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UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第2回】

2012年06月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第2回】

やかんの件(前回参照)から数日。夏休みもあとわずか。僕は親友の部田下 流夏(ぶたげ るげ)の通う大学の研究室に来ていた。流夏は横から見たらもう見えないんじゃないかというほどに影と体の薄い奴だ。「ここで最近奇妙な事が起こっているでし。学期末、ルゲルゲが研究室に入ると、床が水浸し。壁はビチョビチョ、テーブルや椅子はおろか、引き出しの中までグッチョグチョだったでし。」流夏は白目でそう言った。「うーん夏やからな。湿度が高いとそうゆうこともあるんちゃう?それとも誰かが水撒きでもしたか?」「茶化さないで欲しいでし。うちの大学のシステムは日本有数。蟻一匹の侵入も許さないでし。湿度調節なんて歩くより簡単な事でし。例え故障してもシステムの修復に1秒とかからないでし。にもかかわらずその現象は毎日続いたでしよ。」流夏は白目でそう言った。「そこでガニ太氏。今夜この部屋で見張るでし。」「ちょっと待て!何で僕が!」「嫌なら、やかんの件をふもっちゃんにバラすでし。」「な、何故それを知っている?」動揺を隠せない僕に流夏はまた白目で言った。「…うふふ。知らないの意味を、知りたいでし…。」夜の学内。僕は研究室のロッカーの中にいた。ふもっちゃんにやかんの件を知られるわけにはいかない。もう数時間経つが汗がとめどない。肘を角に強くぶつけた時、痛いを通り越して暑いと感じることがあるが、今全身がそんな感じだ。もう無理っ!と心が折れそうになったその時。ギギギギ…。奈落から死神が迎えに来たかの重低音が響いたかと思いきや、隣のロッカーが開いた。バタンっ!「…っ!!」完全に意表を突かれた。なんとか声を出さずに済んだが次の瞬間、中から現れたのはなんと、生まれたままの姿に頭だけ「ごきげんよう」のライオンちゃんの着ぐるみを被った男だった。その裸体は『バキ』の烈海王よろしく研ぎ澄まされていた。その上と下のギャップは北海道から沖縄に瞬間移動した時に感じるであろう温度差よりも激しいに違いなかった。この世のものとは思えぬファンシー感に押し潰されそうになりながら、僕は幻覚であって欲しいと願った。ライオンちゃんヘッドは冷凍庫の氷を全て取り出して部屋にばらまき、「なにがでるかなっ♪」と口ずさみながら踊り始めた。彫刻のような体から汗が飛び散る。これは何の罰ゲームなのか。なにゆえ僕は、この奇人の暑苦しいレゲエダンスを、女子更衣室を覗くかの如くロッカーから盗み見なければならないのだ。1分後、激しさを極めるダンスの情熱で氷が溶け始めた。ものすごい湿度だ。ロッカーの中まで結露が始まり、なにもかもがビショビショになった。事件はこうゆうからくりだったのだ。なんというおぞましい結末。氷も溶け、謎も解けたが、この状況をどう切り抜ければ良いのだ。あるはずもない答えを模索しながらチンポジを直そうとしているとロッカーに肘鉄を喰らわしてしまった。ガタンっ!まずいっ!背徳ライオンちゃんダンサーはこちらに近づいて来た。ロッカーの隙間から汗だくの烈海王がアップになっていく。もうダメだ!きっと僕はこの逆ケンタウロスに未知なる陵辱を刻まれるに違いない!ふもっちゃん。キミともう一度会いたかった。さようなら。カタギの人生を諦めようとしたその瞬間。ガラガラっ!研究室の扉が開いた。「ガニ太氏!」そこには、白目の流夏が立っていた。

,,,to be continued 茉莉乃沢 ガニ太