DISC REVIEW
ア
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あれくん
革命前夜、
暗いニュースで溢れがちな今を生きるリスナーへ向け、ポジティヴをテーマに制作したEP。だが"前向きだけどまだどこか後ろ向きなあなたへ"というコメントも発表している通り、そのポジティヴさは手放しであっけらかんとしたものではなく、現実的な目線も孕んでいるところが肝であり、これまでもどこか不安な気持ちに寄り添ってきたあれくんならではの作品になっている。環境音を積極的に取り入れ、より生活に馴染む音像になった「diary」や、ストリングスでスケールを増した「いつか」は本作のためにリアレンジされたもの。ボカロP 水野あつとの共作曲「ゆびきり」では両者の武器を生かした温かなピアノ・ポップを響かせ、「ツナギアイ」では隙間のあるサウンドに乗せられたグルーヴ感のあるリリックがあれくんとしては新鮮だ。(稲垣 遥)
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あれくん
呼吸
切ない恋心を透き通った声で描き、10代を中心に話題のネット発SSW、あれくんのメジャー初アルバム。「好きにさせた癖に」は965万回、「ばーか。」は749万回と好調な再生回数を誇るが、それらすでに公開済みの楽曲は、すべてガラッとアップデートされている。チルなビート且つミニマムだけど一音一音が際立つ、トレンドを採り入れたポップ・サウンドにリアレンジされていて、海外アーティストを意識したようなあれくんのフェイクも含め、既発のバージョンを知っているとその進化に驚かされるはず。また、半数を占める新曲たちに綴られているのは、これまでの彼の代名詞=ラヴ・ソングの枠を超え、人生の葛藤に向き合った言葉たち。メジャー初作品にして現時点での集大成にとどまらず、新たな自分を切り拓いている。(稲垣 遥)
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安斉かれん
ANTI HEROINE
自身初となるフル・アルバムを2枚同時でリリース。CHARLI XCX、CHVRCHES、DANNY L HARLEなど、国内外から豪華作家陣を招いて制作された本作には、ダークなエレクトロ・サウンドを押し出した「へゔん」や「ギブミー♡すとっぷ」、ソウル/モータウンな「ら・ら・らud・ラヴ」、強烈に歪んだギターが轟くハイパーポップ的な「おーる、べじ♪」、ドリーム・ポップな「恋愛周辺(Demo)」に、本人も作曲に関わった躍動感満点の「YOLOOP」など、実に多彩な全15曲を収録している。これまでのイメージを覆す新たな安斉かれん像を構築しているが、そこからは多大な好奇心を持って音楽に接し、それらを貪欲なまでに吸収しようとしている彼女の、アーティストとしての純粋な表現欲求を感じさせる。(山口 哲生)
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安頭
夢に出てきた。
Large House Satisfaction、BYEE the ROUNDらのプロデューサー兼wash?のベーシストである河崎雅光氏が立ち上げたレーベルの第2弾アーティストは、平均年齢21歳の3ピース・バンド。すでにライヴ会場で販売している2ndミニ・アルバムを全国リリースする。疾走感溢れる曲調の「妖怪になりたい。」、刹那的な感情を歌う「最後にひとつ。」、スロー・バラード「ゆらゆら。」など、曲調は多彩だが、どの曲にも登場している不穏なコードや奇天烈なメロディ・ラインが印象的。何だか掴みどころのないサウンドが不思議とあとを引くし、"こんなん出ました"というスタンスでヒョイと出てきたのがこれだなんて相当な変人(褒め言葉)だと思われる。 (蜂須賀 ちなみ)
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アンダーグラフ
音響レジリエンス
ミニ・アルバム『音楽の盾』以来、1年1ヶ月ぶりのリリース。コロナ禍で戦い続けてきた彼ら、そして私たちを"音響"でレジリエンス(回復)させてくれる1枚。音楽的なチャレンジと、"遺していく ただ遺していく"という強い決意に満ちた歌詞の「蘇生法」を1曲目に持ってきたところからも、ただならぬ意気込みを感じる。とはいえ、シリアスなムードだけではなく、言葉遊びやダブル・ミーニングを盛り込んだ「レレレラララ」、アコースティックでも似合いそうな温かみのある曲調の「アイかわらず」など、音楽の"楽"を表現した楽曲も。曲名にもあるけれど、今作は私たちが"薄明"から光に向かう"これからを"描いた"航跡"そのものだと思うし、ノンフィクションを見ているような感覚になる。(高橋 美穂)
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アンダーグラフ
7 + one ~音の彩り~
