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INTERVIEW

Japanese

神はサイコロを振らない

2022年03月号掲載

神はサイコロを振らない

Member:柳田 周作(Vo) 吉田 喜一(Gt) 桐木 岳貢(Ba) 黒川 亮介(Dr)

Interviewer:秦 理絵

最後に前を向くというよりは、自分と似た人間を巻き込んでいく、というか、人生においての逃げ道になるようなアルバムにしたかったんです


-吉田さんは?

吉田:俺は本当に嫌だったっすね......。

一同:あははは!

吉田:初めてドラム・テックの方にちょっとそんな話するのやめてくれって思った(笑)。マジで怒濤のアルペジオなんですよ、ずっと。しかも、そのアルペジオが難しい。上手くピッキングしないと、きれいなコードにならないんですよね、やっぱり。

柳田:特に神サイはジャズマスターとかテレキャスターとか、そういう荒々しい、全部出ちゃうみたいな楽器で演奏することが多いので。タッチひとつで音色も変わっちゃう。

吉田:場所によってピックの角度を変えるとか、それが上手くいかなかったらやり直すっていうシビアなところまでやったので。めっちゃ頑張りました。

-最終的に何テイクやったんですか?

柳田:10テイク。

-の何テイク目を使ってるんですか?

柳田:10テイク目です。本当は最初の2テイクぐらいで終わらせるつもりだったんですけどね(笑)。面白い曲になりましたよ。ドラムもヴォーカルも歪ませてるし、ギター・ソロとかも歪んだギター・ソロに対してさらにファズをかけて。

-歪み大好きですもんね。

柳田:うん(笑)。何やってるかわからないぐらい歪ませました。普通に音で楽しんどるんだなっていう感じですね。

-「少年よ永遠に」はDisc2に収録されてますけど。Disc1とDisc2でそれぞれにテーマ性を持たせたり、曲順へのこだわりは何かあったりしたんですか?

柳田:曲順を組むのは意外とすんなりできちゃったんですよね。俺が最初にラフ案を出したんですけど。っていうのも、「イリーガル・ゲーム」という、すごく聴いてほしい曲を1曲目にするのは最初から決まってて。間はどうであれ、結末も決まってたんです。それが新録曲の「僕だけが失敗作みたいで」なんです。あとは逆算式で考えていって。この曲がぐっとくるには、その前の曲は何かなとか、「初恋」と「泡沫花火」は続けて入れたいなとか。

-どちらも夏の曲だから?

柳田:そうです。で、「LOVE」っていう新録曲があるんですけど、これも夏の曲なんです。だから「初恋」と「泡沫花火」、「LOVE」は夏シリーズです。「LOVE」は洋楽テイストを入れ込んでて。僕のヴォーカルがドライっていうか、エフェクティヴじゃないんですよ。わりとそのままの声の質感を出したくて、でも初めてぐらいなんですけど、すげぇリバービーっていうか、めちゃくちゃウェットなヴォーカルの質感にしてるんです、空間系の。

-楽器の一部として聴かせる感じ?

柳田:ですね。なんならベードラ(ベースとドラム)とかギターのカッティングで引っ張ってほしい、みたいな。爽やかなUKロックを意識した曲なんです。キタニが「愛のけだもの」とは別で、神サイのサマー・ヴァイブみたいな曲を作ったって言ってたじゃないですか。

-前回のインタビューで言ってましたね。

柳田:そう、そういう感じの曲です。「LOVE」を別の曲名で表すなら、"神サイ・サマー・ヴァイブ"。4人でサングラスかけて、アロハシャツを着て、オープンカーで鎌倉ドライブしてるMVを録りたいです(笑)。ライヴでもライヴ・チューンにもなりそうな曲ですね。で、「LOVE」繋がりで、「1on1」からは恋愛の曲が続いて、「遺言状」とかダーティなところに入っていって、だいぶ深いところに潜っていくんですよ。

-「徒夢の中で」と「あなただけ」。

柳田:そう。で、Disc2 の「クロノグラフ彗星」からまたアップ・チューンで上がりつつ、ここでハッピー・ゾーンを設けたいなと思って「目蓋」があったり、「パーフェクト・ルーキーズ」まで駆け抜けたあとに、「夜永唄 - Unplugged 2022」、「プラトニック・ラブ」、「未来永劫」、「僕だけが失敗作みたいで」でゾーンに入っていくんです。今回リアレンジした「夜永唄 - Unplugged 2022」は伊澤一葉さんのピアノと、"THE FIRST TAKE"の「泡沫花火」でストリングスを弾いてくれてる吉田翔平さんっていう方にお願いをして。ファースト・ヴァイオリン、セカンド・ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのカルテットに歌を入れてるんです。

