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INTERVIEW

Japanese

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

2021年07月号掲載

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

Member:タナカユーキ(Vo/Gt) チヨ(Ba/Cho) タクマ(Syn/Gt/Cho) イチロー(Dr/Cho/169)

Interviewer:秦 理絵

新作音源に加えて、52ページの豪華ブックレットとライヴ映像をパッケージした『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』という作品は、SPARK!!SOUND!!SHOW!!というカオスなバンドを理解するうえで画期的な作品になった。トランスとヒップホップが融合した最先端のトラックに、独創的なイラストレーター 原田ちあきをフィーチャリング・ヴォーカルとして迎えた「HAPPY BIRTH DIE」からはトレンドに敏感な彼らの音楽的感度の高さを感じるし、Margtがデザインを手掛けたブックレットには悪ふざけの奥に耽美なアート性が見える。ライヴ映像が伝えるのは、ロック・バンドの枠にとらわれないエンターテイナー精神だ。今、彼らがこの全方位型の問題作を発表する根底にある想いはなんなのか、メンバー全員に訊いた。なお取材中、イチローは"気難しいロック・スター"に扮した珍回答で場を盛り上げてくれたのだが、ごめんなさい、文章だと伝わりづらかったので割愛しました。

前回のインタビュー(※2020年11月号掲載)は、イチローさんがドレッドへアになった話から始めたので、今回はユーキさんが赤坊主になったところから触れていきたいな、と。

タクマ:ライヴ中に刈りましたからね。千葉LOOKの。

チヨ:歌ってるときにいきなり刈り始めたから、僕らも"なんだ、なんだ!?"ってびっくりしたんですよ。全然知らなかったから。急に、俺に"ここ刈って!"って来るけど、ヒゲ剃り用やから全然きれいに刈れない(笑)。

イチロー:「TOKYO MURDER」(2020年リリースのデジタルEP『スサ死 e.p.』収録)っていう曲のときですね。

-髪型を変えた理由はあるんですか?

タナカ:Britney Spearsに憧れてっていうことにしといてください。

チヨ:パパラッチに追われすぎて、いきなり床屋に入って坊主にしたっていう。

タナカ:まぁ、普通に散髪に行けてなくて。自分で安いすきバサミで切ってみたら失敗したんですよ。すきバサミを信じすぎた。それが前日とかでもう修正に行けなくて、みたいな。あと、ヒップホップが好きなのでいつかやろうと思ってたんです。

-今回の『HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき』に付属するDVDには、そのあたりの様子も収録されてますね。改めて、コロナ禍でまわった初めてのワンマン・ツアー([SPARK!!SOUND!!SHOW!! 2021 TOUR "HAPPY BIRTH DIE"])はどうでしたか?

チヨ:最初のほうはリハビリでしたね。僕らみたいな勢い系のバンドが規制のもとでライヴをするからには、ちゃんと工夫して新しいかたちでライヴをやらなきゃいけなくて。その手応えが自信に繋がったんです。僕らの振り幅の広い曲をいいかたちに落とし込めたから、新しい可能性を感じてもらえたんじゃないかなと思います。

-工夫というのは、途中にアコースティック・コーナーを挟んだり、VJを呼んだり、イチローさんのDJコーナーを用意したりというような?

チヨ:そうです。ラウドなバンドって、ずっと見てるのがしんどかったりするじゃないですか。でも見終わったあとに、"ロング・セットでも観られる"って言ってもらえたりして。もっと大きなところになっても、こういうライヴができたらいいなと思いました。今後の糧になる、大事なツアーになりましたね。

タナカ:もともと俺らは歌をじっと聴いて、みたいなバンドじゃないから、最初はしんどかったんですよ。でも、まず俺らがライヴを楽しんで、客は、気持ち良くなってる俺らを見て楽しめるなら、別にモッシュ/ダイブがなかろうがいける。そういうのを信じてやれるようになったのが良かったです。またフェスとかも始まってきて。他のバンドを見てると、差が開いたなと思うんですよね。"フロアに降りないでください"ってなったら、タクマと一緒にセットリストの流れを工夫していく。みたいなことが、今フェスでもやれてるから。逆にツアーをまわってなかったらヤバかったかもしれないです。

タクマ:たぶんもうあれ以上の構成はできないと思いますよ。ピークは過ぎた(笑)。

タナカ:潮時やな(笑)。

-いやいやいや、今回のツアーでは現時点での最高得点を出せた。それぐらいやり切った、ということですよね?