アンダーグラフ2年振りのアルバムは、現体制初のリリース作品。7人のプロデューサーと作り上げた7曲と、セルフ・プロデュースで制作された1曲の計8曲を収録したコンセプト・アルバムだ。プロデューサー陣には藤井丈司、いしわたり淳治、根岸孝旨などのベテランから気鋭まで個性溢れる面々が揃い、アンダーグラフの持つ様々な色をそれぞれの観点から濃く抽出する。スキマスイッチの常田真太郎がプロデューサーを務め、真戸原直人(Vo)と歌詞を共作したリード曲「素敵な未来」は、バンド自身が経験した人との別れから生まれる切なくも尊い感情を歌い上げた壮大なミディアム・ナンバー。そのリアルで繊細な感情は、アンダーグラフと親交の深い常田だからこそ汲み上げられたものだろう。(沖 さやこ)
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アンと私
FALL DOWN 2
自称"どうせ裏アカでしか呟かれないバンド"、アンと私。どこを切り取ってもインパクトのある生々しい歌詞が並び、そのキャッチーさも相まってTikTokとの相性は抜群。バンド始動から早々にバイラル・ヒットを生んだのももはや必然に思える。そんな彼らの初CD作品は、EP『FALL DOWN』に初期の名曲の再録や新曲を追加し、ここまでの活動の充実度を物語る1stフル・アルバムにしてベスト盤と言える1枚となった。その振り切った歌詞に注目が集まりがちだが、ヘヴィでソリッドな「FALL DOWN」から「Tinder」のような爽やかなロック・チューン、「クソラスト」のようなフロアを無条件に躍らせる四つ打ち曲など、2010年代邦ロックを醸すサウンドの多彩さも秀逸。SNSからライヴハウスまでを席巻していくことだろう。(中尾 佳奈)
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安藤裕子
Kongtong Recordings
きっちりしたコード進行や構成の上にメロディが乗るというより、先にメロディや言葉がありコラージュ的に完成していくような自由度の高さ、曲ごとに人格が変わるほど多彩なヴォーカル表現に新鮮な驚きが。ユニークな聴感ながら、軽快なピアノ・ポップからミュージカル風に進行する「All the little things」、ドラマ"うきわ ―友達以上、不倫未満―"OP曲でダンサブルな「ReadyReady」、アーバン・ソウルな「UtU」、ホーン・アレンジがロマ音楽風な「Babyface」、ピアノ・リフが効果的で、ある男性の誠実さと弱さを映し出す、本作中では異色な「僕を打つ雨」など感情、感覚の多様さはまさに"混沌"。"進撃の巨人"にインスパイアされた「Goodbye Halo」と「衝撃」アルバム版の連なりは圧巻。(石角 友香)
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アーバンギャルド
URBANGARDE VIDEOSICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト・映像篇~
むろん、アーバンギャルドが音楽作品を生み出すことにおいて優れた手腕を持っていることは間違いないが、そこに映像が伴ったときには情報伝達度と芸術性が一気に爆上がりすることを、今作では自ら証明していることになるだろう。もともと松永天馬(Vo)もおおくぼけい(Key)も共に自主映画の制作経験があるせいか、モデルやナレーションの経験がある歌姫、浜崎容子嬢を主たる被写体として生み出されてきた数々の映像作品は、どれもMVと呼ぶには濃密すぎる内容のものばかり。また、3時間に及ぶオーディオ・コメンタリーにおいてメンバーから明かされる制作秘話も、聞き応えは充分。そして、あの黒宮れい(BRATS/Vo)が出演する「平成死亡遊戯」をAV監督、ターボ向後が手掛けている点も地味に見逃せない。お宝映像満載!(杉江 由紀)
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アーバンギャルド
URBANGARDE CLASICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~
アカデミックで上品な味わいと、サブカル的な胡散臭さが融合するアーバンギャルドのエキセントリックな濃厚世界は、隙のない作り込みがされた音像を背景に、下世話なほどのポップ・センスが大胆に闊歩する不条理な美しさに充ち満ちている。そんな彼らが歩んできた15年の歴史を包括するこの作品は、新曲にして絶妙なノスタルジーが漂う「いちご黒書」から数々のレア・トラックたちまでを含む全45曲を収録したCD全3枚組のまさにオールタイム・ベストであり、コア・ファンにとっての必携アイテムであるのはもちろん、より深いアーバンギャルド沼にハマりたい方にとってのガイドとしても最適となろう。つくづく、公式に謳われている"二十一世紀東京生まれの「トラウマテクノポップ」バンド"のコピーはガチで伊達じゃない。(杉江 由紀)
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アーバンギャルド
