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UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第10回】

2013年10月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第10回】

「千異汰ぁ!千異汰ぁああ!!」汰異牙の叫び声は、ただ虚しく部屋をこだましているだけだった。「た、汰異牙?その、その黒炭はまさか、、」僕は質問を途中でやめた。「炭と化した者にいくら声をかけたって、ムダムダムダムダぁ!!」全身が赤い、赤い目の男は言った。この男が新進宿を統治するクラウドノイド、高島 一世短(タカシマ イッセタン)らしかった。「新入りかい?お二人さん。おアツいねえ。アッツアツだねぇ。ムダムダムダぁ!!」一世短は燃えるようなまなざしを僕とふもとに向ける。「そんなことよりいつまでわめいてんだお前ぁ!!ムダムダぁ!!」さっきからジョジョ的な、ディオ的な口癖だが、一世短がそうゆうと、火柱がぶわんっ!と立ち昇り、千異汰であろう黒炭を消し飛ばした。「あぁ!千異汰ぁ!てやんでぃばーらちくしょい!」汰異牙の江戸っ子キャラはブレない。「ムダムダぁ!部屋の奥をよく見ろ!まあムダだがな」そう、僕は気付いていた。部屋の奥にはミイラ化した死体が横たわっているのを。「てやんでぃ!あ、あのミイラがなんだっつんだバカヤロー!」汰異牙は悲しみを振り絞って言った。「わからねえはずはねえだろうが、決まってんだろ!?お前らのボス、市間 瑠休(イチマ ルキュウ)だよ!ムダムダぁ!おっと勘違いするなよ。オレがやったんじゃねえ。オレが来た時にはすでにこいつはミイラ化していたんだからよう」なんということだろう。すでに瑠休は死んでいた!?あの様子だと死後一ヶ月は経とうとしているんじゃ!?一ヶ月前といえば、ちょうど親父の事件が終わった頃だ。「。。。」汰異牙はレギュラー西川君みたいに気絶した。「このカミナリ野郎の死が、何を意味しているかわかるかお前ら。まあ理解したところでムダだがな」一世短は言う。「実にホットな話題だぜ!この東京合衆国は戦場と化す!!この"炎帝"高島 一世短様がついに天下を取る時が来たのだ!!ムダムダぁ!!」瑠休の死がパワーバランスの均衡を崩し、ナワバリ争いが激化するということか。「"雷神"の力が弱まってきていたことは周知、まさか既に死んでいるとは思ってなかったがな。瀬汰我屋の"氷結"ちゃん、墨澄み田の"風神"ジジイ辺りはもう近くまで来ているかもなぁ。ムダムダぁ!!」一世短はその鬼の形相をさらに凄ませる。「逃げよう汰異牙。この渋々谷は戦場になる」僕は汰異牙に囁くが反応がない。一世短はほとばしる炎をジリジリと僕らに伸ばしてくる。「汰異牙!目を覚ませ!」一世短の赤い炎が汰異牙の体を貫こうとしたそのとき。「てやんでぃ!!千異汰の仇だ!!秘技"剛力アヤメ"!!」汰異牙は自分の拳で自分のおでこをぶん殴った。するとどうだろう。汰異牙を貫こうとしていたはずの一世短の赤い炎は一世短自身の首に食らいついた。「む!?ぐああ!アツい!!オレの炎ムダにアツい!」説明しよう。秘技"剛力アヤメ"とは、剛力を自分に打ち込むことで相手の力を鏡の如く反射出来るようになるのだ。倍返しだ!つまり今の汰異牙は無敵状態。「てやんでぃ!いかに"炎帝"といえど、今のオイラにとってお前はクリボーと同じだバカヤロー!」まるでスターを手に入れたスーパーマリオよろしく問答無用に突進していく。「"炎帝"をなめるなよ!秘技"炎帝マグマ大使"!!」技名のセンスはともかくとして、ものすごい地響きと共に一世短の足下から床がマグマとなって溶け出してきた。「いくらお前が無敵だろうが、この部屋をすべてマグマで埋め尽くせばどうかな。スターを手にしたスーパーマリオも下に落ちればゲームオーバーだろ!ムダムダぁ!!」やがて天井も溶け出してマグマ化してきた。「だめだ!ここは一旦退こう汰異牙!!」僕の忠告は遅く、いつのまにか周りは炎に取り囲まれている。完全に逃げ場がない!「ムダムダぁ。逃げてもムダ。向かってきてもムダ。つまりお前らは生きててもムダなんだよ!」一世短の高笑いがマグマの轟音と混じり合う。もう足場がない。覚悟を決めた僕は目を閉じた。しかし次の瞬間、この燃えるような温度の中に矛盾したゾッとする何かを感じた。目を開けてみると、マグマは全て氷と化していた。
...to be continued