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INTERVIEW

Japanese

HaKU

2014年05月号掲載

HaKU

Member:辻村 有記 (Vo/Gt) 三好 春奈 (Ba/Vo) 藤木 寛茂 (Gt) 長谷川 真也 (Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-HaKUにとって"共生"するというのは実際、どういう行為を言うのでしょう。人の心に寄り添う、というニュアンスでしょうか?

辻村:ああ、それ僕も悩んでるんです。ずっと。今も悩んでるし......でも、寄り添うことで生きることもできると思っていて、今はその方向のほうが強いですね。シンガロングは僕らから歩み寄ってできたものなので。でも心のどこかで、共生とはもしかしたら寄り添うことではないのかもしれない......という考えもあって。ただ、メンバー的にはすごくいいアルバムができたし、ようやく人と向き合うことができたアルバムだと思うので。今はそこの答えをこのアルバムのツアーで知りたいなと思っています。ライヴはそういうものをいちばん体感できる場所だと思うので(自分たちにとっての共生を本当の意味で見つけることができるのは)、お客さんと一緒にアルバムを完成させたいですね。そこで人と交わって、これで良かったんだと思えばその延長線上ができると思うし、ちょっと違う、もうちょっと他にあるんじゃないかと思えば、また違う共生があるんじゃないかと思うし。でも、今向かっている先は、寄り添う方向ですね。

-それは嫌いなものでも、そこからいいと思うものを探していく、という感じ?

辻村:嫌いなものは嫌いなままでいいと思うんです。でもそのぶん、いいものが嫌いなものを凌駕したら俺は"いい"に偏ると思うし。......そんな気はしますね。

-今回曲作りに関して、辻村さんは個人で行かれたアメリカ旅行も大きかったようですね。

辻村:僕はすごく洋楽が好きで。METALLICAやMOTLEY CRUEのような、自分の本当に尊敬していて、CDを買って、そのアーティストたちに夢を見て、今こうして音楽をしているのに、1回もその人たちが音楽を奏でた場所に行ったことがなかったし、触れたことがなくて。だから本当に心の底から尊敬しているのかどうかわからないところもあったんです。そういうものを確かめるいい機会なんじゃないかと思って、ウィスキー・ア・ゴーゴーやロキシーとか、その人たちが音楽を奏でた場所に行って、そこにいる人たちと接して。それでちゃんと"自分が信じていたものは本当に良かったんだ!"と思えたというか。それが音楽面ではいちばん大きかったです。モチベーションになったというか。それが丁度、悲観していた言葉から前向きな言葉を使えるようになってきた期間だったんです。そういう"ちゃんと信じられた"というのが後押ししてくれたものはありましたね。

-ちなみにその旅に行くきっかけとなった出来事は?

辻村:「everything but the love」は人と向き合うことを「masquerade」よりももっと明確にした楽曲で。そのツアーをやっていくなかで......人と向かい合う、共有できる、シンガロングできるというのを「masquerade」のときよりも強く手に入れることができて。そのときに......どっちかというと内向的だった自分が、アクションを起こせる人間になれた気がしたんです。それは錯覚だったのかもしれないですけど、外を見るいい機会があったので、それが後押ししてくれたんだと思います。......自分自身も、ちょっと変わりたいという気持ちがあったのかもしれないですね。

-その気持ちと、ライヴでお客さんからもらったエネルギーや声の力が相乗効果をもたらした。

辻村:お客さんの存在は大きいと思いますね。今のバンドのサウンド面やアレンジもそうです。歌詞の点では"人にどうやったら届くか"というのは特に考えて、妥協せずに作れたと思います。それをなぜやろうかと思ったというと、人に伝えたいから。お客さんに伝えたい......そういう原点に繋がっていくんだと思いますね。

-"いかに人に伝えるかということを重点的に考えた"というのは皆さんそれぞれどういう作業を?

長谷川:有記がスタジオに曲を持ってきて、最初に合わすのはドラムなんですけど、そのときになるべく作りこまないようにというか......考えすぎて詰め込むと届きにくいのかなって。出してきた音符やメロディに対してスッとでてきたものだと、いちばん自然なかたちで音を合わせられるんじゃないかと思って。振り切って真逆のこと(入り組んだリズム作り)をすることもあるんですけど、サビとか基本的なところに関してはナチュラルなものを有記に採用してもらいましたね。

辻村:今回は"この言葉を出したいからどういうフレーズにしよう"というのが結構あるんですよ。力強い言葉は力強い演奏が後押ししてくれれば、力強く人に届くと思うし、内向的な歌ならば、そういう譜割りや音にすれば、そういう気持ちになれると思うし。"映画を見ているときと同じような感覚に陥るバンドになりたい"というのがバンドの原点でもあって。そこからいろんな遠回りをしてきて、今ようやくそこに向き合えるのではとも思ったし。それを表現したかったから、ベースもギターもそれに対して考えて作ってくれているような気がします。

藤木:ちょっと前までは歌詞に関してはそこまで......っていう感じだったんですけど。有記から歌詞に対しての熱意が今まで以上に膨れ上がっているのを感じたから、"この歌詞が言ってることはこういうことだろうな"というのを認識して音を作っていったところはありますね。有記の熱意で俺も歌詞に特に着眼点を置くようになりました。

三好:今回は曲作りの早い段階で、具体的な指示が有記さんから出ていたから、すごくイメージがしやすくて。"わかりやすく伝える"という目的がはっきりあったのでこっちもすごく考えやすかったです。わたしは他の楽器が鳴っているのを一旦聴いて、その上で聴こえてきそうなベース・ラインをイメージしてという作業の繰り返しで。今回はそれがすごく考えやすかったなと思います。