アバンデミック
現3人体制で作り上げた10thアルバムがついにリリース。今作はコロナ禍の2020年という時代性を反映した「マスクデリック(ver.2.0)」を筆頭に繰り返しのフレーズを用い、一度聴いたら忘れないクセになる楽曲が並んでいる。また、メンバーいわく"メタルEDM"を意識した「アルトラ★クイズ」はライヴで盛り上がること間違いナシのアッパー・チューンと言える。作品トータルの完成度も申し分なく、とりわけ「シガーキス」~「白鍵と黒鍵のあいだで」の流れも秀逸で、聴き手の隣にそっと寄り添う雰囲気のある曲調にも心酔。楽曲やアプローチの振れ幅は自由度が増し、3人編成という強味を生かした風通しのいい作風は多くのリスナーに突き刺さるだろう。これらの楽曲がライヴでどう化けるのか、今から楽しみだ。(荒金 良介)
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アーバンギャルド
少女フィクション
2年4ヶ月ぶりのニュー・アルバムが素晴らしい。今年はCDデビュー10周年のタイミングでもあり、バンドのアイデンティティがここでひとつ確立されたと言っていいだろう。メンバー自ら音色やアレンジにもこだわり、アーバンギャルドらしさを追求した結果、群を抜くポップ性を獲得している。先行シングル「あくまで悪魔」は他の追随を許さないキャッチーな魅力に溢れ、脳内ループ必至のシンガロング・ナンバー。また、鍵盤の響きが印象的なバラード「キスについて」における浜崎容子(Vo)のセクシーな声色は、曲の世界観を鮮明に炙り出すことに成功。この曲に限らず、これまで彼らに何かしらの偏見を持っていた人こそ、今作を聴いてほしい。純粋に良質な楽曲が詰まった会心作と太鼓判を押したい。 (荒金 良介)
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アーバンギャルド
昭和九十年
バンド初のコンセプトを掲げた7thアルバム。"殺すな、殺すな、言葉を殺すな"というテーマを軸に、現代における生きづらさを提唱した痛烈な歌詞は実にアーバンギャルドらしい。冒頭曲から歌謡曲メロディとEDMを融和させたポップな曲調で、浜崎容子(Vo)のキュートな歌声と松永天馬(Vo)の切迫感のあるセリフ調の歌い回しによる対比も秀逸。文学的な題材やシュールな歌詞を用い、踊れてノれるポピュラリティ抜群の楽曲が今作にはぎっしり詰まっている。圧巻なのは9分台の長尺曲、Track.7だろう。オーケストラを導入し、ストーリー性豊かな曲調で中だるみせずに聴く者を引き込んでいく。またアイドルの生々しいインタビューを挿入したTrack.10はあまりにも強烈だ。(荒金 良介)
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アーバンギャルド
鬱くしい国
"トラウマテクノポップ"と自らジャンル名を掲げた4人組。移籍第1弾の新作は、まず会田誠の作品"群娘図'97"の一部をアートワークに用いたジャケがインパクト大!だが、中身もそれに相応しいエネルギッシュな1枚だ。シャンソン歌手をやっていた異例の経歴を持つ浜崎容子のアイドル顔負けのキュート・ヴォイス、そこに大人びたロウ・ヴォイスで迫る松永が絡み、純粋にポップ・ミュージックとしてレベルが高い。加えて、これまで培ってきた優れたエディット感覚で電子音とバンド・サウンドを繋ぎ合わせた曲調も絢爛豪華。ダブル・ミーニング的にチクリと刺す毒のある歌詞も刺激性たっぷり。鍵盤を用いて静謐に聴かせる「アガペーソング」、大槻ケンヂを迎えた「戦争を知りたい子供たち」など全11曲捨て曲ナシ。(荒金 良介)
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アーバンギャルド
生まれてみたい
驚くなかれ。今度のアーバンギャルドの世界には、血も、鋭くとがった刃も出てこない。誰も傷つかない。傷つけ合わない。この一切の棘のない、神々しく、母性に溢れた世界はなんなのだ。今作について、松永天馬(Vo)による楽曲解説では以下のように語られている。"暗闇を照らすために、言葉のナイフを研いだ。切っ先鋭いフレーズで、時代の暗闇を照らそうと思った。しかし何故だろう。研ぎ澄ませれば研ぎ澄ませるほど、言葉は柔らかく、黄金色に光った。メロディは甘く弾んだ"研ぎ澄ませた果てにあったのは、こんなにも無防備な歌だった。"歌は死なない"というキャッチの通り、武器も持たず、"生まれたままの姿=歌"の美しさを全面に押し出したこの曲が、彼らの楽曲世界にまた新たな変化をもたらすだろう。(島根 希実)
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アーバンギャルド
スカート革命
