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INTERVIEW

Japanese

Half time Old

2021年11月号掲載

Half time Old

Member:鬼頭 大晴(Vo/Gt) 小鹿 雄一朗(Gt) 内田 匡俊(Ba) 阪西 暢(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-例えば、2曲目の「アセスメント」にも、"僕の履歴書/また書き直しては丸め捨てて悩んでいる"というフレーズもあって。「SHALALA」もそうだし。どこか自分らしさとか個性、キャラづけを求められる風潮への葛藤にも受け取れるなと思ったんですよね。

鬼頭:あぁ......たしかにキャラづけはずっと考えてるんですよ(笑)。オーラがないんです。なかなか人に顔を覚えてもらえなくて。

-そういえば、こないだ偶然ライヴハウスで4人に会ったときも、阪西さんにはすぐに気づいたけど、隣にいた鬼頭さんに全然気づかないっていうことがあって(笑)。

鬼頭:そう、そういうことが他にもあったんです。自分がどういうキャラになっていくべきなんだろう? みたいなことを考えたりするんですよね。結局、最終的には"ま、このままでいっか"っていうところに落ち着くんですけど。

-でも周りから見ると、鬼頭さんってキャラがあるじゃないですか。

阪西:いや、ありますよ。僕らは身近にいるからちゃんとわかる。

-例えば、メンバーから見て、どんなところが鬼頭さんの個性だと思いますか?

一同:............。

鬼頭:......すぐに出てくれ(苦笑)!

一同:あははは!

内田:いや、ありすぎるんだよ。迷ってる(笑)。

小鹿:性格で言うと、根本的に優しいと思うんですよ。歌詞でもそれが出てるなって。いつも大晴が言ってるんですけど、希望が絶対にあってほしいって。それって、聴く人のことを考えてるからだろうなと僕は思ってますね。

阪西:書く歌詞にも独特の視点がありますよね。人が見ない角度から物事を見られるなって。そのうえでみんなの意見を汲み取って。最終的にはすべてを包み込むようにまとめる。ただ尖ってるとか、ただこだわりがあるんじゃなくて、愛情を持ってまとめてくれるのがすごくいいなというか。他にはいないんじゃないかなと思います。

-ええ、ヴォーカリストの歌声も唯一無二だと思いますし。

鬼頭:ありがたい(笑)。ただ、ひとつ言っておくと、今自分で悩んでるのは外見なんです。歌詞とか表現というより。

小鹿:それは暢君のせいもあると思う。

内田:インパクトがあるからね。

-(笑)ちょっと話が逸れましたけど。アルバムに話を戻しますね。同じように歌をしっかりと伝える曲だけど、「スターチス」はバンド・サウンドで聞かせるアレンジですね。

鬼頭:これは、僕の中のイメージをバンドの打ち込みで入れたりして、「なにもの」とはまったく別の方向性で作っていったんですよね。

小鹿:アレンジャーさん(Naoki Itai)にも、"ギターがしっかり聴こえるアレンジにしたい"っていうのはお伝えしましたね。しっかりバンド・サウンドで表現したかったので。

-間奏のベース・ソロがいいですね。

内田:あそこはわりと自由なニュアンスで弾かせてもらいました。ここまで楽曲に溶け込むというか、メロディに寄り添ったベース・ソロを弾いたことがなかったんですよね。セッションで入れたベース・ソロって、もうちょっとアグレッシヴなので。ちゃんと楽曲の一部として溶け込むソロじゃなきゃダメなんだっていうのを入れたかったんです。

-で、後半の間奏では小鹿さんのギター・ソロもあって。低いラインから上がっていくっていうのも楽曲のテンションと合っている。練り込まれたアレンジだなと思いました。

小鹿:あそこのギター・ソロはすごく気持ちいいんですよ。ちょっと失神しそうになるぐらい気持ち良く弾いてました(笑)。レコーディング前に家で弾いてるときから、めっちゃ気持ち良くなってたので。たぶん見てて気持ち悪かっただろうなって思います。

一同:あはははは!

阪西:おっしゃっていただいた通り、序盤から最後のギター・ソロのアウトロにかけて階段というか、各楽器のテンション感の上がり方が繊細なんですよね。やってること自体も派手で難しいというよりは、少しずつに上がっていく感じにしたくて。そこをアレンジャーの方とも話し合いつつ、気をつけながらレコーディングをしていったんです。

-タイトルの"スターチス"というのは花の名前ですよね。永久不滅という花言葉を持つ。

鬼頭:もともと花言葉ってそんなに詳しくないんですけど。今回のアルバム・タイトルの"ステレオアーモンド"っていうのは、アーモンドの花言葉が"希望"で合ってるなと思って付けたんですね。で、このアルバムに関しては、曲のタイトルも花言葉に繋げてみてもいいのかなって思ったんです。("スターチス"は)永遠の愛とか、そういう花言葉ですね。

-とても大きな愛の歌ですね。人生の一部にある愛を歌っているというか。これはラヴ・ソングを書こうと思って書いたんですか? それとも人生の意味を歌おうとしたのか。

鬼頭:最終的にはラヴ・ソングにしようと思って書いてました。ラヴ・ソングは4年ぶりぐらいかな。最初は恋愛とかではなくて、愛情みたいなところを歌えたらなと思ってたんですけど、ロマンチックな言葉がだんだん出てきたというか。じゃあ、このまま別にその感じを抑えることもしなくていいかなと思って、ラヴ・ソングになりましたね。

-この曲には、"人生は謎解きなんだぜ"とか、"二人とは歴史とは言わば落書きなんだ"っていう歌詞がありますけど。鬼頭さんの歌詞って名言っぽいなと思うんですよ。どういうふうに言葉を編み出しているんですか?

鬼頭:僕の中で詞の美しさって、日記みたいなものだと良くないなっていうのはあるんですよね。具体的に固有名詞を使うのは、僕の中で難しいなって。例えば、SNSとかTwitterみたいな言葉を歌詞に入れると、フックにはなりやすいんですけど、一気に詞の世界観が崩れちゃうというか。なんて言うんだろう......僕の詞の世界観を作ってるのは、そういうひとつひとつの言葉の選び方なんじゃないかと思うんですよね。

-要するに、"落書き"とか"謎解き"みたいな言葉がたとえとしてハマったときに、一気にイメージが膨らむ。そういう言葉をすごく探して書いてる感じ?

鬼頭:そうですね。

-「なにもの」の"一生を冒険と呼んで"っていう言葉選びも、今の鬼頭さんのモードが表れてますよね。最初の、ライヴのMCの話にも通じますけど。

鬼頭:うん。冒険って、僕の中では、つらいことがあっても立ち向かっていかなきゃいけないっていうイメージが、言葉自体にあるんですよね。そういう自分の中のイメージで使う言葉を決めてるんです。最終的には、冒険ってワクワクするっていうイメージが強いけど、その過程にいろいろな苦しいこともあるっていうのも、たぶんみんなわかってることだし。そのひと言ですべての過程が伝わる言葉だから使いたかったんです。

-"落書き"という言葉がイメージするものはなんだったんですか?

鬼頭:落書きって、僕の中では芸術にもなり得るというか。自由に簡単に書けちゃうものではあるけど、それがある人にとっては芸術に見える。自分が芸術って言っちゃえば、芸術になると思ったんです。不安定だけど、自由にいろいろなことを考えられるものっていうイメージですかね。

小鹿:へぇ、いいね。その話。

内田:ちょっと天才の脳みそを覗いたわ(笑)。