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INTERVIEW

Japanese

The Mirraz

2014年09月号掲載

The Mirraz

Member:畠山 承平 (Vo/Gt)

Interviewer:山口 智男

-え、そうなんですか!?

実は「この惑星のすべて」もテンポを上げてて。あれももっと遅い曲だったんです。最初はBPM90とか100とかで10曲ぐらいで考えてて。だから、今回、アルバムに入れてない曲で、遅い曲がいっぱいある。作りながら、僕自身はそういう新しい要素だけで満足できるんですけど、聴いてくれる人や今の日本のシーンを考えると。それだけで勝負したとき、どういうふうに伝わるだろうって考えると――。当然、アーティストなんでエゴイスティックな部分って必要だと思うんですけど、自分のエゴだけになっちゃうとポップ・ソングをやる意味がない。それなら速い曲もやろうかって曲が変わっていったんですけど、今回、アルバムを作るうえでそういう葛藤はありました。本当は「レイトショーデートしよう」とか「世界一キレイなもの」とかみたいな曲を伝えたいんですけど、それを取っ掛かりにしちゃうと、伝わりづらいと思ったんで、まず「プロタゴ」みたいな曲から入ってもらって、アルバムを聴いたとき、「レイトショーデートしよう」みたいな曲もすげえいいなって思ってもらえたら、そういう新しいモードも伝わるんじゃないかなと考えました。全部を全部、いきなり新しいモードにしちゃうと、あっち行ったりこっち行ったりみたいに思われちゃうんで、今回はそれはやめてという感じですね。

-新しいモードと言うと、「i luv 日常」もそうですね。エレクトロニカっていっていいのかな。

もっとシンセが入っていてもおかしくないような曲なんですけど、あえてギターだけで、エフェクトを掛けてやってみました。The Mirrazってよく攻撃的なバンドみたいに言われるんですけど、その一因とも言える攻撃的な歌詞も自分が書きたくて書いていたかというと、そうではなくて、たまたまそういうものが目に入ったから書いていたんですよ。だから、そういうのがThe Mirrazですよねとか、そういうのを書いてくださいとかって言われると、そういうのを目にするのがイヤになってくるんですよ。人間の汚い感情が見えちゃってムカつく。だから歌詞にするみたいなことが多かったんですけど、書かなきゃいけないんだと思って、あえて見ようとすると全然見たくない。そんなの見たい人なんているわけないじゃないですか。そういうのを見すぎて、疲れちゃったんですよ。身近なものを見て、それを歌詞にするのがThe Mirrazって言われるんですけど、それなら人間の汚い部分ではなく、きれいな部分だけで歌詞を書いてもいいんじゃないか。今回はそういうところもこれまでと違いますね。

-ああ。前回、「この惑星のすべて」の時、生きていくうえで大事なものや心の大事な部分を本当は伝えたいとおっしゃっていたじゃないですか。今回、新作からもそれを感じたんですよね。

The Mirrazを聴いた人たちが未来に希望を持てるような部分ももうちょっと欲しくて。僕自身がすげえポジティヴな人間かって言ったらそんなことはなくて、むしろネガティヴな人間で、そういうネガティヴな人のための音楽っていうのももちろん必要なんですけど、そういう人たちが――。極論なんですけど、世の中クソだよねって思ってる人っていっぱいいるじゃないですか。もちろん、僕もそう思う瞬間はあるし。だけど、世の中クソだよね、だけど、もうちょっといいこともきっとあるよねってことが生きてるとわかる瞬間ってあるんで、そういうことがあるよって希望を持てるものを作りたかったんですよね。それをバンドとしてどう表現するかだと思うんですけど、その取っ掛かりが「プロタゴ」で、多くの人が感じてるに違いない葛藤を歌ったああいう曲から聴いてもらえれば、みんなも入りやすいと思うんですよ。

-多くの人が"そうだよね"って共感できることを歌っているんだけど、そこに畠山さん個人の想いが感じられるからリアルに聴こえるし、ウソ臭くないんですよね。

そう聴こえてたらよかったです。

-でも、ライヴなんかだと結構斜に構えてるから、なかなかそういうところが伝わりづらいってところはありますよね(笑)?

ああ、そうかもしれない。自分としてはナチュラルにやってるつもりなんですけど、イメージもあると思うし、あとライヴって、フェスなんかは特にそうなんですけど、MCする時間があまりないんですよ。押しちゃうとまずいから。そういうのを気にして、あまりMCしないんで、ちょっとコワいみたいに思われちゃうところもありますね。

-でも、逆に、"畠山さんって本当はすごくいい人なんですよね"って言われるのも変ですけどね。

ハハハハ。それはちょっとおかしいですよね(笑)。

-一方では、ハードというかヘヴィというか、ガレージ・ロック調の曲も聴きどころですよね?

アルバム全体を見て、バランスを考えたとき、もうちょっとハードな曲が入っていると流れ的にもいいよなってことなんですけど、The Mirrazってバンドにそういうものを期待してる人もすごくいるので、そういう曲もちゃんと作りたかったんです。

-今回、歌詞の内容が"物語の主人公になること"と"君に対する想い"という2つのテーマに絞られているような印象を受けました。

それはやっぱり、ちゃんと意思を持って生きてるにもかかわらず、世の中から無視されているみたいなところからの発想ですよね。自分の人生においては自分が主人公のはずなのに思いどおりにいかない、うまくいかないところがある。それは僕も常々感じてることで。