"トラウマ・テクノ・ポップ"バンド、アーバンギャルドのメジャー・デビュー・シングル。吐息まじりの甘ったるいロリータ&ウィスバー・ヴォイスは、愛らしくもセルロイドの人形のごとく無機質。ルックスやアートワークなどのアート性の高さ、独創的かつクリエイティヴな佇まいの通り、面白いのは、その多様性。エレクトリック・ポップから、歌謡曲調のドラマティックでモダンなメロディを基調に、メタリックなギター・リフが飛び出したり、男声の甲高い叫び声が組み込まれるなど、テクノ・ポップ・アイドルのような完全なるアンドロイド的なものとはまた違うのは、サブカルへのオマージュが含まれているため。シニカルでちょっぴり病的なのだ。まずは、恋の情熱を"乙女のシンボル=スカート"に託したナンバーから、ひとつ御味見いかが?(島根 希実)
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飯田カヅキ×判治宏隆
Scene
共にソリッドさと少々のダウナー感を携えた3ピース・バンドのGt/Voである飯田カヅキ(strange world's end)と判治宏隆(SILVER HALATION)が組んだ2ピース・バンドの初フィジカル作。飯田がアコギでリズムやパーカッシヴな側面も打ち出し、判治がリバーブやエレキ・ギターの概念にとらわれないエフェクトを用い、感情や曲の背景、効果音的な音色をクールに鳴らしていくというバランスは、リズム楽器の不在をあまり意識させない。歌メロの強度を保ちながらアンビエントの要素もある聴き疲れしない音像が特徴だ。シーン=情景をイメージさせるサウンドスケープ。雨や水を疑似体験するような「深海の雨」、ループするコードワークが徐々に気持ちを動かす「歩けるか」など、深く感覚にコミットする。(石角 友香)
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いきものがかり
あそび
すでに"国民的"と言える不動の地位を築きながら、「コイスルオトメ」等色褪せない名曲に吹く追い風も味方にさらに勢いを増すいきものがかり。最新アルバムは、1音目からときめきが弾ける「ドラマティックおいでよ」や「晴々!」といった、持ち前の王道ポップ・ソングで"らしさ"を貫きながら、バンドから芸⼈まで多数のゲストを招き⼊れ、"遊び"を効かせたチャレンジングな楽曲をスパイスに、11枚目にしてフレッシュさが突き抜けている。⼩説の1ページのような蓮見 翔(ダウ90000)作詞曲「あの日のこと」では⼩西 遼(象眠舎/CRCK/LCKS)のアレンジも光り、fox capture plan編曲の「うきうきぱんだ」はラテン風に仕上がる等、遊び心満載のサウンドに注目。(中尾 佳奈)
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いきものがかり
〇
ふたり体制になったいきものがかりの10枚目のアルバムは、タイトルが示す通り、どんな自分にも"〇"(まる)をつけることの大切さを教えてくれる。あれがない、これがない、あれができない、これができないと何かと理由をつけては自分を減点することに慣れてしまっている私たち。そんな人間が自分に"〇"をつけるだなんて、そう簡単なことではない。それでも、それすら踏まえたうえで"〇"をつけていくことでしか、人はこの先の未来へと進んでいくことはできない。あれがない私も"〇"、これができない私も"〇"。ひとつずつでいい、ゆっくりでいい。すべてを抱きしめたとき、信じられないほどの力が湧いてくるから。そのときにしか見えない景色と、本当の意味での勇気が、このアルバムには描かれている。(藤坂 綾)
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幾田りら
Laugh
可憐ながら芯のある歌声でアニメ、ドラマ、映画と様々な作品を彩り、歌手活動に留まらず声優も務める等、ソロでも目覚ましい活躍を続ける幾田りら。約3年ぶりのフル・アルバムもタイアップ曲のオンパレードでその活躍を物語る。そんななか新曲「タイムマシン」は、シンガー・ソングライター 幾田りらの原点を彷彿させるような質感の珠玉のバラード。"別れ"というやり直せない過去と消えない未練が、大切な人生の一部として昇華するように丁寧に紡がれた。そしてDisc 2では、錚々たるラインナップとのコラボ曲やカバー曲をアーカイヴ。どんなアーティストの楽曲も歌いこなす柔軟さは、ぷらそにか時代から磨きが掛かっている。そんな彼女の軌跡に思いを馳せながら聴きたい充実作。(中尾 佳奈)
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幾田りら
Sketch
YOASOBIのヴォーカル ikuraとしても活動する幾田りらが、待望の1stアルバム『Sketch』をリリース。本作にはドラマやCMなど多数のタイアップ・ソングを含む全11曲(CDにはプラス2曲)が収録され、そのすべての作詞作曲を彼女自身が手掛けている。TikTokで話題となったピアノ・バラード「Answer」をはじめ、ソロ名義で初めてストリーミング累計1億回再生を突破した「スパークル」、シンガロング・パートが印象的なスポーツ番組テーマ・ソング「JUMP」と、耳馴染みの良いメロディと等身大の歌詞、そしてシンガー・ソングライターとしての豊かな表現力が凝縮された1枚に。昨年末は"NHK紅白歌合戦"に出場し、今年7月には1stワンマン・ツアーを控える彼女の充実ぶりがアルバム全体に満ちている。(山田 いつき)