黒川:これ、めっちゃ良かったね。

柳田:すごかった。「夜永唄」はたくさん聴いてくれてる人がいると思うんですけど、それとまた別モノとして聴いてほしいですね。原曲と差別化したくて、コード進行とかも変えてるので。それで、その伊澤さん繋がりで(伊澤さんにアレンジをしてもらった)「プラトニック・ラブ」があって。

-「プラトニック・ラブ」は「夜永唄」のアフター・ストーリーとして書いた曲だったから、繋げて収録できるのもアルバムならでは、なんですね。

柳田:そうそう。あとアルバムならではのこととしては「夜永唄 - Unplugged 2022」後半に面白いこともやってみてます。で、「未来永劫」からエンディングに入って、最後の「僕だけが失敗作みたいで」に入っていくっていう流れです。

-となると、Disc1と Disc2に何かテーマを設けて分けたというよりは、頭から終わりまでずっと繋がってるイメージなんですね。

柳田:あ、そうですね。10曲:10曲じゃなくて、20曲として考えた感じです。

-最後を「僕だけが失敗作みたいで」にしたかったのは、どういう想いがあったんですか?

柳田:これも前回のインタビューに通じるんですけど、僕は"自分なんか"みたいなことをずっと思ってるんですよ。そういうことを曲にしたんです。本当に才能もなくて、自信のない弱い男の生涯をギュっと凝縮したような楽曲で。最後に前を向くというよりは、自分と似た人間を巻き込んでいく、というか。人生においての逃げ道になるようなアルバムにしたかったんです。背中を押すわけでもなく、落ち込ませたいわけでもなく。歌詞に"歩き疲れたら 3年分くらい寝て"とか"大人になったって たまに遠足なんてのもいい"ってありますけど、そういうところを歌いたかったんです。

桐木:この曲って"僕だけが"っていうタイトルの通り、ひとりの世界みたいな曲なんだけど、いろいろな人に共感してもらえそうな矛盾感があるんですよね。

-結局ロックってそういうものなんじゃないかなと思います。みんなのために作った歌だけが届くんじゃなくて、すごくプライベートでパーソナルなことを歌ったものが、逆にみんなに深く届いたりするっていう。

柳田:そうですね。だからこの曲は何億人もの人に刺さったらいいなっていうふうに思ってなくて。たったひとりでもここに共鳴してくれる人がいたら、それでいい。すごく大切な曲になったなと思います。自分のための曲であってほしいなって。

-それぞれの聴く人にとっての?

柳田:いや、俺自身にとって。「夜永唄」を作ったときもそうだったんです。誰かのためにとか、誰に刺さってほしくて書いた曲じゃないし。自分の過去とか、そういう消し去りたい記憶をあえて作品にすることで、自分の中で昇華するみたいな。

-これはどういうサウンドに乗せて歌ってるんですか?

柳田:神サイの初期のポスト・ロックみたいな感じですね。ダブルのアルペジオを絡ませたりとか、そういうのも原点回帰というか。神サイっぽいなって思える楽曲だと思います。壮大で、それでいて等身大で。そういう曲を最後に持ってきたかったんです。

吉田:この曲のギターには自分のルーツをめちゃくちゃ込めてるんですよ。このバンドを7年間やってきて、本当に初期の初期......結成するかせんかぐらいから応援してくれてる人もいると思うんですよね。そういう人に向けて届けたいなって、レコーディングのときから思ってました。だからいろいろな感情がこもってるんですよね。雑念もしかり。

-雑念?

吉田:すげぇどうでもいいプライドとか。そういうのも全部詰め込んだ曲だと思うんです。

-なるほどね。今回のインタビューでは新録曲は軽く触れる程度になるかなと思ってたんですけど、やっぱり新しい曲の話は前のめりになっちゃいますね。

柳田:たしかに。新録曲については話したいことがいっぱいあるんですよね。自分でもこうなるとは思ってなかったんですよ。でも気がついたら、すごく思い入れのあるものになってて。子供みたいな感じでかわいくてしょうがないんです(笑)。