タクマ:あ、そういう言い方をするんですね(笑)。(コロナで)延期も食らいまくったし、マジいろんなことがありすぎて、ツアーに関しては言えないことも多いんですよ。言えることだと、そうだな......郡山のライヴで赤マムシのドリンクを用意して。一応、スタッフも1本ずつ飲んだんですけど、イチローが合計3本ぐらい飲んで。

チヨ:ライヴの前に気合を入れる感じで。

-完全に用法用量を超えてますよね。

タクマ:イチロー、目が真っ赤っかになってたもんな。

イチロー:ライヴ前にも飲んだし、ライヴ中にも追加で飲んだんです。

タクマ:今回は対バンもおらんし、限られた人数でまわってるから、1個のアイテムがあったら全力で乗っかるしかなかったんですよ。楽しみたいから。これがもう小っちゃいことで。もっと大きなことはいっぱいあった。いろいろなことがありすぎたから、充実感しかないんです。"バンドってこうだよな"みたいな。

-それはやっぱりこういう時期だからこそ、あえて積極的に楽しみを見つけていこう、みたいな気持ちもあったんですか?

タクマ:どうだろう。でも、私生活で飲みに行けなかったりとか、クラブとかライヴとか遊びに行く場所も制限されてたりするからこそ、ライヴで発散するしかなかったんですよね。ストレス解消みたいな感じです(笑)。

-イチローさんはどうでしたか? ソロ・コーナーではハイテンションに弾けてましたけど、自分なりに目指すものは掴めましたか?

イチロー:やりながら感じたのは、僕はその場でポンって正解を出すのが苦手なんですよね。チヨが、"今日はこうしてみたら?"とか言ってくれたので、そこで変化をつけながら、メイクをしたり、衣装を変えたりするのが個人的には楽しかったです。結局、自分が楽しくないとやれないなっていうのは思いました。......あとは反省ですね。

一同:あはははは!

-反省?

イチロー:いろいろあったんですけど......俺がフリースタイルを求められて。

チヨ:函館の「ドカーン」(2018年リリースのアルバム『火花音楽匯演』収録)っていう曲のときにね。ユーキと俺がイチローをイジって、"即興でフリースタイル・ラップやって"って振ったんですよ。たら、全然出てこなくて。"もうええわ"って曲に入ったんです。そしたら、(イチローが)キレちゃって。ライヴ中のインターバルのときに、"あれはやめてくれ"とか言うから、めっちゃ空気が悪なって。

-フリじゃなくて、リアルに機嫌が悪くなっちゃったんですか?

チヨ:本気です。ほんで、タクマも怒ってるんですよ。ユーキは大人やから、"イチロー、ごめんな。楽しくやろう"って言ってたけど、ライヴが終わって、"あれ、おかしくない?"っていう話になって。"なんでフロントマンに気を使わせてんの?"みたいな。

タクマ:そのとき、まだ俺らもコロナ禍でのライヴの仕方をわかってなかったんですよね。イチローをイジりすぎちゃってたんです。たぶんスサシ(SPARK!!SOUND!!SHOW!!)超大好きみたいな人はそれが好きかもしれないけど、初めて来た人が見たら、内輪で悪ふざけしてるだけになっちゃってた。で、そのあと、俺とユーキで話したんですよ。もうイチローだけをイジるのはやめようかって。フロントの3人がガッて出たうえでイチローも乗っかってくるほうがいい。イチローを全面に出しちゃうと、結局、ゼロか100かなんで。

チヨ:打率がホームランか三振(笑)。

タクマ:いいときは超いいんですけどね。

チヨ:で、そこから高松のライヴで1回そういうスタンスでやったら気持ち良くて。あ、こういうことが大事なんだなってわかったんです。

-たしかにファイナルの東京公演はちゃんと4人全員が個性を発揮するライヴになってましたもんね。イチローさんだけを飛び道具として際立たせるんじゃなくて。

チヨ:うん、ナチュラルにそうなりましたよね。

-話を聞いてると、いろいろな意味でやって良かったツアーだったんだと思いました。

タナカ:うん、なんか再確認になりました。

チヨ:コロナ禍で各々浮き沈みがあったりもしたと思うんですよ。音楽とかバンド活動に対しても、前とは別の感覚になっちゃってたと思うんです。でもツアーをまわって、バンドを再定義しながらやれたのがメンタル部分では大きいと思います。