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石頭地蔵
カーバイト
熊本アンダーグラウンド代表、そして全員が40代半ばを超えるというポスト・パンク・バンド石頭地蔵の2ndアルバム。ニューヨーク・パンクを彷彿とさせる切れの良いサウンドと吐き出す様なクールなヴォーカルからは40代という年齢は全く感じさせない。それより長年やって来たから生まれたものなのか、このブルースを感じさせる世界感は本当にかっこいい。こんなやさぐれたロックンロールは一人で歩きながら聴きたいもの。とにかく21世紀のTELEVISIONの「Marquee Moon」とも言われる「誘発」や、尖ったギター・リフにポップなメロディを持ち込んだ「発光カーバイト」など聴き所は満載。熊本のシーンからこんな凄いバンドが登場した事を考えると、まだまだ日本の地方には埋もれているバンドが刺激的な音楽を作り続けているのだろう。(遠藤 孝行)
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石井卓とジョン中村
Fine,thank you,and you?
ギターとドラムの2ピース・バンドらしいという意味では、ハード・ロッキンなリフが轟音で鳴るTrack.1の「World's owner」が一番それっぽい。しかし、活動休止中のロック・バンド、Jeeptaのフロントマン、石井卓がジャンルにとらわれない活動をしてきたジョン中村と2013年に結成したギターとドラムの2ピース・バンドのバックボーンが90年代オルタナであることを考えると、それはむしろ異色ナンバーかもしれない。2曲目以降は爽やかな歌モノのギター・ロックからシューゲイズ・ナンバーまで、オルタナ感覚と熱気溢れるロッキンな演奏が曲ごとに絶妙なバランスで溶け合い、彼らならではと言える個性をアピール。前作の一発録りを改め、エフェクトも含むギミックを使って作り出した音響効果も聴きどころだ。(山口 智男)
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石井卓とジョン中村
How low,my friend?
2013年に活動休止となったJeeptaのフロントマンとして活躍していた石井卓と、さまざまなジャンルのバンドでサポートを務めるドラマー、ジョン中村が結成した2ピース・バンド、"石井卓とジョン中村"による待望の1stミニ・アルバム。BYEE the ROUNDやLarge House Satisfactionの作品も手がける河崎雅光をプロデューサーに迎え制作された今作には、2ピースというミニマムなバンド・スタイルからは想像できないほど、重厚且つ破壊力抜群の6曲が並ぶ。3台のアンプを操る石井卓のギターと、多様な音楽を吸収したジョン中村のドラムが織り成すダイナミックな音色は、まさに圧巻のひと言に尽きる。ぜひライヴで生の"卓ジョン"サウンドを体感したいものだ。(奥村 小雪)
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石毛輝
My Melody (Diary Of Life)
the telephonesのフロント・マンにしてコンポーザーでもある石毛 輝の、前作から約1年半ぶりのセカンド・アルバムが完成した。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、ピアノ、シンセ等全てを手掛ける才能にも脱帽するが、何よりもメロディ・センスが素晴らしい。歌声は味付け程度に抑えられていて、主役はとにかく音。電子音と生楽器とのバランスが絶妙で、とても耳触りが良い。自ら録音したという自然音も随所で聴こえてきて、神秘的で癒しの効果を生み出している。クラシック・ミュージックのメロディの一節が流れてくるのも印象に残るが、あくまで楽曲の一部として上手く融合されているのがとても効果的だ。もっと聴いていたいと思わせるほどに良い意味であっさりと聴き終われるので、the telephonesが苦手という人にもぜひ聴いてほしい作品。(石塚 麻美)
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石毛輝
from my bed room
