もネガティヴなことにはしないと思いますよ。ネガティヴなこともポジティヴにしていける力がある人たちだと思うし、"あのとき休止したのはよかったね!"って言えるような未来を作れるバンドだと思います、SEBASTIAN Xは。