Japanese
阿部真央
2023年09月号掲載
Interviewer:森 朋之
-これまでの代表曲をアコースティック編成でセルフカバーするというアイディアの源はなんだったんですか?
実は独立前からこういうアルバムの話は出てたんですよ。そのあと、IRORI Recordsさんと組んでKAGAYAKI RECORDSが始まって。仕切り直しみたいな感じもあるし、自分自身が変わろうとしている最中なので、これまでの楽曲を踏襲しつつ、今の私の歌の佇まいだったり、これからのスタンス――もちろん、アコースティックに特化するわけではないですけど――を見せられるものって何かなと思ったときに、うってつけだったのがセルフカバー・アルバムだったんです。止まらずに進んでいることも感じてもらえると思うし、過去と未来を繋ぐアルバムになったんじゃないかな。
-なるほど。アコースティック・アルバムの制作はどうでした?
楽しかったですね。まず、現場の雰囲気が良かったんですよ。先に秋のツアー[阿部真央 Acoustic Live Tour "I've Got the Power"]が決まっていたので、"その前にリリースしたいね"ということになって。スケジュール自体はかなり大変だったんですよ。私自身もサウンドにこだわる部分が増えていたし、結果的に歌のレコーディングが"7日で11曲"になってしまって。私、1日に2曲録るってやったことがなかったんですけど、"ここは頑張るしかない!"と。トラック・ダウンやマスタリングもすごくタイトだったし......みなさんが本当に頑張ってくれたんですよね。
-今のスタッフに支えられた?
はい。すごく協力してくれたし、助けてくれて。しかも現場の雰囲気がぜんぜんピリピリしてなかったから、私も頑張れたんだと思います。実際、この15年間の中でもこんなに楽しいレコーディングはなかったんじゃないかな。それくらい良かったし、私自身も"こうしたいです"という意見をしっかり伝えられて。とても風通しが良かったし、それが救いでした。
-このアルバムの阿部真央さんの歌、本当に素晴らしいですよね。
でしょ(笑)? 頑張りました。だいぶワガママも言ったけどね(笑)。
-アルバムには「貴方の恋人になりたいのです」、「ロンリー」、「I wanna see you」など、代表曲や人気曲が収録されていて。何百回も歌ってきた曲ばかりだと思いますが、改めてレコーディングしてみて、手応えはどうでした?
意外と緊張しなかったし、昔の歌い方に寄せようとしなかったのは良かったと思いますね。ちょっと前の自分だったら、"2010年の「ロンリー」(4thシングル表題曲)をもう1度やろう"みたいになってたかも。
-当時の自分に寄せるのではなく、今の阿部真央を表現したと?
そうですね。歌い方もそうだし、歌うときに気をつけているポイントも当時と今では全然違う......当時というか、1年前の自分とも違うんですよ。歌に関しては、今自分がやりたいこと、チャレンジしたいことだけに集中できたし、自分でもよくやったなって思いますね。
-実際、原曲とは歌い方やアプローチがかなり違いますよね。
うん、それは私も思いました。全然違うなって。まず、出せる音の範囲が違うんですよ。例えば「MY BABY」は私が一番最初に書いた曲で、デビュー・アルバム(2009年リリースの『ふりぃ』)にも入ってるんですけど、当時よりも全然高い声が出るようになってるんですよ。「I've Got the Power」もサビのメロディはめっちゃ高いんですけど、デビュー当時の私には絶対に歌えなかったですね。
-以前は気合で高い音を出してたんですか?
そうかも(笑)。だから無理がかかってたんでしょうね、たぶん。今回のアルバムに入っている曲もそうですけど、レコーディングしたあと、ライヴで何回も歌うことで、どんどん楽に歌えるようになってきて。高い声も低い声も年々出るようになってるし、それは自分でもすごいなって思います。作る曲のキーも高くなってるんですよ、実は。そこに合わせようとするから、さらに出るようになるんでしょうね。
-自分自身で相乗効果を生み出しているというか。アルバムの選曲に関しては?
私と和田さんが中心になって決めていきました。候補曲はいろいろあったんですけど、今まであまりアコースティック・アレンジでやってない曲だったり、ちょっと意外な曲も入れたくて。「嘘つき」は(2014年リリースの12thシングル『それぞれ歩き出そう』収録の原曲が)アコギと歌だけなんですけど、今回はピアノと歌でアレンジしてるんですよ。「じゃあ、何故」(2011年リリースの3rdアルバム『素。』収録)はライヴで弾き語りする定番曲なんですけど、それをさらにブラッシュアップして。「MY BABY」(『ふりぃ』収録)は"パーカッションと一緒にやったら合いそうだな"と思ったし、「お前が求める私なんか全部壊してやる」(2020年リリースの9thアルバム『まだいけます』収録)をアコースティックにするのも意外で面白いかなとか。
-「ロンリー」もいいですね。原曲はすごくポップで華やかですけど、アコースティック・バージョンにすることで、歌の表情がはっきり感じられて。
いいですよね。あとね、とにかくミュージシャンのみなさんがすごかったんですよ。今回は和田さん、ミトカツユキさん、パーカッションのぬましょうさん、ドラムの吉田佳史(TRICERATOPS)さんに参加してもらったんですけど、最高でした。アレンジの段階から楽しかったんですよ。ライヴのアレンジを作ってるときに近い感覚というか、"今のいいじゃん、それでやってみようと"とか"こういう音も足してみよう"、"こんな音を入れてもらっていいですか?"みたいな。遊び心もすごくありましたね。
-DVD/Blu-rayには、"Studio Session Live Video"を収録。「boyfriend」、「ロンリー」、「I wanna see you」、「貴方の恋人になりたいのです」、「I've Got the Power」のスタジオ・セッション・ライヴです。
これも楽しかったですね。いつも使っているスタジオで収録したんですけど、撮影のためにジャングルみたいな装飾をしてくれて。私もいろいろと意見を言わせてもらって(笑)、すごくいい雰囲気で演奏できました。撮影してくれた映像チームも"初めまして"だったんです。監督は20代だし、プロデューサーの方も私より年下で。今回のジャケ写を撮ってくれたカメラマンの方も初めてだったし、いろいろなクリエイターの方との出会いが多い制作でしたね。
-そして10月から11月にかけて全国ツアー[阿部真央 Acoustic Live Tour "I've Got the Power"]を開催。独立後、最初のツアーであり、今の阿部真央さんを体感できるステージになりそうですね。
そうなるといいなって思ってます。私と和田さん、ミトさんと3人で回るんですけど、この編成ならではの良さがあると思うし、私もすごく楽しみです。みんなが好きな曲もやるので、ぜひ楽しみにしていてほしいですね!
-今後の活動にも期待してます。新しい曲も作ってるんですか?
今はレコーディングが終わったばかりなので、ちょっと休んでますね(笑)。あ、でも、昨日ちょっと思いついたんですよ。......どんな曲か忘れちゃいましたけど(笑)。でも、新しい曲はどんどん作っていきたいし、がんばろうと思ってます。
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