石毛輝といえば、髪を振り乱してつんざく高音のシャウト!the telephonesでは、フロアをかき乱す底抜けにハッピーなサウンドとは裏腹に、諦めや嫌世感を含んだ言葉を吐き捨てる。対照的に個人としての"石毛輝"による本作は、より柔和で主観的な内面が滲み出ている。トライバルなサウンドが広がる「Machu Pichu」に始まり、まさにタイトル通りの内省的な感情世界が展開されていく。キラキラとチープでアッパーなサウンドと、シンプルでアンニュイな作りの音がふわふわと重なり合い、明け透けに率直な歌詞が独特な厚みを生む。攻撃的で圧倒的な立ち振る舞いを見せるthe telephonesと、その影で守られてきたナイーブな少年の姿。the telrphonesで見せる闇と石毛輝の光。この二つは相反するようで、密接に結びついている。圧倒的なカリスマがふとした瞬間に見せる素顔。そこに人は惹かれるのだ。(山田 美央)
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石橋英子
Carapace
七尾旅人、Phew、タテタカコなど、数多くのアーティストの作品・ライヴで演奏家、プロデューサーとして活躍する石橋英子の、約2年ぶりとなるアルバム。再生した瞬間、聴こえてきたのはピアノによる産声。強い生命力を放つその凛とした音色と、それとは対照的に、少し控えめなヴォーカルは、少し大人びた矢野顕子のようで、愁いを帯びた中にも存在感が光っている。だが、そこはやはりマルチ・プレイヤーでもある彼女、ピアノの方が饒舌だ。歌詞を歌っているのはヴォーカルのはずなのに、どちらが主旋律を歌っているのか分からない感覚に見舞われるのだから。楽器と声の両方で、命を紡いでいくようなこの音楽は、母親のお腹に耳をあて、その胎動に耳をすまし、小さな生命を感じるように、静かな中にも、生命が脈を打つ、温もりと神秘に溢れている。(島根 希実)
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イズミフミ
夢見がち脳内
作詞作曲、編曲、プロデュースを自ら手掛ける北海道出身のシンガー・ソングライター、イズミフミが、TBS系"イベントGO!"の4月度OPテーマに選出された「SPY」を始め、ポップでキャッチーな5曲を収録したニューEP『夢見がち脳内』を配信リリースした。思わず口ずさんでしまうリズミカルでかわいらしいメロディである一方で、多くの女性が抱くリアルすぎる感情を赤裸々に描いている。そのギャップを持つ音楽自体が、まるで夢と現実の狭間で苦悩する女の子のようだ。どうしても恋人のことを詮索してしまう女心を"SPY"、女性からのアプローチになかなか気づかない男性を"鈍感マン"と喩えるなど、彼女の魅力である心に引っ掛かる絶妙なワード・センスが光る1枚。(渋江 典子)
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市川セカイ
ベルトコンベアから流れてくるもの
鶴の自主レーベル"Soul Mate Record"からリリースされたシンガー・ソングライターの1stアルバム。心地よく澄んだ歌声は奇をてらうところなく、まっすぐに耳に入ってくる。軽快なモータウン・サウンドで躍動感たっぷりに歌うTrack.1「今日はPARTY」、カントリー・ソングのTrack.7「my sweet home」、ブルージーなTrack.8「musica mystery tour」など、音楽的なバックボーンを感じさせるアレンジによる楽曲たちは、鶴の神田雄一朗を始めとする市川セカイBANDのメンバーでレコーディングされており、見事な演奏で歌声をより際立たせている。思わず夜空を見上げたくなる感動的なTrack.9「流星群」で聴かせる歌声には誰もが魅了されるはずだ。こうした圧倒的な歌唱力と楽曲センスを持つ男性シンガーに音楽シーンをひっくり返してもらいたい。(岡本 貴之)
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一之瀬ユウ
君との境界
ボーカロイド・クリエイター"蝶々P"としての顔を併せ持つ一之瀬ユウのメジャー2ndミニ・アルバム。「Black Board」のセルフ・カバー収録も象徴的だが、全体的にピアノの旋律が際立つサウンドメイキングとなっており、前作リリース時よりも蝶々Pと一之瀬ユウの境界が曖昧に。しかしそれよりも特筆したいのは、声の表現が多彩になったことだ。持ち味を活かしきれていない部分もあるにはあるが、長い目で見ればそれも大した問題ではない。自分の声で音楽を伝える魅力を知り、シンガー・ソングライターを志したという人が"きれいに丁寧に歌う"以外のやり方を身につけた意味は大きいが、さてここから、彼の歌はどのように変わっていくのだろう。成長過程の青さが眩く光る1作だ。(蜂須賀 ちなみ)
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いったんぶ
switch
思えばロックに出会ったときに初めて抱いた感想は"イミワカラナイ"だったし、それが何だか知らないうちに"気になる"に変わり、最終的に"カッコイイ"になってしまうもんだからやっかいなのだ。関西のライヴハウスを中心に精力的に活動をするいったんぶの1stミニ・アルバム『switch』を聴いてそれを思い出した。ニュー・ウェーヴを土台にしつつ、パンク的疾走感、サイケデリックなギター、インド風のスケールなど、あらゆる要素をドサッと全部乗せ。「Zegen」や「しびれる」など、いくつもの"?"と"!"が絶え間なく脳に直接突進してくるような節(ぶし)も健在だが、ラストの「1986の未来」で泣かせてくるあたりがとてもズルい。(蜂須賀 ちなみ)
