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UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第14回】

2014年06月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第14回】

これはなんだ。僕は知らない。命を授かって18年足らず。僕はこれを知らない。春の晴れた光が差し込む窓際で抱き締めるぬくもりのような、そのまま眠りつきたくなるようなあの柔らかい温かさ。いや違う。同時に訪れる全身の血が沸騰したかのような刺激は春の日差しとはまるで異なるものだ。雲か?僕は今、雲の中で青空の真ん中にでも浮かんでいるのだろうか。雲ってこんなに甘かったのか?ごんっ!なんだ今の音は?今度はなんだか鉄の味がするぞ。どんどん口の中に鉄の味が入ってくるぞ。てゆうか痛くない?いや、痛いな。ん?イタイイタイ。あっ!イタタタタタ!!気がついたら僕は地面に仰向けで寝ていた。顔が痛い。どうやら、何者かに顔面を殴打されたようだ。あんまり覚えていない。「わ~ざ~あ~り~!!」あれ?ブルドッグが喋ってる。そうか、あれは確かブルドッグじゃなくてクラウドノイドの一人"風神"巣蚊 伊釣(すか いつり)。「青い春が来たねえ。いいもん見せてもらったっつーの!」なんのことだろうか?ふもとがずっとこっちを睨んでいるような気がするし。「てやんでぃ!おめぇらのキスなんてどうでもいいんだよドちくしょう!はやく千異汰を治せっつんだよ!」汰異牙が叫んでいる。キス?はて、なんの話だろうか?「まあまあ慌てるんじゃないわよう!そこのおチビちゃん(千異汰)を元の大きさに戻すにはある力が必要なのよさ!」「もうできるはずだわよ!クラウドノイドのお嬢ちゃん」「あんたは6人目のクラウドノイドのくせに天然アプリを持っていなかったのよさ」「しかし、さっきのキスによって眠っていたアプリの力が解放されたんだわさ」伊釣はそう言ったが、ふもとには何の変化も見られない。てゆうかキスしたの?僕と?「クソイヌ、ヤッテミル」ふもとはそう言って千異汰にそっと触れた。するとどうだろう。千異汰の縮んでしまっていた体がみるみるうちに元の大きさに戻っていく。しかし、汰異牙のパンツの中にいたのでパンツが破けて汰異牙の下半身は丸出しだ。「あっ、てやんでぃ」一方、千異汰は何故か服まで再生されていた。「おおお!治ったっつって!」これがふもとの能力なのか。「わ~ざ~あ~り~。あんたすでに能力を使いこなしているようだわね。さすが伝説のクラウドノイド」伊釣はふもとがどんな能力に目覚めるのかも知っていたようだった。「巣蚊伊釣、ふもっちゃんのアプリはいわゆる癒し系ということになるのか?というか僕はふもっちゃんとキスしたのか?」僕は後半の方の質問に力を込めた。「癒し系ではないのよ。もっととんでもない能力よ」「そうなのか?で、キスはしたのか?」「この能力は"ゼロ"。あらゆる事象を"なかったことにできる"能力なのよ!」「マジか!キスはマジか!?」「この能力の恐ろしさをあんたたちはまだ理解していないようさね!やたらめったら使いまくるもんじゃない。どうしても必要なときだけ使うようにしなさい!"元に戻したものを元に戻すこと"はできないんだからね!」ん?どうゆうことだ?そんなことよりキスのことを知りたいのだが。「てやんでぃ!だから千異汰は服まで再生されていたんだな。じゃあお嬢ちゃん!俺の破けちまったパンツとズボンを直してくれねえか?ドちくしょう!?」汰異牙はそうゆうと自分の下半身をふもとの方へ突き出した。「ワカッタ」ふもとは無表情でそう言うと汰異牙にコークスクリューパンチを繰り出した。「ぐっはぁ!!」汰異牙はクルクルと血しぶきで美しい弧を描きながら飛んでいった。そして地面に叩き付けられる頃にはパンツとズボンは再生されていた。「すごいぞふもっちゃん!そんなことより、僕たちはキスをしたのかい!?」僕の言葉にふもとは左のアッパーカットで返した。「はうあっ!!」美しい血しぶきの舞う中、僕は渋々谷の街をこの能力で救えるんじゃないかと思った。...to be continued