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UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第12回】

2014年02月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第12回】

"盆"と"正月"。"炎帝"と"氷結"。少し違うかもしれないが、そんなある意味お祭り騒ぎの渋々谷を尻目に我々ガニ太一行は墨澄み田へ向かっていた。「てやんでぃ!早くしねえと千異汰も渋々谷の街もてぇーへんだぁてぇーへんだぁ!」パンツの内側に小さくなってしまった千異汰を飼っている兄、汰異牙は言葉とは裏腹に嬉しそうに言った。「そうだな。なんで嬉しそうなのかはわからんが、早くその"風神"巣蚊 伊釣(すか いつり)とやらに会いにいかなくては。そういえば、ここ何週も一言も喋ってないけど大丈夫かふもっちゃん」僕は一応ヒロインであるはずのふもとを気遣うが無視された。今週も喋らないのだろうか。「まあ、それはいいんだけどさ。(よくないんだけどさ)なんかさっきから向かい風がすごいんですけど。」「そりゃおめぇ、"風神"の住処が近いからさ。つって」汰異牙のパンツからミニミニ千異汰が顔を出した。「千異汰お前もう大丈夫なのか?体、ってゆうか精神的に」「"風神"が体を治してくれるとゆうよりも、どうすればいいかを教えてくれるのさ。"風の噂"という能力で世の中の知識を得ることが出来るらしいのさ。つって」僕の問いをスルーして千異汰が言った。「てやんでぃ!ただじゃあ教えてくねえのさ。"風神"に会うにはとてつもない試練を越えなければならんらしい。見ろよ」気がつけば、汰異牙の視線の先には龍のような竜巻が静かに天空に突き刺さっていた。「これが"風神"の住処、ドラゴンサイクロンだバカヤロー!ここの最上階に巣蚊伊釣は住んでいるらしいぜドちくしょう!」「未だかつて辿り着いた者はいないらしい。つって」ライオン坂兄弟は自分たちの台詞に自らの顔色を悪くする。ゴォォオっ!すると何やら地響きのような音がしてきた。ゴォォォオオ!!地面が激しく揺れ出した。「ナニガオキタ?」ふもとが久々に喋った。無感情、そして無表情。この状況にも動じていないのか。いや、喋ったということは動揺しているのか。そんなことより、目の前のドラゴンサイクロンなるものが回転し始めている。ゴォォォオオ!!!ドラゴンサイクロンはさらに高速回転する。ゴォォォオオオオ!!!!フッ...。ドラゴンサイクロンは消えた。あのスカ○ツリーの如く異彩を放っていたあのでっかい塊がいとも簡単に視界から消えてしまった。「えっ!?」ふもとを含めた全員でハモった。すると前からトコトコ、ヨボヨボのブルドッグが歩いてきた。「えっ!?」ハモった。ブルドッグはふもとの足下へやってきてしばらくスリスリした後、僕の足におしっこをひっかけた。「何すんだこの犬!」僕は思いっきりブルドッグを蹴り上げた。「痛っ!!」ブルドッグは言った。「えっ!?」本日3度目のハモり。「イマ、シャベッタゾ。コノクソイヌ」ちょっと口が悪いけれども、ふもとが言った。「痛~い。風の噂で聞いてたけど蹴られるの痛~い。わ~ざ~あ~り~」ブルドッグが言った。確かに言った。「風の噂で聞いたけど、あんたたちアタシに会いに来たんでしょ~」ブルドッグが言った。「てやんでぃ!ちげぇよ!おいらたちは"風神"巣蚊伊釣仙人に会いに来たんだよバカヤロー!」汰異牙が臆さずにブルドッグに対応した。「や~ね~。アタシが巣蚊伊釣だっつってんだわよん。ま~ぼ~ろ~し~」「えっ...??ええええええええ!?え?」難しいハモリを完成させた。「コイツ、クソイヌノクセニ?」ふもとの口が悪い。しかし、どうやら本当にこのオネエ言葉のブルドッグが、あの"風神"巣蚊伊釣であるらしい。「あんたさっきからヒド~イ。イツリちゃんこまっちゃう~。わ~ざ~あ~り~」殴りたい。今すぐこいつを殴りたい。心の中でみんながハモった。「それじゃ~あ~。お前とお前がキスね。ま~ぼ~ろ~し~」伊釣はよだれを垂らしながら僕とふもとを指差した。
...to be continued