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INTERVIEW

Japanese

阿部真央

2014年05月号掲載

阿部真央

Interviewer:沖 さやこ

-(笑)このシングルのミソになっているのは、c/wの「疲れたな」が「Believe in yourself」とは真逆のベクトルを行く曲だということだと思うんです。人間誰しもどちらの面も持っていると思うし、この2曲を1人のアーティストが歌うことでリアルな人間像になっているなと。

そういう狙いは全然ないんですけど(笑)。「疲れたな」は数少ないストックをいろいろ聴いていて......この曲はデビューしてちょっとしたときに書いたものなので、5年以上前のものなんです。こういう書きかたは最近してないんですよね。すごく漠然としていて、何に疲れたのかも言っていない。だけどスッと、悲しみではなく"歌詞"が今のわたしに入ってきたんです。こういうストレートな曲の書きかたができた自分が今は羨ましくもあって。だから"あ、これだけ歌詞がスッと入ってきたということは、今歌っておいたほうがいいんだな"と思って。

-今の阿部さんにこの歌詞が入ってきた理由はなんだったのでしょう。

んー、全然わかんないんですけど......"疲れたな"って思うことも最近なくなってきて。疲れてるんですけど、もう対処法がわかるじゃないですか。疲れてきたら犬に癒してもらうとか、分散する対象も5年前より増えているし、自分で解決の方法もわかるから。バイオリズムが落ちるときは絶対にあるんですけど、すぐ復活する。それは上げる術を覚えたから。でもこのときはなにもわからなかったから、落ちたらずーっとしばらく全然抜け出せない、周りがわからない......そういうときに書いた曲なので。でも曲を書いているということは、究極に落ちているところから多少復活もしているはずなんですよね。今はこういう瞬間が日常にないので"ああ、こういう感覚は確かにある"という気付きに近いですよね。なんでスッと入ってきたか、理由は明確にはわからないですけど......多分"今のわたしにはないものだから"という言いかたがいちばんハマると思うんですよね。

-今の自分が持っていない昔の自分の心情吐露、これはどう歌おうと?

"こういう歌だからこう歌おう"と頭で歌ってます。ヴォーカルを入れるときは大体そうなんですよね。感情を込めて、というよりは"こうしたいからこうしよう"と。昔からそういうやりかたなんですよね。だからこそ曲によってヴォーカルを変えられるのかもしれない。

-ああそうか、阿部さんはポップスの人なんですね。やっぱりポップスはどこかドライな部分も必要で、しっかり整理されていて組み立てができていないと成立しない音楽ですから。

ああ、嬉しいです。デビューの頃はアーティスト活動においてはロック・ガールでいなければいけない、というものもあったんですよね。ロックロック、だけどポップ、ポップのロック?という、よくわからない今どきのJ-POPみたいになっていて。あの頃の阿部真央が良かったと思う人もいると思うけど、実際の自分はそんなでもないし(笑)。最初はロックな感じになりたかったんですけど、自分はポップスを聴いて育っているし、恋愛のこと以外は割と平和主義者ですし。だから自分の人間性に素直に活動していくほうが、ステージの振る舞いも含めて自分に合っているんだなとわかってきて、楽になってきましたね。

-ポップスにしかできないことはたくさんありますからね。あ、あと、"恋愛のこと以外は平和主義者"という発言が気になったんですけど......(笑)。

頭では平和であればいいと思うんですけどね。でも恋愛に関しては心でしか動いていないので、なんにも考えないでうわぁ~!!好きだ~!!うわぁ~!!死ね~!!みたいな(笑)。

-ははははは、素直(笑)!

恋愛だけはそういう激しい感じなんですよね(笑)。

-そういう曲が生まれそうですか?

でもそういう自分のなかだけで生まれる感情を歌うだけでは曲の幅が広がらないから、いろんな人の話を聞いて自分の感じたことを書いていきたいですね。例えば自分がやったことのない恋愛......わたしは不倫をしたこともないし、したいとも思わない。でも不倫している人の話を聞いて、その人になりきって歌うのではなく、その話を聞いて感じたことを書けばいいかなとか、そういうスタンスに変わってきています。

-ああ、ベクトルが完全にポップスですね。面白い曲ができそうで、楽しみです。

ひとりの人間から聞いた話で1曲できるかもしれないし、5人の人間から聞いた話を全部統合してできるかもしれない。それを聞いて過ごした生活を題材にできるかもしれない。今までもなんとなくやってきたことなんでしょうけど、もっと意識的にやったほうが、もっとアンテナは広がるのかなと思いながら、今は過ごしています。