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イツエ
今夜絶対
今夜絶対あの子に電話しよう、今夜絶対いい時間を過ごそう、今夜絶対雨が降りませんように......。この"今夜絶対"という言葉には"決意"と"願い"、両方の意味が存在しているように思う。紅一点ヴォーカリスト、瑞葵を擁するイツエの約2年振りとなる2ndミニ・アルバムは、9曲それぞれに強く拳を握りこちらに突き付けるような、はたまた強いまなざしを向けてその手でこちらの手を取るような、聴き手を振り向かせようとする揺るぎなさがある。彼女の強さとしなやかさに溢れた歌声に、優雅なメロディをものにする歌唱力と、そのヴォーカルに触発されるように、支えるように展開される誠実なオルタナティヴ・サウンド。そのふたつは凛と輝く月と澄んだ星空の関係性のように密接だ。2年という期間での成熟を感じさせる。(沖 さやこ)
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イツエ
優しい四季たち
紅一点ヴォーカルの瑞葵、馬場義也(Ba)、久慈陽一朗(Gt)、吉田大祐(Dr)で2010年に結成された4人組バンド。今作は1stミニ・アルバム『いくつもの絵』以来9ヶ月ぶりにリリースされる1stシングル。どの楽曲もリード曲にできるほどの楽曲の完成度の高さとメロディ・センスの良さは今作で更に磨きがかかっている。特にTrack.1の「海へ還る」ではヴォーカルの瑞葵の表現力の豊かさと、イツエの描くほの暗さを孕んだ美しいバンド・アンサンブルが非常に高いレベルで交錯した、バンドの代表曲となり得るくらいの破壊力を秘めている。現在はライヴハウスを中心とした活動がメインだが、恐らくそう遠くない未来には大きなステージでこのバンドを観ているのではないかという期待感を抱かせる作品だ。(伊藤 啓太)
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イツキライカ
Kind of Blue
心に響くポップ・ソングに色をつける、シンガー・ソングライター的な私小説の視点と、ピアノやマリンバ、ホーンなど多彩な楽器群。しかしひとりの脳内で生み出されたフィクションならではの少々、異様なバランスがバンドにはないイマジネーションを広げてくれる。トラディショナルなアメリカーナのニュアンスは大橋トリオや星野源的なイメージもあり、ボサノヴァやジャズが下地にありつつ不穏なコード進行を聴くことができる曲ではイツキライカならではのセンスも。総じてサウンドのひとつひとつにも総体にも季節や温度感、時間帯まで疑似体験できるような質感があり、それが無二の魅力に繋がっている。日常を切り取っているかのようで、実はエモーションを掻き立てる言葉も秀逸。静かに音楽的な興奮が聴き手の内側に立ち上がる。(石角 友香)
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伊津創汰
DREAMERS
現在20歳のシンガー・ソングライターによる1stアルバム。代表曲と言える「Try」を含む5曲を、それぞれバンド・アレンジとルーパーも使ったアコースティック・ギターの弾き語り(いちにんまえ ver.)で収録しつつ、バンド・アレンジの「SUNNY DAY」と、弾き語りの「あまもよう」を加えた2枚組の意欲作になったのは、自分の"これから"と"これまで"を詰め込みたかったからだという。夢を追いかける20歳の若者の等身大の心情を言葉にした楽曲は、正統派のSSWを思わせるが、ラップやブラック・ミュージックのグルーヴが窺える「カラフル」からは、それだけにとどまらない可能性が感じられる。バンドのバックアップを得て、ヴォーカリストとしてひと皮剥けた印象も。伸びやかな歌声が心地いい。(山口 智男)
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伊東歌詞太郎
サイレントマイノリティー
TVアニメ"乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です"のオープニング・テーマとして書き下ろした「サイレントマイノリティー」は、疾走感あふれるギター・ロック・ナンバーに。乙女ゲームの男性モブキャラクターに転生したアニメの主人公を、現代の社会における声を上げられない少数派のメタファーと捉え、"だけど声があげられないままの僕ら一体どうすりゃいいの?"と叫ぶ歌詞は、今を生きる人たちに向けた応援歌を歌い続けてきた伊東歌詞太郎の真骨頂。聴覚にひっかき傷を残すようなエキセントリックなアレンジも聴きどころだ。カップリングの「君の場所へ」は新たな季節を迎え、一歩踏み出そうとする人たちの背中を押すミドル・テンポのポップ・ロック・ナンバー。この包容力もまた、彼の持ち味だ。(山口 智男)
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伊東歌詞太郎
三千世界
今を生きる人たちに向けた応援歌を、時に辛辣な言葉も交えながら伸びやかな歌声で歌い続けてきたシンガー・ソングライター、伊東歌詞太郎。昨年、メジャー・レーベルと再契約した彼がリリースした自身初のベスト・アルバムは、過去に在籍したレーベルで発表してきたオリジナルに加え、動画サイトに投稿したカバー、さらには過去曲の再録、新曲も収録。CD2枚に目いっぱい収録した全31曲は、まさにオール・タイム・ベストと言えるものになっている。新曲の「絆傷(キズナキズ)」はアーバンなポップス、ジャズ・ロック、バラードも歌う彼のバックボーンがギター・オリエンテッドなロックだということを今一度、物語るロック・ナンバー。シンガロング必至のコーラスがライヴ・アンセムになることを予感させる。(山口 智男)
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伊東歌詞太郎
真珠色の革命
『記憶の箱舟』以来、1年4ヶ月ぶりとなるシングル。TVアニメ"ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド"にエンディング・テーマとして提供した表題曲は、"ヒーローとはなんだ!?"という同アニメのテーマに対する伊東の回答を込めたミッドテンポ・ナンバー。伸びやかな伊東歌詞太郎の歌声はもちろん、過去と現代、そして未来と時空を超えながら自らの信念を綴った壮大な歌詞も聴きどころだ。その他、ホーンをフィーチャーしたロックンロールの「スプリングルズ・サワークリーム」と気鋭のクリエイター、タナカ零の作詞/作曲/編曲による「TEL-L」もカップリング。数々の実験的な手法を取り入れたハウス調の「TEL-L」は、これまでの伊東にはなかった異色ナンバーだ。(山口 智男)
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伊藤文暁
frienemy
現在another sunnydayのヴォーカリストとして活動している伊藤文暁のソロ・アルバム。UKのギター・ポップ・バンドとUSのインディー・ロック・バンドの音をJ-POPの土台の上で表現したかのような、メロディックでポップながらも深みのある楽曲が詰まった作品になった。全曲を通して透明感のある歌声に耳を奪われ、繊細な歌詞が心に響く。friendとenemyを合わせた造語のタイトルfrienemyが表現しているように、歌詞やサウンドで陰と陽のように相反する要素が自然と混ざり合っているのも魅力的だ。バンド以上にソロ・ワークでは自身を投影しているのではないかと感じられる。だが、収録されている5曲は全曲同じ雰囲気で統一されている為、もう少し違ったアプローチの楽曲も聴いてみたいと思う。今後に期待が膨らむ一枚だ。(石塚 麻美)
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イトデンワ
伝書鳩の旅路
平均年齢21歳のピアノ・ロック・バンドによる2ndミニ・アルバム。プロデューサーに上田健司を迎えた前作『白線を辿る』から一転、メンバー3人が試行錯誤を重ねて完成させた今作は、メンバーの感性が自由に生かされたことでバンドの世界観に大きな奥行きを与えるものになった。クラシカルなピアノが印象的なインスト曲から幕を開け、疾走感溢れるサウンドに寓話の中を彷徨うような歌詞を乗せた「ラストシーン」、憧れの世界に属することのできない悲しみを歌ったスロー・バラード「ありふれた特別」や、地球という存在と対峙するダンサブルなナンバー「地球儀」など全7曲。ソングライティングを手掛けるヴォーカルのNatsuMiは人間の心を覗き込むように言葉を紡ぎ、時に孤独に怯え、愛に飢えながら、それでも未来を歌う。(秦 理絵)
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イトデンワ
白線を辿る
半年間の活動休止期間を経て、イトデンワがリリースする初の全国流通盤は元the pillowsの上田健司をプロデュースに起用。再スタートを切るバンドの新たな決意を込めた作品になった。ピアノ、ベース、ドラムというギターレスの変則3人組バンドが奏でる美しいピアノ・ロックは、触れると壊れそうなほど繊細でありながら、誰もが日常で見失いがちな真実に気づかせてくれるような凛とした強さがある。ライヴハウスに集まるお客さんとの約束を交わす「ハジマリ」、脆くて変わりやすい人との関係を明快なキーワードで歌にした「かくれんぼ」や「磁石」、宇宙空間や幻想のまどろいを経て、終着のプラットホーム「2月の日向から」へ。豊かな情景描写に彩られた心の旅路の果てに穏やかな陽だまりが待っていた。(秦 理絵)
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